第22章 合同夏合宿二日目編

第143話 合宿二日目の朝

 【合同合宿二日目】


「ケイトさん、おはようございます」


「颯君、おはよう」


「昨夜はどうでしたか? 盛り上がりましたか?」


「ハハハ、そうね。盛り上がったとは思うけど……でも颯君がいないのは寂しかったなぁ」


 学園でのケイトさんは常に凛としていてカッコイイけど、今朝のケイトさんの表情は柔らかくてとても良いなぁ……


 それにまだポニーテールにしていない長い髪が少し乱れている状態も自然で少し色気を漂わせているよなぁ……


「ま、枕投げはされたんですか?」


「ハハハ、修学旅行じゃあるまいし、そんな事はしないわよぉ」


「そ、そうですよね?」


「でも颯君にそう言われるとやりたくなってきたわ。よしっ、今夜、徳川さんや羽柴副会長達と枕投げ大会をやろうかしら」



「は、颯君、おはよう……」


「ん? ああ、魔冬おはよう。それに他のみんなもおはよう」


「 「 「おあはよう、竹中君」 」 」


 今日も俺達五人で仕事を頑張らないといけないし、魔冬以外の人達とももう少し打ち解けないといけないんだけど、なかなか俺の性格では難しいよなぁ……


「竹中君、どうしたんだい? そんな神妙な顔をしてさ……あっ、もしかして本当は魔冬のことが好きなのにその他大勢の女子達が騒がしいから本当の気持ちを言えないから悩んでいるとかかい?」


「へっ? そ、それは違いますというか、俺は全然悩んでいませんし……片倉さん、変な事を言わないでくださいよ」


「そうよ、小町ちゃん!! 私までビックリしたじゃない!! でも小町ちゃんの言う事が本当なら嬉しいけどさ……チラッ」


 魔冬、俺をチラッと見ないでくれ。


「ハハハ、私は年下の子をいじるのがとっても好きなのよねぇ……」


 片倉さん、頼むからこんなか弱い陰キャ男子をいじらないでくれ!!


「片倉さん、年上の私も少し驚いたじゃない。一瞬、伊達さんと颯君が一緒にバイトをしているのはそういうことだったの? って思ったわ!!」


「ハハハ、そう思ってくれても良かったんですよぉ」


「フンッ、あなたの言う事は信じない様にするわ」


「さぁ、魔冬も小町ちゃんも、早く着替えに行きましょうよ? じゃないと春日メイド長に叱られるわよ」


「そ、そうね、忍ちゃん」


「ウフッ、忍ちゃんがそんなセリフを言うなんて驚きましたよぉ」


「うるさいわね、蕾!! あんたも早く行くわよ!?」


「はーい」


「あ、それじゃぁ、俺も本多執事長のところに行きますので、ケイトさんはゆっくりしていてくださいね?」


「ありがとう、颯君……他の子達はまだ寝ているみたいだから私はお庭でも散歩させてもらうわね?」



 俺は急いで本多執事長のところに向かったが途中である人に呼び止められた。


「は、颯君……?」


「え?」


 俺を呼び止めたのは黒田マーサさんだった。


「あ、おはようございます、マーサさん。マーサさんも早起きですね?」


「おはよう、颯君。私は早起きというか昨夜は全然眠れなくてさ……」


「えっ? 一睡もしていないんですか!?」


「う、うん……そんな感じかな。じ、実はね、昨日、お姉ちゃんに颯君と話した内容をラインしたんだ」


「えっ? そ、そうなんですか?」


 あの内容を黒田先生に伝えても良かったのかな?


「うん……それでね、お姉ちゃんから返事がきたんだけど……」


「どんな返事だったんですか?」


「えっとね……お姉ちゃん、今日のお昼ごろにここに来て颯君とお話をしたいからよろしく~っていうラインが来たわ」


「え、えーっ!? 黒田先生がここに来るんですか!?」


「うん、そうみたい。自分からちゃんと颯君に『真実』を話したいんだってさ」


「そ、そうなんですか……」


 遂に黒田先生が今までの経緯を教えてくれるのか?


 楽しみでもあるけど、なんかドキドキしてきたぞ。



「あら、颯君にマーサちゃん、おはよう~二人仲良く何を話していたのかなぁ?」


「ひ、陽菜さん、おはようございます!! べ、別に大した話はしていませんよ」


「そ、そうよ。颯君とはたまたま会っただけで別に仲良く話をしていた訳じゃないから!! そ、それに私は陽菜と違って颯君は私の好きなタイプでも無いし、心配する必要なんて全然、無いから!!」


 好きなタイプであるはずが無いのは分かっているけど、本人の前でハッキリ言われると少し気持ちが凹んでしまうのは何故だろうか?


「フフフ……別に心配なんてしていないけどねぇ……でも昨日の途中くらいからマーサちゃん、颯君の事を『颯君』と呼んでいるし、颯君も『マーサさん』って呼んでいるから少し気になっただけだよぉ」


「そ、それは颯君の担任の名前が黒田だし、同じ名前が二人いてもややこしいと思って私の事は『マーサ』って呼んでくれていいよって私から言ったのよ。ね、颯君?」


「は、はい、そうです。マーサさんの言う通りです」


「ハハハ、二人共、別にそんなに焦らなくても大丈夫よぉ。少しだけ気になっただけだからさぁ……」


 未だに陽菜さんと茂香さんだけは何を考えているのか俺には分からないところがある。


 本当に二人は俺の事が好きなんだろうかと疑ってしまう時もあるくらいだ。


 でも、こうやって陽菜さんから『合同合宿』の提案をしてきたんだし、恐らく俺と少しでも長い時間過ごしたいという思いから提案して来たんだろうとは思うのだが……


 それとも他に何か目的があるのだろうか?

 まぁ、俺が考えても何も浮かばないんだけどな。



「おはようございます、羽柴副会長に黒田さん。とても早起きですねぇ? それに颯君、今日も暑いと思うけどよろしくね?」


 伊緒奈まで登場かよ?


 でもまぁ、伊緒奈は芝居で俺を好きなだけだから、マーサさんと俺が互いに下の名前呼びをしていても何も思わないだろうから安心だけど……


「い、伊緒奈……おはよう……」


「ところで颯君? 昨日から気になっていたんだけど、二人はいつから下の名前呼びをするくらいに仲良しになったのかしら?」


「えっ!?」


 い、伊緒奈も一気にするのか!?


「フフフ……冗談よ。私は颯君が誰と仲良しになっても問題は無いから安心してちょうだい……でもあまり私の前でイチャイチャされるのはちょっとアレだけどさ……」


「え? 最後まで聞こえなかったんだけど……」


「別に聞こえなくてもいいわ。それよりも太鳳ちゃん達を起こしにいかないと。早起きも合宿のうちだしねぇ……ってことで起こしてくるわね?」


「あ、ああ……いってらっしゃい……」


「プッ、徳川さんも何かと複雑な気持ちで大変だよねぇ……」


「え? 複雑な気持ちってどういう事ですか、陽菜さん?」


「べ~つに~何でもないよぉぉ……」


 何だか意味深な言い方だよな?


 それにしても黒田先生まで徳川邸に来るなんて……一体、どんな話になるんだろうか?

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