第21章 合同夏合宿一日目編

第135話 羽柴グループ参上

 遂に『合同夏合宿』の日がやって来た。


 陽菜さん達は八名で合宿を行うと言っているらしいが、一体どんな人達が来るのだろう?




「徳川さん、今回は私の提案を『素直』に受け入れてくれてありがとね~?」


「いえ、お礼を言われるほどのことでは……とりあえず何人かは知っている方もいますけど、改めて皆さんを紹介していただけませんか?」


「うん、そうね。それではそれぞれ挨拶をしてくれるかなぁ?」


「そうだね。それではまず僕から……僕は陽菜の双子の弟で名前は羽柴陽呂はしばひろといいます。今回は姉のワガママを受け入れてくれてありがとうございます」


 こ、この人が陽菜さんの双子の……


 めちゃくちゃイケメンだし、爽やかな感じの人で好感がもてるよな。


「こらぁ、陽呂……ワガママは余計だよぉ」


「それじゃぁ、次は私ね。私は二年の宇喜多緋色うきたひいろです。陽菜とは中等部の頃から仲良くさせてもらっているわ。私の家も大きい方だけど、徳川さんの家はレベルが違い過ぎるくらいに大きいわね? こんなお城みたいな家で合宿できるなんてとても楽しみにしているわ」


 宇喜多さんかぁ……この人は見るからにお金持ちのお嬢様って感じの人だな。


 まだ性格は分からないけど、表情だけ見ればプライドは高そうだな。


「そ、それじゃ次は私が……私は二年の黒田マーサよ。どうぞ宜しく……」


 ん? 黒田……


「ウフッ、この子のお姉ちゃんは颯君や徳川さんの担任の黒田かなえ先生なのよぉ」


「 「 「えーっ!?」 」 」


「ひ、陽菜ちゃん!! そ、それは別に言わなくても……」


「別にいいじゃない? 本当の事なんだしぃ」


 この黒田マーサさんが黒田先生の妹ってのは驚いたけど、何で姉妹って言われるのを嫌がっているんだろう? 結構、美人だし……」


「じゃぁ、次はあーしの番だね!?」


「長曾我部さん、あなたと次に控えている島津さんは別に自己紹介はしなくてもいいわよ。あなた達の事はよく知っているから……」


「えーっ!? 知っていても一応、自己紹介くらいさせろっつーの!! なぁ、よしのん?」


「そうですね。千夏ちゃんのおっしゃる通りです。それに私は徳川さん以外の方はあまり存じ上げていませんし……」


「だよな!? ってことで、あーしは二組の長曾我部千夏っす!! そしてこの子が……」


「三組の島津佳乃と申します。どうぞ宜しくお願い致します」



 まさか、この二人が陽菜さんの合宿メンバーに入っていたとはな。


 陽菜さんを裏切った二人を未だに同じグループとして扱っている陽菜さんも凄いというか……


 それとも陽菜さんの事だから、あの二人が再び陽菜さんの指示で動かざる負えない弱みでも握ったのだろうか?


 いずれにしてもこの合宿期間、長曾我部さんと島津さんには要注意だな。


「前田先輩も合宿メンバーなんですねぇ?」


 ん? この子は誰だ?


「そ、そりゃぁそうだろ、石田さん? 俺は昔から陽菜ちゃん推しの幼馴染なんだぞ」


「ふーん、そうですかぁ……てっきり私は前田先輩は徳川グループの軍門に下ったんだと思っていましたよぉ……」


「バッ、バカな事を言うなよ!!」


 何だ、この『生意気ツインテール女子』は?


 前田先輩って言っていたからこの子は中等部の……


 って事はこの子が前に俊哉が言っていた……



「皆さん、初めまして。私は仙石学園中等部三年の石田美月いしだみづきと申します。凄い先輩達ばかりなのでとても緊張しているところです。色々とご迷惑をおかけするかもしれませんがどうぞ宜しくお願い致します」


「チッ……」


 え? あの温厚な俊哉が珍しく石田さんに対しては敵意がある様に見えるぞ。


「石田さん、お久しぶりね? 今は中等部の生徒会で副会長をしているんだってねぇ? 凄いなぁ……」


「徳川先輩、お久しぶりです。それと私は全然、凄くないですよぉ。憧れの徳川先輩には程遠いですからぁ……」


 何か石田さんの話し方は鼻に付くよな?


