第132話 兄妹

 はぁ……今日も疲れたなぁ……


 最近、伊達さんと俺の最寄り駅まで一緒に帰る事が多くなったけど、やっぱ、慣れないな。


 一緒に並んで座席に座っているんだけど、やたら伊達さんは俺に密着してくるから全然落ち着いて座れやしない。


 今日なんかはいつの間にか俺にもたれて眠っていたから起こすのに凄く気もつかったし……


 でも伊達さんの寝顔、とても可愛かったのは確かだけど……



「ただいまぁ……」


「おかえり~お兄ちゃん!!」


「おお、ただいま、詩音……お前はお兄ちゃんと違っていつも元気だなぁ?」


「そんなこと無いよぉ。それに前にも言ったけど、お兄ちゃんだって最近はとても元気だよぉ!!」


「詩音、俺のどこが元気なんだよ? 毎日毎日、疲れて帰っているんだぞ」


「フフ、お兄ちゃん? 疲れ方にも二種類あるんだよ。嫌な事ばかりが続いての疲れ方と、毎日充実し過ぎての疲れ方と……私から見ればお兄ちゃんは今まで経験した事の無いくらいに毎日が充実していて、それにまだ身体が付いていけていないから疲れている錯覚をしているだけじゃないのかな?」


「えっ!?」


 ……そうなのか?


 しかし、詩音のやつ、中学生のクセになんか俺の心に響く様な事を言って……


 ほんと、可愛い妹だぜ。


「それよりもお兄ちゃん、今日は一杯お話する事があるのよ。だから早く夕飯食べてちょうだい。それで直ぐに私の部屋に来てちょうだいね?」


「えーっ!? お、俺めちゃくちゃ疲れているから夕飯食べずに風呂だけ入って早く寝ようと思っていたのに……」


「ダメ~!! 絶対に私の部屋に来てちょうだい!! 可愛い妹の言う事、聞けるよね?」


「ウグッ……」


 詩音のやつ、ますます『小悪魔』みたいになってきたな?


「わ、分かったよ……とりあえず、風呂に入いらせてくれ? で、その後に必ず部屋に行くからさぁ……」


「うん、分かったわ~」


 はぁ……マジで今日は長い一日になりそうだな。




 【詩音の部屋】



「で、話しってなんだ? 出来れば短めにお願いしたいんだけどなぁ……」


「ウフフフ……」


 な、何だ? 今の怪しい微笑みは?


「実はねぇ、今日は凄い日だったんだよ」


「凄い日? どういう事だ?」


「今日ね、うちに織田先輩が私と遊ぶ為に来てくれたんだよぉ」


「えーっ!? ま、マジか!?」


「うん、マジだよぉ。でも驚くのはまだ早いよ」


 乃恵瑠さんが俺に会いに来たんじゃなくて、詩音と遊ぶ為に家に来たっていうのか?


 そ、それはそれで嬉しい事なんだろうけど果たして素直に喜んでいいのだろうか?


 それに乃恵瑠さんが家に来ただけでも十分に驚いたし、俺の疲労度が更にアップした感じだ。


「それなのに、まだ他に驚く事があるっていうのか?」


「うん、織田先輩と同じくらいにね、なんと、静香お姉さまもうちに遊びに来たんだよぉ!!」


「え、えーっ!? 静香さんも来たのか!? 一体、何しに来たんだよ!?」


「静香お姉さまは、お兄ちゃんに会えると思って来たみたいだけど、お兄ちゃんはバイトで不在だったから残念そうに帰るところだったの。それを私が引き留めて家にあがってもらったのよぉ」


 お前が引き留めたのかよ!?


