第138話 石田美月の変化
「颯君、さっきは何をしていたの? 全然、戻って来ないから心配したわ」
「ご、ゴメン、魔冬……キッチンに行く途中、リビングの前を通ったらマーサさんが元気が無い感じでいたからさ、思わず声をかけたんだよ……」
「マーサさん? 颯君、黒田先輩とそんなに親しかったかしら?」
「えっ?」
ヤバい、余計な事を言ってしまったかも……
「颯君、もしかして黒田さんから先生の話を聞いたんじゃない?」
「え、伊緒奈? いつの間に俺の近くにいたんだ?」
「フフフ……そんな事よりもどうなの? 黒田先生の秘密を聞いたの?」
「あ、ああ、聞いたよ。伊緒奈はその事を前から知っていたのかい?」
「いいえ、私も最近、知り合いに教えてもらったの。で、それを知った颯君はどう思ったのかな?」
「うん、とても驚いたよ。まさか黒田先生が伝説の生徒会長……っていうか、俺の家庭教師をやっていたのも黒田先生だったって事も伊緒奈は知っていたのかい?」
「うん、まあね。でも誰に教えてもらったのか今は言えないけどね……」
うーん、そこが謎のままなんだよなぁ……
伊緒奈に教えた人物……前に俺の事を陰ながら応援してくれている人がもう一人いるって言っていたけど、恐らくその人から聞いたんだろうな。
それにしても、その謎の人物って誰なんだろう?
俺が知っている人なのか?
ただ、その人は俺の昔の事までよく知っているのは間違いないよな?
「ちょっと徳川さん? 私が颯君とお話をしていたのに割り込まないでくれるかしら? それに黒田先生がどうかしたの?」
「フッ、伊達さん、あなたは今、お仕事中なんだから私語は謹んでもらわないと困るわ」
「何ですって!?」
伊緒奈、俺もお仕事中なんですけど……
「徳川さんと伊達さん、どうかしたの? 何か言い争いをしている様な感じだけど。せっかく楽しい合宿が始まったんだから、こんなところで揉めないで欲しいなぁ……颯君もそんな野蛮な人達から離れて私と一緒にバーベキューを楽しもうよぉ?」
「ひ、陽菜さん……」
「 「野蛮な人って失礼じゃないですか!?」 」
「え、私、失礼な事を言ったかしら?」
「いえ、決して陽菜様は失礼な事などおっしゃっておられません!! 本当の事をおっしゃっただけです!!」
あ、この子は石田さん……ってか、陽菜様って……
「石田さん? あなたは関係無いから引っ込んでいてちょうだい」
マジで伊緒奈は石田さんに対して怒っているぞ。
本当に相性が悪いんだな?
「そういう訳にはいきません。私は陽菜様の護衛も兼ねていますし、お二人が陽菜様に絡んでくれば私が助けに入るのは当然です!!」
「石田さん、私は徳川さんと違ってあまりあなたの事は知らないけど、少し出しゃばり過ぎじゃないかしら? それに合宿で護衛だなんて……ここには颯君がお世話係的な事もやってくれているんだし護衛なんて必要ないわ」
「フンッ、その竹中先輩に何が出来るのですか? そんな弱々しい感じの人に陽菜様を護衛なんて無理ですよ!! 私は陽菜様が竹中先輩を好きだと言われるから協力しているだけで、もし陽菜様が竹中先輩を潰すと言われたら全力で潰しにかかりますよ!!」
「 「な、何ですって!?」 」
パシンッ!!
