第123話 羽柴陽菜の誤算

 はぁ……何で安藤達の前であの二人は俺に告白した事を言ったんだ!?


 話がややこしくなったらどうするんだ?


 ってか、あの二人は茂香さんや静香さん、それに陽菜さんにも俺に告白した事を言ったんだろうか……?


「颯君、どうしたの? なんか元気が無いけど……」


「伊緒奈……じ、実はさ、今朝、校門の前で長曾我部さんと島津さんが安藤達の前で俺に告白した事を言ったんだよ……」


「え、そうなの? ふーん……それは少し困った事になったわね。まぁ、安藤君達に知られた事が問題というよりも……その事を毛利さんや武田さん、それに羽柴副会長が知ったとなれば、また新たな争いが始まる予感がするわ……」


「そうだよな? 俺もそう思うよ。あの三人が大人しくしているとは思えないよな?」



「おはよう、颯に伊緒奈ちゃん……はぁ……」


 ん? ため息何かついて俊哉も元気が無いみたいだぞ。


「どうしたんだ、俊哉? ため息なんかついて」


「そうね、前田君らしくないわね」


「ああ、そうなんだよ。さすがに俺も疲れたよぉ……昨日の人気投票結果後にさ、陽菜ちゃん達と反省会を行ったんだけどさぁ……そこに何故か長曾我部さんと島津さんもいたんだよ……で、その二人が陽菜さんの指示で武田さんと毛利さんに近づいていたって事を知っただけでも驚いたのにさ……」




 【俊哉視点での回想】


「えっ!? ふ、二人は陽菜ちゃんの指示で毛利さんや武田さんに近づいていたのかい!?」


「ああ、そうだっつーの。でも、あーし達は負けたけどねぇ」


「まぁ、私達が勝てば徳川さんと伊達さんが脱落するし、負ければ毛利さんや武田さんが脱落する事になるから私達の勝ち負けは別に大した問題では無いと思いますけど……」


 凄いな、陽菜ちゃんは!!


 まさか、一年で人気のある長曾我部さんや島津さんまでも従えていたのか!?


「二人共、協力してくれてありがとうね? 票数としてはとても惜しかったわねぇ? でも二人はよく頑張ってくれたと思うわぁ……」


「あざーす!!」「有難うございます」


「でも姉さん、これで毛利先輩や武田先輩が諦めるとは思えないけど……もし二人が『生徒会長選挙』で姉さんを応援したいって申し出があればどうするんだい?」


「うん、喜んで受け入れるわよぉ。だってあの二人が形だけでも応援してくれれば三年生の票数も増えるしねぇ……それに千夏ちゃんや佳乃ちゃんに入った一年生の票もこちらに入る可能性があるから『生徒会長選挙』で有利に戦えるわぁ」


 そういえば、そうだったよな?


 『学年人気投票』で負けても次の『生徒会長立候補者』の応援次第で颯と付き合える可能性が出てくるんだったな……


「でも、あの二人が陽菜の応援をするのかしら? 織田会長や直江さん、もしくは一年の子の応援をする可能性もあるんじゃないの?」


 宇喜多さんの言う通りだ。

 陽菜ちゃんの応援をする保証なんて無いよな。


「そうそう、緋色の言う通りだわ。逆に二人が織田さん達の応援に周れば陽菜の方が不利になるんじゃないの? 特に織田会長側に付けば凄い戦力になるわ」


「フフフ……緋色もマーサも心配しなくても大丈夫よ。もし、二人が私に付かなくても彼女達を応援していた一部の人達は私の応援をしてくれると思うわ。だから美月ちゃんがここにいるのだから……」


 そ、そうだった。


 『中等部生徒会副会長』の石田美月……


 彼女がずっと根回しをしているんだよな?


 だから別に毛利さんや武田さん個人が陽菜ちゃんを応援しなくても二人を応援していた人の中で『中等部』に弟や妹がいる人は石田さんの作戦に乗せられて陽菜ちゃんに投票する可能性があるんだった……


「羽柴先輩のおっしゃる通りです!! 私がしっかり根回しをしていますので絶対に大丈夫です!! ただですねぇ……一つだけ気になる事がありましてぇ……」


 ん? 気になる事?


「あら、美月ちゃん、気になる事って何かしらぁ?」


「はい……実は長曾我部先輩と島津先輩に関して妙な噂を聞いたのですが……」


「 「えっ!? 私達の妙な噂!?」 」


 ま、まさか!?


「へぇ、それはとても興味があるわね。で、どんな噂なのかしら?」


「はい……『学年人気投票』前にお二人が竹中先輩に告白したという噂が流れています。さすがに信じがたい噂ですけど……実際のところはどうなのでしょうか?」(ニヤッ)


 やはりそうか……俺は颯から聞いて知っていたけど、もしかしたら、その告白場面を誰かが見ていたんだろうな? じゃないと、そんな噂が立つはずがないし……


 ん? 今、石田さんが最後に少しニヤリとした気がしたんだけど……


「へぇ、それは面白い噂だねぇ……それで二人はどうなの? 本当に噂通り、颯君に告白したのかしらぁ? まぁ、そんな事は無いとは思うけどぉ……」


「 「・・・・・・」 」


 どうするんだ、二人共!?


 正直に言うのか!?


「ハッハッハッハ!! バレたら仕方がないっつーの!! なっ、よしのん?」


「フッ……そうですね……もう隠す必要はありませんよねぇ……?」


「あ、アンタ達!! 噂は本当だったの!? ずっと陽菜を裏切っていたっていうの!?」


「宇喜多先輩、落ち着けっつーの。あーし達は別に羽柴先輩を裏切ってなんかいないっつーの。ちゃんと指示通りにあーしは毛利先輩に近づいたし、よしのんだって武田先輩に近づいたっつーの!!」


「そうです。私達はちゃんと羽柴先輩の指示通りに動きましたし……でも……私達が誰を好きになろうが竹中君に告白しようが文句を言われる筋合いはありません!! 恋愛は自由じゃないですか? それに……」


「羽柴先輩よりもあーし達の方が前から竹中颯の事が好きだったっつーの!!」


 マ、マジかっ!?


「あなた達の気持ちは分かったわ。そうだね、恋愛は自由だわ……それで、あなた達はこれからどうするの? 『生徒会長選挙』でも引き続き私を応援してくれるのかしら? 私が勝てばあなた達も生き残って颯君と付き合えるチャンスがあるわよ。それともアレかなぁ? 私を完全に脱落させる為に他の候補者を応援するっていう方法もあるわねぇ……」


「そ、それはこれから考えるっつーの!!」

「しばらく考えさせてください……」



―――――――――――――――――――


「って事があったんだ。ほんとマジで疲れたよ……」


 な、なるほどな。


 だから陽菜さんに気持ちを隠す必要が無くなった二人は堂々と俺に近づいてきたんだな?


「恋愛は自由かぁ……まぁ、二人の言う通りだわ……」


「えっ? 伊緒奈、何か言った?」


「いえ、何でも無いわよ……まぁ、それよりも明日が終業式で明後日から待ちに待った、夏休みだね?」


 夏休みかぁ……まぁ、ほとんどがバイトだけど、きっとそれだけで終わらない気がするのは俺だけだろうか……?





―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


この作品を面白いと思ってくださった方は是非とも☆評価していただけると有難いです。何卒宜しくお願い致しますm(__)m

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