「し、しかし大丈夫だったのか? 乃恵瑠さんと静香さんが同じ部屋に一緒になってしまって……」


「ふーん……やっぱりお兄ちゃんは二人があまり仲が良くないって事は知っていたのね?」


「え? ああ、まぁ……そうだな……」


 詩音の前でもそうだったんだぁ……


「でもね、もう一人家に来てから状況が変わっていったんだぁ」


「何だって!? もう一人来たのか!? っていうか、俺の知っている人なのか?」


「フフ、当たり前じゃない。お兄ちゃんの大好きなアニメキャラに似ている人が来たんだよ」


「え、えーっ!!?? も、茂香さんも来たのかーっ!?」


 う、嘘だろ? 俺がいない日に三人も来るなんて……


 それに静香さんと茂香さんは、何で俺の家を知っているんだ?


「お兄ちゃんも毛利先輩は『魔法少女ソフィアちゃん』に似ていると思っていたんだね? ほんと、ソックリだよねぇ?」


「いや、マジで茂香さんはソフィアちゃんにソックリなんだよ!! ってか、あの人はソフィアちゃんのコスプレで『コスプレ大会』で優勝しているんだよ!!」


「えーっ、そうなんだぁあ!? すごーい!!」


「だろう? ってか、俺が自慢している場合じゃないんだよ。 三人も家に集まって大丈夫だったのか!? 三つ巴の喧嘩になったりしなかったのかい?」


 詩音の部屋で一体何が起こったんだ?


「うーん……最初は少し言い争いをしている感じだったけど……でも織田先輩がお二人に『ある提案』をしてから部屋の雰囲気が変わったというか……私がここにいて良いの? っていう感じになったというか……」


「乃恵瑠さんが二人に何の提案をしたんだい?」


「その前にお兄ちゃん、いつの間にか仙石学園では『竹中颯争奪戦』っていう『イベント』が起こっているみたいねぇ? ウフッ……」


「げっ!! し、詩音に知られてしまったのか!? って『イベント』って何だよ?」


 うわぁああ、『イベント』はともかく、詩音に知られてめちゃくちゃ恥ずかしいぞ……


「お兄ちゃん、良かったね……?」


「えっ?」


「少し複雑な気持ちにはなるけど、でもお兄ちゃんがあんな美少女達に好かれているだなんて……それも取り合いをするくらいに……妹として、とても鼻が高いわ」


「い、いや……そんな……俺がモテているのには何か理由があるはずなんだよ……俺みたいな陰キャオタクがモテるのはおかしいというか……」


「モテる理由はあるよ」


「へっ? そ、そうなのか!? 詩音、理由を教えてくれないか?」


「そんなの簡単じゃん。お兄ちゃんは誰にでも優しいし、それでいて実は強いし、勉強もできて……それに……」隠れイケメンだし……


「え? 最後、何を言ったか聞き取れなかったんだけど……」


「べ、別に……き、気にしなくていいから!! いずれにしてもお兄ちゃんがモテるのは当然の話なの!!」少し悔しいけど……


「ん? 最後の方……」


「だから、気にしなくていいって!!」


 何なんだ、詩音のやつ……でも詩音が言ってくれた理由だけで、本当にモテるのか?


 他に理由があると思うんだけどなぁ……


「お兄ちゃん!!」


 ギュッ


「えっ!? な、何だよ、詩音? きゅ、急にお兄ちゃんに抱きつくなよ!! 俺、風呂上がりだから暑苦しいじゃないか」


「暑苦しいは余計よ!! でも、お願いだから少しだけ抱きつかせてよぉ? 二学期の生徒会長選挙後に正式な彼女が出来るお兄ちゃんに、こうやって抱きつきにくくなっちゃうんだからさ。ね?」もう少しすれば私だけのお兄ちゃんじゃ無くなるんだから……


「そ、その件も知っているのかよぉ? で、また最後の方が聞き……」


 ギューッ


「うるさい、颯!! 大人しく私に抱き締められなさい!!」


「はぁぁあああ!? 颯って……」


 何なんだ? 今日の詩音は?


 そういうところも……


 乃恵瑠さん達に負けず劣らず、めちゃくちゃ可愛い詩音だけどな……






―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに(^_-)-☆

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