第133話 伊緒奈と魔冬の不覚
【次の日】
昨夜、俺は詩音に抱きつかれながら、もう一つ驚く話を聞かされた。
そして今朝、俺は伊緒奈の家で全員の前で報告をしたのだが……
「えっ、そうなんだ? あの武田さんと毛利さんが織田会長側につく可能性があるんだぁ……」
「そうなんだよ、伊緒奈!! 俺も詩音から聞いてビックリしたんだけどさ……」
ん? 思っていたよりは伊緒奈は驚いていないような……それよりも何か違う事に対して不服がある様な顔をしているんだけど……
「でも、そんな事よりも織田会長始め、武田さんや毛利さんまで颯君の家にあがるなんて……まして妹の詩音ちゃんと仲良く遊ぶ間柄になっていたなんて……これは予想外の展開だわ……ほんと、不覚だったなぁ……」
伊緒奈は三人の同盟話よりも俺の家にあがったり、詩音と仲良くしている事の方を気にしている様に見えるんだけど……
「これはマズイ事になりそうね……私の敵は羽柴副会長だけかと思っていたのに、もし三人が同盟を組めば織田会長も侮れないわねぇ……それに私でさえ颯君のお家にお邪魔した事無いのに……とても悔しいわ……」
魔冬、お前もかよ?
「ちょっと伊達さん!? あんたまでこの話し合いに入る必要は無いでしょ!? 今は伊緒奈さんのグループだけで話し合いをしているのよ!!」
「本多さん、あなた細かい事を気にし過ぎよ。それに羽柴グループの前田君もいるんだし、私が会話に入っても良いじゃない? あと、あなた達は後輩なんだから先輩を少しは敬ってもらわないと困るわ……」
「ま、前田君は表向き羽柴グループに入っているだけだから別に良いのよ!! そ、それに今はバイトの先輩後輩なんて関係ないじゃない!?」
「まぁまぁ、太鳳、落ち着きなさいよ。あんた、伊達さんのペースに乗せられているわよ。別に伊達さんが私達の会話に入っても良いじゃない? どうせ、早かれ遅かれ竹中君は伊達さんにも同じ情報は伝えるんだし……ねっ、竹中君?」
「え? ああ、そうだね……俺もなるべく不公平な事はしたくないし……」
「もう、分かったわよ、知由!! それに颯さんがそうおっしゃるなら私は何も言いません!!」
「って事は颯? 俺もこの情報は陽菜ちゃんに報告しても構わないんだな?」
「ああ、そうだな俊哉……しかし、さすがの陽菜さんも多少は驚くだろうなぁ?」
「イヤイヤイヤッ、多分、陽菜ちゃんはそれくらいの事では驚かないと思うぜ。もしかしたら、そういうパターンもあり得るかもしれないと思っているかもな」
俊哉の言う通りかもしれないな?
あの策士の陽菜さんだ。織田会長よりも凄い作戦を考えているかもしれないし……
今回の『合同夏合宿』なんて、まさにその作戦の一つかもしれないぞ。
「いずれにしても、まだ武田さんと毛利さんが織田会長に付くって決まったわけではないんですよねぇ? それなら今は今度の『合同夏合宿』についての対策を考えた方が良いと思うのですけど……」
「そうね、八雲の言う通りだね。向こうは八人も来るし、羽柴さんがこの合宿に何の目的があって提案したのか……まずそこが気になるわ」
「うーん、知由が言う羽柴副会長の目的かぁ……一体、何なんだろうな? 伊緒奈に届いた羽柴副会長からのラインには具体的な事は書いてなかったのか?」
「そうね、直人。伊緒奈ちゃん、どうなのぉ?」
陽菜さんからのラインで俺は別の内容が気になるんだけどな。
そう、提案を断る事ができた伊緒奈が受け入れなければならなかった理由……
「うん、羽柴副会長が合宿でやりたい事はいくつかラインに書かれていたよ。バーベキューがやりたいとか、グループ対抗でテニス大会がやりたいとか、プールで泳ぎたいとかだったかな……」
「うーん、いたって普通よね? ってか、ただ普通に遊びたいだけにしか思えない内容よね? これだけでは羽柴副会長の真意が分からないわ」
だな……酒井さんの言う通りだ。
でも、あの陽菜さんが伊緒奈のグループと普通に仲良く遊びたいなんて事は無いと思うんだけどなぁ……
「プール……」
「ん? どうしたの、華ちゃん? プールがどうかしたの?」
「伊緒奈さん、お忘れですか? 前に竹中さんと羽柴副会長がデートしている時の会話を」
「会話? ……あっ!?」
「思い出されたみたいですね? そうです。羽柴副会長はプールであの腹立たしい胸……いえ、水着姿を竹中さんに見せる目的ではないかと……まぁ、私の勝手な考えですが……」
「ハハハ、服部さん、別に陽菜さんが水着姿を俺に見せたからといって何も無いだろう?」
「あるわ!!」
「えっ、どうしたんだよ、伊緒奈まで?」
「すっかり忘れていたわ……あの会話を聞いた私は羽柴副会長には絶対にうちのプールは貸さないと決めていたのに……色々と脅され……いえ、何でも無いわ。気にしないで」
今、脅されって言ったよな?
マジで伊緒奈は陽菜さんに脅されているのか?
「でも伊緒奈さん? プールだけは貸さないって言えば良いんじゃないですか?」
「太鳳ちゃん、それは無理なの。今回は分けあって向こうの要望はある程度は聞かないとダメなのよ……はぁ……どうしようかなぁ……とりあえず私も新しい水着を買ってこようかしら……」
「フフフ……それは良いわね、徳川さん。それでは私も水着を買ってこなくっちゃ」
「待ちなさい、伊達さん!! あなたは合宿期間中はずっとバイトなのよ!! あなたがプールに入ってどうするのよ!? それと期間限定バイトはどうなの? 本当に人は集まるの!?」
「心配ご無用よ、本多さん。限定バイトの子達は今日、ここに顔だしする予定だから……それに私は別にプールに入る為に水着を買うんじゃないわ」
「そ、それじゃぁ、何の為に水着を買うのよ!?」
もしかして……いや、まさかな……
「合宿中だけに限り、メイド服は止めて水着姿でメイドのお仕事をしようかなぁと思ってさ……その方が颯君も嬉しいでしょう? ウフッ♡」
「えっ!?」
その、まさかかよ!?
まぁ正直、言えばさぁ……俺だって『陰キャオタク』なだけで男なんだ。
女子の水着姿を見たく無いって言えば嘘になる……
逆に見てみたいってのが正直なところさ……
「伊達さん、それは却下よ」
「えっ? ああ、春日メイド長……水着姿でメイドをしてはいけないんですかぁ?」
「当然だ。メイドはメイドらしく……それだけは守ってもらう」
「そうですかぁ……残念だなぁ……ねっ、颯君?」
お、俺にふるんじゃねぇよ!!
「そんな事よりもあなた達、いつになったら仕事をするの!? 合宿は来週でしょ!? それまではしっかりと働かないとバイト代、減らすよ!! 早く各々の持ち場に行きなさい!!」
「 「 「 「は、はい!! 申し訳ありませーん!!」 」 」 」
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お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに(^_-)-☆
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