第141話 上杉グループ参戦

「竹中君……助けてくれてありがとう……」


「いえ、直江さんは怪我していませんか? 大丈夫ですか?」


「う、うん……私は大丈夫よ。あ、カイトも早く竹中君にお礼を言いなさい!?」


「いや、お礼だなんていいですよ。俺は当然のことをしただけですので……」


「た、竹中……さん……」


 ん? さん??


「竹中さん!! 助けてくれてありがとうございました!! 俺、めちゃくちゃ感動しましたよ!! 姉貴があなたに惚れた理由が分かった気がします!! だから、お願いです。俺を竹中さんの舎弟にしてもらえませんか!?」


「はぁあ!? しゃ、舎弟って何だよ? それに急に『さん付け』で呼ぶのは止めてくれよ!? ど、どうしたんだよ。お前も俺の事を嫌っていた一人じゃないか?」


「たった今、心を入れ替えました!!」


 入れ替えなくてもいいよ!!



「フフフ……ようやくカイトも私の気持ちが分かったようだね?」


「あ、姉貴!? 遅かったじゃ無いか? 何をしていたんだよ!?」


「ケ、ケイトさん?」


「颯君、私も見ていたよ。ほんと、あなたは凄い人だわ。ますます颯君の事が好きになってしまったわ……颯君、カイト達を助けてくれてありがとう」


「い、いえ、そんな事は……」


「姉貴、いつから見ていたんだよ!? 見ていないで助けに入ってくれたら良かったじゃないか!?」


「はぁ……我が弟ながら情けないわねぇ……カノン一人も守れないなんて……ほんと、あんたは颯君の舎弟になるべきだわ」


「い、言われなくてもたった今、『舎弟契約』は結ばれたよ!!」


「はぁああ!? 誰が舎弟にするって言ったよ!?」


「まぁ、舎弟の件は二人で話し合えばいいとして……それよりも、そこのツインテール娘、颯君から離れなさい!! いつまで抱き着いているのよ!? 私だって、あんなカッコイイ姿を見せられてしまったら颯君にめちゃくちゃ抱き着きたい気持ちなんだから!!」


 いや、誰も俺に抱き着くのは止めてくれ!!


「いくら『仙石学園伝説急級の生徒』である上杉先輩でも、それは聞き入れられません!! 私は竹中先輩を愛してしまいましたから!!」


「だ、だから私も同じよ!! それに私の方が先に颯君の事を好きになったんだから、私の方が抱き着く権利があるわよ!!」


「フッ、恋に後も先もありませんよ……」


「クッ……」


 あのケイトさんが石田さんに言い合いで苦戦するなんて……


 やっぱ、石田さんの能力も凄いんだな?


 すると直江カノンさんが呆れた表情をしながら質問をしてきた。


「まぁまぁ、ケイト先輩、落ち着いてください? それよりも竹中君達は何故、このコンビニに来ているの? 家が近いとか? でも長曾我部さんや島津さんの家はこの町じゃないよね?」


「あっ、すっかり忘れていました!! 俺はコンビニに飲物を買いに来たんでした!! ん? でもアレだな? これは好都合かもしれないぞ。 あ、あのぉぉ……み、皆さん、お願いがあるんですけど……」


「 「 「 「 「 「はい、何なりと!!」 」 」 」 」 」


 うわっ、六人同時に返事をしてきたぞ!!



「た、竹中君……私との話は……?」


「ん? ああ、森蘭子か……今日は忙しいから今度にしてくれ? それにあいつ等の手当てをしてやらないといけないんじゃないのか?」


「え? ええ、そうね……って事はまた会って話を聞いてくれるの?」


「ああ、一回くらいなら聞いてやるよ。でも俺は夏休みの間は忙しいし、いつ会えるか分からないけどな」


「わ、分かった。またタイミングを見て竹中君の家に行かせてもらうね?」


「ああ、勝手にしろ。まぁ、ほとんど家にいないと思うけど」


「うん、それでもいいから……」





 【徳川邸バーベキュー会場】


「はぁ……それで、上杉さん達も飲物を運ぶことを口実に家に来たって訳ですか……?」


「伊緒奈、勝手な事をしてゴメンな? でもケイトさん達のお陰でこんなにもたくさんの飲物を買うことが出来たし……これだけあれば明日の分もあると思うし……」


「颯君は何も悪く無いわよ。逆に人助けをしたんだもんね? 華ちゃんから報告を受けているよ」


「えっ? あの場に服部さんもいたのか?」


「た、竹中君……とてもカッコよかったわ……もし竹中君さえ良ければ、さっきのヤンキー達を消すことくらい簡単だけど、どうする?」


「服部さん!? け、消さなくていいから!!」


 本当に消しそうだから恐ろしいよな!?