「キャッ!!」
「 「 「えっ!?」 」 」
「ひ、陽菜さんが石田さんの頬を……!?」
「美月ちゃん、いい加減にしなさい!! あなた少し先輩達を舐め過ぎよ。 私は『竹中颯争奪戦』メンバーとお互いに言い合いしたり、いじり合ったりするのを楽しんでいるだけなの。だから私の楽しみを美月ちゃんに邪魔されたくないの。ここに来る前にもその事は美月ちゃんにも言ったはずよ。それに颯君の事を悪く言うのは絶対に許さないから今後、気を付けなさい!!」
俺を庇ってくれるのは有難いですけど、言い合いやいじり合いを楽しむのもどうかと思うんですが……
「ウッ……グスンッ……」
「い、石田さん、大丈夫かい?」
「ほ、ほっといてください!! 私に近づかないでください!!」
「ご、ゴメン……」
「はぁ……なんか冷めちゃったわ。伊達さん、少し休憩をとってもいいから向こうのバーベキューコンロで春日さんがA5ランクの国産牛を焼いてくれているので一緒に食べましょう?」
「そうね。少し休憩させてもらうわ。颯君、この近辺のお世話お願いね?」
へ? なんか、あの二人、揉める度に親しくなってきてないか?
まぁ、俺からすれば嬉しい事だけども……
「美月ちゃん、ぶってしまってゴメンなさいね? でも私は彼女達とああいうやり取りも楽しんでいるから……だから合宿の間はみんなと仲良く……」
「仲良くなんて私には出来ません!! 失礼します、私、向こうの手洗い場で顔を洗ってきます!!」
うーん……石田さん、拗ねてしまったようだな?
まぁ、崇拝している陽菜さんにぶたれたんだからかなりショックだろうしな……
「颯君、変なところを見せてしまってゴメンねぇ? あの子、あんな感じだけど悪い子じゃないから……昔から私の事を慕ってくれ何でもしてくれて助かっている事は多いんだけど……ただ、度が過ぎるところがあって……」
「ハハハ、俺は大丈夫ですよ。しかし石田さんは本当に陽菜さんの事が大好きなんですね? 他のメンバーもそんな感じですし……でもまぁ、それも陽菜さんが今まで石田さん達の事を心からお世話してきたからだとは思いますが……」
陽菜さんは腹黒で策士なところはあるけど、きっと友人や後輩思いで心から接しているからこそ、これだけのメンバーが集まるんだと俺は思っている。
「颯くーん!! やはりあなたは本当に素敵な人だわ!! 颯君がそう言ってくれて私、とても嬉しい……本当にありがとね。お礼に明日のプールでは颯君に色々なサービスをさせてもらうから楽しみにしておいてねぇ? ウフ♡」
「えっ!?」
色々なサービスって何をするつもりなんだ!?
「あ、俺も少し汗を掻いたんで顔を洗ってきますね? そ、それでは!!」
【手洗い場】
ふぅ……ほんと陽菜さん達と一緒にいると汗を掻くことばかりだな?
ん? 石田さん、まだ顔を洗っているぞ。
声をかけて大丈夫かな?
また、あっち行けって言われるかもだけども……
「い、石田さん? ぶたれた頬は大丈夫かい?」
「げっ!? な、何で竹中先輩がここにいるんですか!? どこか行ってください!!」
やはりな。
「ハハ、そんな事、言わないでくれよ? 俺も少し汗を掻いたから顔を洗いに来ただけだし……洗ったら直ぐ向こうに行くからさ……」
俺はそう言うと蛇口をひねり、まずは手を洗い、そしてメガネを外し、顔を洗い出した。
何回か顔を洗っていた俺だが、なんだか視線を感じる。
俺は顔を少しだけ横に向けてみたが、メガネをしていないので顔がぼやけて分かりづらいけど、髪型がツインテールなのは何となく分かったので、俺をジッと見ていたのは石田さんだろう。
俺は洗い終わり、首にかけていたタオルで顔を拭き、そしてメガネをつけて再度、石田さんの顔を見ると、さっきまでとは全然違う表情をしていたので驚いた。
「アワアワ……アワアワ……」
「石田さん、何をアワアワ言っているんだい? それに顔がとても赤いけど大丈夫? あっ、も、もしかして!?」
「アワ!?」
「熱中症じゃないのか!?」
「違うわ!!」(ポッ……)
何故、関西弁?
それに熱中症じゃないのなら何で石田さんの顔はそんなに赤いんだ?
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