「フフフ……石田さんは昔からだけど、心にも無いことを言う時は相手の顔を見ないわねぇ? あ、ゴメンなさーい? バラしちゃいけなかったかしらぁ?」


「えーっ? 私、心の底から徳川先輩を尊敬していますよぉ。特に腹黒なところなんて最高じゃないですかぁ?」


「は、腹黒……ふーん、それじゃぁ、今の石田さんはそれを完全に受け継いで『最強の腹黒女子』になって陰からコソコソと羽柴さんの応援をしているんだねぇ?」


「ハハハ、やはり『元祖腹黒女子』の徳川先輩には言い合いでは勝てないですね? まぁ、そうですね。陰から陽菜先輩の応援をさせていただいていまーす」


 な、何か『腹黒対決』みたいになってきたけど、大丈夫なのか?



「ハハハハハ!! あなた達の言い合いを久しぶりに見れて最高だわぁ!! ほんと、中等部の頃は毎日、そんな感じだったもんねぇ?」


 中等部の頃は毎日?


「太鳳? それってどういう事なんだ?」


「あれ、同じ中等部にいたのに颯さんはご存じ無かったんですか? 私達が中等部二年生の頃は羽柴さんが生徒会長、伊緒奈さんが副会長、そしてあの石田さんが書記だったじゃないですか?」


「えっ、そうなのか?」


「えーっ? 颯さん、本当に中等部の頃は何にも興味が無かったんですね?」


「ご、ゴメン……」


「イヤイヤ、謝る必要は無いですよ!! ただ驚いただけですから……で、伊緒奈さんが副会長時代は羽柴さんと石田さんに挟まれて、とてもやりづらかったと聞いたことがありますねぇ……」


 そ、そうだったのかぁ……


 そりゃぁ、いくら伊緒奈でもあの二人と一緒の生徒会活動は疲れただろうなぁ。


 でも、この三人はある意味、似た者同士のような……


 伊緒奈には口が裂けても絶対に言えないけどな。

 

 あっ、そっか。


 だから前に陽菜さんは伊緒奈のことを『徳川さんはタヌキよ。気を付けてね?』って俺に言っていたんだな。


「そういえば、颯君は今回、合宿参加側じゃないみたいだね?」


「え? ああ、そうですね。頑張って皆さんのお世話をさせていただきたいと思っています」


「うーん、一緒に合宿できないのは残念だなぁ……でもまぁ、徳川さんの家で合宿をやらなければもっと颯君に会えなかったわけだし、一緒に過ごせるだけでも幸せだよねぇ」


「そう言っていただけると助かります……」



「ところでさぁ、陰キャメガネ君も今回は寝泊まりしながらバイトするのかっつーの? どの部屋か後で教えろっつーの!!」


「えっ?」


「そうですね。竹中君もお泊りならしながらバイトをして頂けるのなら『夜の部』も楽しみですし……ウフ♡」


 『夜の部』って何だ? 島津さんは何をする気なんだ!?


「長曾我部さんも島津さんも残念ねぇ……颯君達アルバイト組は夜になれば帰宅してもらう事になっているの。高校生が寝泊りしながらのバイトはちょっとねぇ……」


「チェッ、残念だなっつーの」「それは残念です……」


 いや、二人は何を残念がったんだ?


「そうなんだぁ……私も夜を楽しみにしていたのに残念だわぁ……」


 ひ、陽菜さんまで何を楽しみにしていたんだ!?


 今日から『普通』の合宿が始まるんだよな!?





―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。

新章開始です。

合宿ではどんなことが起こるのでしょう?

どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

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