第144話 黒田かなえの真実➀

 昼休みになり俺は伊緒奈達の昼食後に休憩を取ることに。


 昨日のバーベキューとは違って今日の昼食は春日メイド長と魔冬達女子が料理を作ってくれたので後片付けも自分達がやるからと俺だけ先に休憩を取らせてくれたのだ。


 そして俺はいつもテスト勉強をしている会議室に黒田先生が待っているからと伊緒奈に言われ会議室に向かう。


 道中、マーサさんが心配そうな表情で俺の事を見ていたが俺は笑顔でマーサさんに応える。まぁ、瓶底メガネをしているから、俺が笑顔かどうかは分かりにくいかもしれないけど。



「竹中せんぱーい!! どこに行かれるんですかーっ!?」


 ギューッ


「うわっ、石田さん、急に抱きつかないでくれないか!? それに俺、ちょっと急いでいるから離れて欲しいんだけど……」


「えーっ、そうなんですかーっ!? 竹中先輩、休憩に入るみたいだったから一緒にスィーツでも食べようと思ったのに~残念だなぁ……」


 いや、マジで俺に対しての態度が変わり過ぎだろ!?


 ほんと、何があったんだよ?


「しかし、昨日の竹中先輩はカッコよかったですよねぇ? 私、見ていてしびれましたよ!!」


 出来れば昨日の事は忘れて欲しいんだけどな。


「と、とりあえず俺、急いでいるから!!」


「あーっ、待ってください、竹中せんぱーい!!」


 ああ、あ……行っちゃった……



「美月ちゃん、今から颯君は担任の先生と大事なお話があるんだから邪魔をしちゃダメよぉ」


「あ、陽菜様? え? 担任の先生が来ているんですかぁ? それに担任の先生ってことは黒田先輩のお姉さんですよねぇ? 何でこの合宿中に竹中先輩に会いに来たのですか?」


「さぁ、何でだろうねぇ? 私は何も知らないわよぉ」


「ええ? 本当ですかぁ?」


「フフフ……本当よぉ……」




 コンコン


「はーい、どうぞぉ」


 黒田先生の声だ。


 ガチャ……


「し、失礼します……え? 伊緒奈もいるじゃないか?」


「えーっ? 颯君は私がいたら困るのぉ?」


「いや、困るというか……黒田先生も話づらいんじゃないかなぁと思ってさ……」


「フフフ……冗談よ、私は直ぐに出て行くから心配しないで」


 最近、俺は伊緒奈に良いようにされている感じがするよな?


「竹中君こんにちはぁ。しかし、あなた達は本当に仲良しだねぇ? もう、生徒会長選挙結果なんて待たずに二人、付き合ったらどうなのぉ? そして二人で忘れられないくらいの濃い夏にしちゃってみたらどう?」


 えっ!? この人は教師のクセに何て事を言い出すんだ!?

 こ、濃い夏って……思わず想像しかけたじゃないか!!


 ってか、黒田先生は生徒会長選挙で勝った人が俺と付き合うって事も知っているのか!?


「黒田先生? こちらの『本当の事情』を知っている感じなのにそんな事を言われるなんて先生って意地悪で腹黒いですよねぇ?」


「フフフ……冗談よ、冗談……私が可愛い生徒達に意地悪なんてする訳が無いじゃない? それに腹黒いっていうのは止めてよねぇ?」


「フフフ……私も冗談ですよぉ……」


「あら、それなら良かったわぁ……フフフ……」


 何、この二人の会話は?


 何か怖い……


 それよりも伊緒奈の言う『本当の事情』って何だ?


 ん?


 ああ、伊緒奈が生徒会長になって俺と偽のカップルになって付き合うって事だよな?


 そして直ぐに別れるという作戦……


「それでは私はそろそろ出て行きますので黒田先生はゆっくりして行ってください」


「はーい、突然、お邪魔したのにありがとね、徳川さん?」


「いえいえ、但し、颯君に変な事はしないでくださいね?」


 変な事!?


「ええ? 変な事って例えば何かなぁ?」


「変な事は変な事です!! とりあえず颯君が嫌がる様な事はしないでくださいって事です」


「ふーん、それじゃぁ竹中君が喜ぶ様な事はしてもいいってことよねぇ?」


「うっ!? す、好きにしてください!! ギロッ」


 えっ!? 何で伊緒奈は俺を睨んだんだ!?


「それでは失礼します……」


 ギーッ ガチャッ……



「ハハハ、徳川さん、やっと部屋から出て行ってくれたわねぇ? それよりも竹中君、終業式以来だからとても久しぶりに感じるわね?」


「そ、そうですね……」


「まぁ、立ち話もなんだから、座ってちょうだい?」


「は、はい……」


 俺が椅子に座ると黒田先生は俺の横に座り直してきた。


「え?」


「ハハハ、別に横に座ってもいいでしょぉ?」


「は、はい……」


 俺の横にピッタリと座る黒田先生の身体からとても良い香りがしてくる。


 しかし、この人は学校以外でもお色気たっぷりな服装をしているな?


 Tシャツにショートパンツだけど、Tシャツの胸元は大きく空いているので胸の谷間がめちゃくちゃ見えているし、ショートパンツもこれでもかというくらいにピチピチで思春期の少年には目の毒だぞ!!


「ん? 竹中君、どうしてそんなに顔が赤いの? あ、もしかして先生のお色気たっぷりの服装を見て興奮しているのかしら? ププッ」


「こ、興奮なんてしていませんよ!! ただ、目のやり場に困っているだけで……そ、それよりもマーサさんが言っていた事は本当なんですか?」


「うーん、そうねぇ……おおむね本当だと思うわ。いくつかの補足が必要だとは思うけどねぇ……」


「本当でしたら俺は黒田先生にお礼を言わないといけません。あの頃の俺に勉強を教えてくれてありがとうございました!!」


「フフフ……お礼なんていいわよ。ちゃんと竹中君のご両親から家庭教師代として報酬は頂いていたんだし、それに私は今、君がこうして元気に仙石学園の生徒として頑張ってくれればそれで満足なんだからさぁ……」


 く、黒田先生……


「でも、もしあの時、黒田先生に勉強を教えてもらっていなかったら合格していたかどうか……とても分かりやすく教えてくれましたし……黒田先生に教えてもらうのがとても楽しみになっていましたし……だから、やっぱりお礼は言わせてください。本当にありがとうございました!!」


「ふぅぅ……ほんと竹中君は小学生の頃から素敵な性格をしているよねぇ……まぁ、だからあの頃、まさか高校生だった私が小学生の君の事を徐々に……」


 え? 俺の事を徐々に何……?


「さぁ、そろそろ本題に入りましょうかぁ?」


「え? は、はい……そうですね……」




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