「しかし、驚いたっていうか、まさか徳川グループと羽柴グループで合同合宿をしているだなんて。そして颯君と長時間過ごせる作戦に出るなんて……抜け駆けをされた気分だわ……」


「上杉先輩~? 抜け駆けっていう言い方は止めてくださいよぉ? 別に私はせっかくの夏休みだし徳川さん達と親睦を深めたいなぁと思って提案しただけですからぁ」


「ふーん、それではこの合宿を提案したのは羽柴副会長なのね? それにしてもお互いに生徒会長候補で敵同士なのに、よく合同合宿を受け入れたわね、徳川さん?」


「ハ、ハハハ……まぁ、私も夏休みの思い出を作りたかったのでお互いの利害が一致した感じですねぇ……それに伊達さん達もメイドとして働いていますから三つ巴で良い機能が働いていますよ」


 伊緒奈は間違いなく陽菜さんに何か弱みを握られたから受け入れたんだろうけど。


「えっ? 伊達さんもここで働いているの? うーん、それは知らなかったわ。って事は会長候補の三人がここにいると? ふぅ、危ないところだったわ。カノンだけのけ者になるところだったわね……」


「ケイト先輩、別に私はのけ者でも構わないんですけど……それに織田会長だってここにいませんし……」


 あっ、そっか。言われてみればそういう事になるよな?


 会長候補の一人の乃恵瑠さんだけが徳川邸にいないって事か。


 でもあの人はちゃっかりうちに来て詩音と仲良くなったり、静香さんや茂香さんに同盟を持ちかけたりと乃恵瑠さんらしい動き方をしているもんな。


「ところで羽柴副会長? この、さっきから颯君に付きまとっているツインテール娘をなんとかしてくれないか? 鬱陶しくて仕方がないんだけど」


「そうですね。それだけは上杉さんと同意見です。美月ちゃん、そろそろ颯君から離れてちょうだい? じゃないと颯君がお仕事出来ないでしょ~? 言う事を聞かなかったら春日メイド長に叱ってもらうわよ」


「はーい、分かりました……竹中先輩、名残惜しいですが抱き着くのはまた明日という事で」


 明日のバイト、休もうかな……


「しかし、まさか美月ちゃんがねぇ……私も驚いたわ……まぁ、今後の作戦には影響は無いとは思うけど……」


「徳川さん、あなたがさっき言っていた『十人目』って、颯君の事を好きになる女子が十人目って事じゃないの? そうなる事が分かっていた感じの言い方だったし、あなた何か隠しているんじゃない?」


「ハハハ、伊達さん、急に変な事を言わないでくれるかしら? 私はただ九人ってキリが悪いし、十人ならキリが良くてスッキリするかなぁって思って言っただけよ……」


「ふーん、私としたらライバルが増えるのは嬉しくはないけどね……」



 しかし、一部俺の責任ではあるけども初日の『合同合宿』は更に賑やかになったよな。


 これを機にみんな仲良くなってくれればなぁ……



「それはそうと、徳川さん? まだ部屋は空いているかしら?」


「え? まぁ、数部屋は空いていますけど……」


「それじゃぁ、今から私達は荷物を取りに一旦家に帰るから、そして沙耶と加奈も誘って夕方に五人で伺うので五つの部屋の準備をよろしくね?」


「ケ、ケイトさん、どういう事ですか? も、もしかして……」


「颯君、そうよ。そのもしかよ。私達もこの『合同合宿』に参加するからよろしくね!?」


「 「 「えーーーっ!!??」 」 」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る