第129話 兄を想う
【竹中詩音の部屋・詩音視点】
夏休みになり、今日は私が前からとても楽しみにしていた織田先輩が家に遊びに来る日。
それもお兄ちゃんに会うのではなく、私に会いに来てくれるらしい。
こんな幸せな事があっていいの?
まぁ、これも最近、何故か同性の私から見ても超絶美少女の人達がお兄ちゃんの周りに集まってくれているお陰なんだけど……
もしかしてこれって『陰キャ男子』を救う為のボランティアか何かかと思ってしまうくらいだった。
でも、前に一番最初に出会った静香お姉さまも直ぐ後に知り合った伊緒奈お姉さまの話を聞いていると付き合っているのかどうかは分からないけど、本当にお兄ちゃんに対して好意を持ってくれている事は分かった。
そして最近は、仙石学園の生徒会長でもある超絶美人の織田乃恵瑠先輩とほぼ毎日、一緒に通学するいう『運を全て使い果たして大丈夫なの?』とお兄ちゃんを心配してしまうほど……
ただ私は正直、今の状況が嬉しい。
小さい頃から私の憧れでヒーローだった大好きなお兄ちゃんが突然、陰キャの引きこもりになってしまい、とても辛い日々が続いたけど、高校生になって直ぐ、お兄ちゃんに良い変化が現れたから……
見た目は相変わらず陰キャメガネだけど、なんて言うかなぁ……なんか死んだ人が生き返ったみたいな感覚だ。
「詩音ちゃん、どうしたの? さっきからニヤニヤしているけど……」
「え? ああ、織田先輩……いや、何といいますか、私、とても幸せだなぁと思って……」
「フフフ……私も幸せよ。こうして颯君の妹さんとも仲良くさせてもらって……私、一人っ子だから、なんだか可愛い妹ができたみたいで嬉しいわ」
織田先輩って一人っ子なんだ。
「そ、そんな可愛いだなんて……でも、有難うございます。私もとても美人のお姉ちゃんができたみたいですよ。そ、それも二人も!!」
「ハハハ……私も妹ができたみたいで嬉しいわ。私、四人兄弟で女は私だけだしね」
「そうなんですか、静香お姉さま!?」
だから静香お姉さまは少し、男っぽいところがあるのね?
でも、そこがとてもカッコイイんだけど……
「あら、武田さんは男兄弟ばかりなんですね? だから男みたいな性格だし、ガサツなところもあるんですねぇ?」
「お、織田さん!! 男みたいな性格って何よ!? それに私がガサツって失礼な言い方ね!?」
うわっ、また喧嘩が始まっちゃった。
さっきから二人は言い合いばかりしているわね?
「まぁまぁ、お二人共、喧嘩はしないでくださいね? せっかく今日は三人仲良く遊んでいるんですから……」
「ご、ゴメンね詩音ちゃん……さっきから織田さんが私に対して失礼な事ばかり言ってくるからついカッとなってしまって……」
「ええ? 私そんなに失礼な事言いましたかぁ?」
「あ、アナタね!! はっ!? もしかして織田さん、私を怒らせて詩音ちゃんの前で恥をかかせようとしてるんじゃないでしょうね!?」
「ハハハ……そんなバカなぁ……私はただ思った事を口に出しているだけですよぉ……」
「思っていても口に出す必要は無いでしょ!?」
「まぁまぁ、お二人共……言い合いはそれくらいにしてお母さんが作ってくれたお菓子を食べませんか? お母さんの手作りクッキーとても美味しいんですよ」
「 「え? そ、そうね。いただきましょう」 」
ふぅ……やっと落ち着いたなぁ……
お兄ちゃんも学校で毎日、今の様な言い争いに巻き込まれているのかな?
もし、そうだったら今のお兄ちゃんの性格ではキツイかもしれないなぁ……
ピンポーン
ん? 誰か来たみたい。
「はーい、どちら様かしら~?」
お母さんが出てくれたみたいね。
コンコン……
「はーい?」
ガチャッ……
「詩音ちゃん……?」
「どうしたの、お母さん?」
「あ、お母様、クッキーとっても美味しいです!!」
「ウフ、ありがとね、乃恵瑠ちゃん」
「わ、私もこんなに美味しいクッキー食べた事ないです!! それに突然、来た私にまでこんなにもおもてなしをしてくださり有難うございます!!」
「フフフ……おもてなしっていう程の事じゃ無いわよぉ。でも武田さんもありがとね? 美味しいって言ってもらえておばさん、とっても嬉しいわ。これから武田さんの事も下の名前で静香ちゃんって呼んじゃってもいいかしら?」
「はい!! 是非、静香って呼んでください!!」
「それでお母さん、何か用事があったんじゃない? それに今、誰か来たよね?」
「ああ、そうだったわ!! 二人がクッキーを美味しいって言ってくれたからお母さん、嬉し過ぎて舞い上がっちゃていたわ。そうそう、お客さんが来たのよ」
「で、誰が来たの?」
「それがね、颯と同じ学校だというお嬢さんが来てくれたんだけど……それがどう見ても小学生高学年にしか見えないとても可愛らしいお嬢さんでねぇ……」
見た目が小学生高学年ってこと?
「 「しょ、小学生高学年!!??」 」
「あら、二人も知っているようね?」
「 「いえ、全然知りません!!」 」
え? 今日、初めて二人の息が合った感じがしたわ。
「あれぇ。おかしいわねぇ……そのお嬢さんに二人の名前を言ったら知ってるって言っていたんだけど……」
「 「えっ!? 私達の名前をおっしゃったんですか!?」 」
「え? 言ったらダメだったのかしら……?」
「 「い、いえ……別にそんな事はないんですけど……」 」
「それなら家にあがってもらっても構わないわねぇ? 私もあんな可愛らしいお嬢さんとお話してみたいし……それにそのお嬢さん、どこかで見た事があるお顔をしているのよねぇ……誰だったかしら……」
どこかで見た事がある顔で、見た目は小学生高学年……
そしてお兄ちゃんと同じ高校で織田先輩達が何かソワソワし始めて……
めちゃくちゃ興味があるんですけど!!
「あっ、分かった!! 颯の部屋に貼ってあるアニメのポスターのキャラクターに似ているんだわ!!」
お兄ちゃんの部屋のアニメポスターといえば……
「魔法少女ソフィアのポスターしか貼っていないと思うんだけど……」
「そうよ、詩音!! その魔法少女なんちゃらにそっくりなお嬢さんなのよ!!」
―――――――――――――――――――
「はーい、皆さんこんにちは~そして颯君の妹さん、初めまして~私は仙石学園三年の毛利茂香と言います。どうぞよろしくね~」
キャーッ!!
ほ、ほんとに見た目は小学生高学年だけど、まさにお兄ちゃんが大好きなアニメキャラの魔法少女ソフィアちゃんに瓜二つだわーっ♡
「初めまして、私は妹の竹中詩音といいます!!」
「詩音ちゃんか~とっても可愛らしいお名前ね~」
「 「はぁ……」 」
え? 織田先輩と静香お姉さまがが大きくため息をついたような……
【徳川邸】
ブルッ
えっ!?
今、背筋に冷たいものが走った感じがしたぞ!!
な、何だ、今の感覚は……?
「どうしたの、颯君? 少し顔色が悪いわよ」
「い、いや別に大丈夫だよ魔冬……多分だけど……」
―――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
夏休みの颯達
徳川邸には颯、伊緒奈、魔冬&徳川グループの面々
竹中邸には詩音、乃恵瑠、静香、そして茂香が参入
それぞれの場所で夏らしい熱い戦いが始まるのか!?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます