第131話 羽柴陽菜からの提案
俺達が今日のバイトが終わってそろそろ帰ろうとした矢先にそのラインは来た。
「伊緒奈、陽菜さんはどんな提案をしてきたんだ?」
「うーん……」
伊緒奈がこんなにも悩んでいる顔を見るのは初めてだな?
「あら、徳川さん、そんなシケた顔をしてどうしたのかしら?」
「伊達さん、シケた顔って何よ!? 伊緒奈さんに失礼でしょ!!」
「フッ、徳川さんは何も反論しないのに本多さんが反論するっておかしいんじゃない? それよりも颯君、明日も朝からバイトなんだし早く帰りましょう?」
「えっ? で、でもさ……」
俺は伊緒奈に届いた陽菜さんからのライン内容がやはり気になるしなぁ……
「夏合宿……」
「えっ? 今、夏合宿って言ったか?」
「うん……羽柴副会長が私の家で羽柴グループと私のグループ合同で夏合宿をやらないかって……」
「 「 「えーーーっ!!?? 合同で夏合宿ですってーーーっ!!??」 」 」
羽柴さんは何を考えているんだ!?
部活でもないのに夏合宿だなんて……それも敵対しているグループ同士でとは……
「伊緒奈さん、勿論、断りますよね!? 私達だけでやるならまだしも、何で敵である羽柴グループと一緒に夏合宿なんてやらなくちゃいけないんですか!?」
「太鳳ちゃんの言う通りだし、断りたいのはやまやまなんだけどねぇ……」
何か伊緒奈、悩んでいるな? まだラインの内容に続きがあるんじゃないのか?
「伊緒奈、どうしたんだ? 他にまだ何か書いているんじゃないのか?」
「うん、そうなの……でもこれは颯君には言えないわ……」
「伊緒奈ちゃん、もしかして何か脅迫でもされているの?」
「い、いえ……それもノーコメントよ。ゴメンね、知由ちゃん……」
「いいえ、別にいいわよ。誰だって一つや二つくらい言えない事ってあるんだから」
しかし、こんなにも伊緒奈を困らせる内容って……?
「それでは伊緒奈さん、羽柴副会長の提案をのまれるのですか?」
「うん、そうね……夏合宿自体はとても楽しそうだし……それに本当は私も合宿は考えていたの。うちなら部屋もたくさん空いているし、娯楽施設も充実しているしね……」
いや、だからそもそも部活でもないグループで何の為の合宿をするんだよ?
俺にはやる意味が全然分からないぞ。
運動とかするのか? いや、別に運動部じゃないしな……
「ちょっと待てよ、伊緒奈!! 合宿期間中、ここのバイトはどうするんだよ? 執事さん達もいないし、明日からはメイドさん達も長期休暇に入るんだろ?」
「そうだよ、伊緒奈ちゃん、直人の言う通りだよ。俺も一応、陽菜ちゃんのグループだから合宿組になっちまうぞぉ」
お、俺は一応、どちらのグループにも所属している訳じゃないからバイト組だよな?
まぁ、その方が気は楽だし……
「その辺は心配しなくてもいいわよ、前田君」
「え、どういうこと、伊達さん?」
「私と颯君はそのままいつも通りバイトだし、その期間だけ臨時バイトを雇えば良いじゃない」
「 「 「臨時バイト!?」 」 」
「ちょっと待って、伊達さん!! 臨時バイトは良いとして、何で颯さんがバイト組なのよ!? 颯さんは私達と同じ徳川グループなのよ!!」
太鳳、それは違うぞ。
「それは違うわ、本多さん!!」
あっ、魔冬が先に言いそうだな?
「何が違うっていうのよ!?」
「基本的に颯君はどのグループにも所属しちゃいけない立場のはずよ。逆に言えばどのグループ員でもあるとも言えるわね。まぁ、本多さんには全然、関係無い事かもしれないけれど、今は『竹中颯争奪戦』の最中なのよ。その対象者である颯君が一つのグループに所属するのは不公平じゃない? ねっ、徳川さん?」
「そ、そうね……それに関しては伊達さんの言う通りね……」
「えーっ!? それじゃぁ颯さんと一緒に合宿をエンジョイできないんですかぁ!? そ、そんなぁ……楽しさが半減するっていうか……っていうか伊達さん!! 『本多さんには全然関係無い事』って言い方止めてくれないかしら!?」
「フフフ……でも事実じゃない……?」
「ウグッ……」
太鳳は合宿で俺に何を求めているんだ?
俺と何をエンジョイするつもりなんだよ!?
俺何なんかと一緒に合宿をしたって全然、楽しくないと思うんだけどなぁ……
「太鳳ちゃーん、伊達さんと言い合いなんかしても太鳳ちゃんでは敵わないと思うから大人しく諦めた方がいいよぉ。いずれにしても颯さんは合宿中もこの家にいるんだし別に顔が見れない訳じゃないから良いじゃない? ですよねぇ、伊緒奈さん?」
「そ、そうね……八雲ちゃんの言う通りだね。それで伊達さん、その臨時バイトって簡単に言っていたけど、今の時期にアルバイト募集をしてもほとんどの学生は他のアルバイトをやっていると思うし、急に応募があるかしら?」
「それなら心配はないわ。私にあてがあるから……三人位いれば大丈夫よね?」
「ええ、そうね。それに合宿なんだから自分達で出来る事は自分達でやる方が合宿らしくて良いと思うし……」
「だよね? それで、合宿はいつからするの? 日程も羽柴副会長から指定があるのかしら? それにあちらの合宿メンバーは何人なのかしら?」
そうだよな。いつから始めるんだ?
俺も雑用係として大勢を相手に仕事をしないといけないし、まして陽菜さんの関係が来るんだし、心の準備も必要だもんな。
「来週の月曜日から金曜日までの四泊五日って書いてあるわ。そして向こうの人数は八名だそうよ。結構、長い日数だし参加人数も多いよね……伊達さん、大丈夫かしら?」
「フッ、徳川さんが私の事を心配してくれるなんて意外よね?」
「べ、別に心配なんてしていないけど……」
「大丈夫よ、颯君と二人三脚で頑張るから~ねっ、颯君?」ギュッ
「うわっ、だ、伊達さん、急に抱きつかないでくれよ!?」
「ウフッ、別にいいじゃない?」
「 「 「良く無いわよ!!」 」 」
何だ!? 太鳳と榊原さんと今日、全然声を出していない服部さんまで急に大きな声を出して……
いずれにしても陽菜さんが提案した『夏合宿』……
絶対に何か考えている……何か企んでいるに違いないよな?
それに、その提案を断れなかった伊緒奈の事も気になるし……
一体、ラインには何て書いていたんだろうなぁ……?
しかし俺の予想通り、今年の夏は色んな意味で暑く……
いや、熱くて濃い夏なりそうだよなぁ……
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お読みいただきありがとうございました。
なんと陽菜からの提案は徳川邸での合同夏合宿だった!!
しかし伊緒奈はそれを渋々受け入れる事に。
不安しかない颯だが……
果たしてどんな合同夏合宿が始まるのか?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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