第160話 伊達魔冬の推理
人数が増えたので朝食は三組に分けてとってもらい、俺や魔冬達は準備や後片付けで大忙しだった。
「はぁ……やっと全員の朝食が終わったわねぇ……」
「大丈夫かい、魔冬? 少し顔色が悪いんじゃないかな? 後は俺達で片付けておくから休憩したらどうだい?」
「私は大丈夫よ、颯君……心配してくれてありがとね」
「ほんと、竹中君の言い通り顔色が悪いわね? 魔冬は小さい頃からあまり身体が強く無い方だったし竹中君の言う通り、少し休憩してきなよ。後は私達がやっておくからさ」
「忍ちゃんもありがとね? でも大丈夫だから……」
「一人だけ休憩をとるのが嫌なんじゃ無いの? それじゃぁ、竹中君と二人で休憩するってことならどうだい?」
え? 片倉さん、何を言って……
「うん、それなら休憩させてもらおうかしら」
「えっ!?」
「フフフ……ということですので竹中さんは魔冬ちゃんと一緒に休憩をとっていただけますかぁ?」
支倉さんまで何を……
「で、でもさ……」
「はい、決まりだね!! 二人共、仕事の邪魔だからとっとと休憩に行ってちょうだい!! さぁ行った、行った!!」
————————————————————————
はぁ……何かよく分からないけど俺まで休憩を取る事になったけど、いいのかなぁ……
「颯君、仕事が気になるのかな?」
「え? まぁ、そうだね。俺は別に疲れているわけでもないしさぁ……片倉さん達に申し訳無い気がして……」
「フフフ……ほんと颯君は真面目で優しいよね? でも、その優しさが色んな人を苦しめている原因にもなっているんだけどねぇ……あっ、今の言葉は気にしないで。別に颯君の事を悪く言っている訳では無いから」
「う、うん……」
でも魔冬の言っている事は間違っていない。
俺が優しいというか、煮え切らない性格だから次から次へと告白されてしまった挙句、答えをハッキリさせないから彼女達が色々な形で争ってしまったってのもあるしな……
俺が詩音みたいにコミュ力が高ければもう少し上手く彼女達を傷つける事無く断れたかもしれないのは確かだし……ほんと俺ってダメな男だよなぁ……
なのに何で、こんなダメダメな男が学園の美少女達に好意を持たれてしまったんだろう? マジで謎過ぎる。
二学期が始まったらまた安藤達とそれについて話し合いをしなくちゃいけないな。
「しかしアレだね? 詩音ちゃんってとても可愛らしくて良い子だねぇ?」
「え、そうかなぁ? 俺にはあまり優しく無いからよく分からないけど……でもありがとう」
「フフ、私から見れば詩音ちゃんはお兄ちゃん大好きっ子に見えるんだけどなぁ……」
「えーっ!? そ、それは無いと思うよ。詩音は俺にいつも冷たいし……」
「そっかなぁ? 颯君って意外と鈍感なところがあるから気付いていないだけかもしれないけど……まぁ、いいわ。それよりも昨日から私も徳川さん達と同じように詩音ちゃんに『魔冬お姉さま』って呼ばれているんだ。私、一人っ子で昔から姉妹って凄く憧れていたからとっても嬉しいの……」
「そ、そうなんだね……」
やはり魔冬も詩音から『魔冬お姉さま』って呼ばれているのか?
それなのに何故、乃恵瑠さんだけは『織田先輩』なんだろう??
うーん……
「颯君、どうかしたの? 何か考え事?」
「え? ああ、一つ気になることがあってさ……」
「え、何? 何が気になるの? もし良ければ教えてくれない?」
「うーん……これは魔冬に聞いても分からい事だろうけど……実は詩音の事だけどさ、魔冬や他の人達の事を『〇〇お姉さま』って呼んでいるけど、何故か乃恵瑠さんだけは『織田先輩』って呼んでいるんだ。昨日知り合ったばかりの人達に対してでも『お姉さま呼び』をしているのに何で乃恵瑠さんだけは『お姉さま呼び』をしないのかぁと思ってさ……」
詩音に聞くのが一番手っ取り早いんだけどな……
「ふーん、なるほどねぇ……それは少し興味がある話だね。でもまぁ、詩音ちゃんに直接、理由を聞けば分かるとは思うけど……」
だよな? やはり後で詩音に聞いてみるか。
「でも一つ推測するならば、詩音ちゃんが故意的に織田会長だけを『先輩呼び』しているんじゃないと私は思うなぁ……」
「えっ、それはどういう事なんだい?」
「つまりね、詩音ちゃんが無意識のうちに織田会長だけを良い意味か悪い意味かは分からないけど差別化しているような気がするの」
無意識のうちに差別化? どういう事だ?
余計に分からなくなってきたぞ。
「さっきも言ったけど私は姉妹がいないからよく分からないけど颯君と詩音ちゃんとの血の繋がりがそうさせているという考え方もアリかなと……こんなことは私の口から言いたくはないけど、詩音ちゃんの心の中に大好きなお兄ちゃんの彼女になっても良いのは織田会長だけだという思いがあって他の人達と差別化させる為に『織田先輩』って呼んでいるとかね……」
まぁ、詩音は乃恵瑠さんの事を凄く憧れている様には思えるけども……
「へぇ……そんな考え方もあるんだねぇ? さすが魔冬だなぁ……」
「そ、そんなに感心されちゃうと恥ずかしいわ。でもアレよ。逆の考え方もあるんだからね」
「え、逆の考え方?」
「そう、逆にこの人だけは絶対にお兄ちゃんの彼女になって欲しくないという思いが心のどこかにあって無意識に織田会長だけは『織田先輩』って呼んでいるとか……まぁ、その確率は低いとは思うけど……じゃないと織田会長の家に泊まりに行ったりはしないと思うしね」
だよな。さすがに陽キャの詩音でも好きでもない人の家に泊まることはしないと思うんだよなぁ……やはり軽く詩音に聞いてみるか。
「でも私とすれば織田会長は最大の恋のライバルだから詩音ちゃんに嫌われてくれている方が有利で有難いんだけどねぇ……詩音ちゃんがそう思っていなくても詩音ちゃんの『魂』が大好きなお兄ちゃんを守る為に織田会長を拒んでいるとかでも構わないんだけどなぁ……フフ、まぁ、そんな簡単に私の思い通りになるとは思っていないけどね」
呼び方の話から遂に魂まで出て来ちゃったぞ。
「やっぱり魔冬って凄いよね? 勉強が出来るだけじゃなくて発想力、想像力、あと推理力も優れているんだもんなぁ……俺なんて全然足元にも及ばないよ」
「そ、そんな事は無いよ。颯君だって凄い人だよ。私が持っていないものをたくさん持っているんだから!! 思いやりがあって、優しくて、色々な人に気遣いができて、それなのに力も強くて……私には無いものばかりで……」
「ハハハ、ありがとう……でも魔冬だって力は弱いかもだけど、俺の悩みにこれだけ真剣に考えてくれるなんて優しいからだし、思いやりも気遣いもできる子だからだと思うよ」
「颯君のバカ……」
「え?」
「私は颯君とは違うの。私は好きな人だけにしか優しくできないの……ポッ」
魔冬……
【午前恒例の勉強会】
「皆さーん、今夜は合宿最後の夜ということで花火大会を行いたいと思いますので、それまで、お勉強頑張りましょうねぇ?」
「いっ、伊緒奈さん、本当ですか!?」
「太鳳ちゃん、嘘なんて言わないわよぉ。実は前から最後の夜は花火大会をしようって羽柴さんと決めていたんだよ」
「陽菜先輩、マジかっつーの!?」
「フフ、マジっすよ~」
「花火かぁ、私、花火大好きなのよね~ あ、徳川さん? もし良ければ私の従妹たちも呼んじゃってもいいかな~?」
「はい、別に構わないですよ。毛利さんの従妹さん達も呼んでください」
「と、徳川さん!! カンナ達も呼んでもいいかな!?」
「はい、武田さんもお友達を呼んでください。最後の夜くらいは全員で盛り上がりましょう」
今夜はオールスター全員集合みたいになってしまうな。
凄い花火大会になりそうだ……
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