第122話 ハーレム状態!?

 【学年人気投票日の夜、徳川邸】


「うん、そうよ。私も颯君に投票したわよ」


「やっぱりそうかぁ……でも俺に三十票も入るとは思わなかったよ……」


「フフフ……そんな事は無いわよ。私はもっと颯君に票が入ると思っていたわ」


「え!?」


 何を根拠にそんな事が言えるんだろう?


「本人が気付いていないだけで、颯さんって人気があるんですよ!!」


「そ、それは無いだろう、太鳳? 俺は見た目も中身も『陰キャ』なのにさ……」


「颯さんは優しいですし、見た目と違って力もあるし、素顔だってイケメンだと私は思います!!」


「あら? もしかして太鳳ちゃん……コッソリ颯君に一票入れたんじゃない?」


「えっ!? そ、そんな伊緒奈さんを裏切る様な事はしませんよぉ!! ちゃんと伊緒奈さんに一票入れましたから!! し、信じてください!?」


「フフフ……冗談よ、太鳳ちゃん……でも私以外に投票できるとしたら颯君に入れていたんじゃない?」


「えっ? そ、それは……そのぉぉ……」(ポッ)



「颯君? おしゃべりしている場合じゃないわよ。ちゃんとお仕事しないと春日メイド長に𠮟られるわよ?」


「え!? ああ、そうだね、魔冬……俺、バイト中だって事をすっかり忘れていたよ」


「べ、別に少しくらいお話しても構わないですよね、伊緒奈さん?」


「え? う、うん……そうね……」


「ほら、伊達さん!! 雇い主の伊緒奈さんが良いっておっしゃっているんだから颯さんの事は私達に任せて、あなただけお仕事すればいいじゃない!?」


「何を言っているのかしら、本多さん? あなた労働を舐めているの? それに雇い主が使用人をえこひいきしちゃったら徳川さんの株が下がるだけよ……」


「ウグッ……」


 まぁ、魔冬の言う通りだな。『人気投票』の話はこれくらいにして俺もしっかり給料分、働かないとな。


「あ、そういえば徳川さん? 今回の『人気投票』は一票差で私が負けちゃったけど本番は『生徒会長選挙』だって事を忘れないでね?」


「フッ、さすがに忘れないわ。次も良い勝負ができる事を楽しみにしているわ」


「ふーん、余裕だねぇ? まぁ、いいわ。私も楽しみにしているし……それじゃぁ、お仕事に戻るわね? 颯君、早く行きましょう?」


「あ、ああ……そうだな……」


 伊緒奈と魔冬はマジで犬猿の仲だな?


 俺としては皆、仲良くしてもらいたいけど、今はそうはいかないよなぁ……




 【次の日の朝】


「乃恵瑠さん、昨日の人気投票は凄かったですね? さすが現生徒会長って感じの結果でしたよね?」


「フフフ……ありがとう、颯君。お世辞でも嬉しいわぁ……」


「いえ、お世辞なんかじゃ……」


「でも今回は初めて陽菜ちゃんと同じ得票数だったからギリギリの一位だよ?」


「それでも今回、乃恵瑠さんは人気投票に対して陽菜さんみたいに何か策を講じたわけでも無いのに一位なんですから、やっぱ凄いですよ」


「颯君に褒めてもらえるのは嬉しいなぁ……それじゃぁさ、一位になったご褒美に今日は腕を組んで通学してもいいかな?」


「えっ!? 腕を組むんですか!?」


「うん、それくらい良いでしょ? ねっ、颯君?」


「で、でも……人目が……」


「フフ、人目なんて今更じゃない? もう私達が学園公認の『通学カップル』なんだから」


 つ、通学カップルって、そんな言葉ありましたっけ?


 ギュっ!!


「あっ!?」乃恵瑠さんの胸が俺の身体に……


「フフフ……学校の校門まで腕離さないからね?」


 うっ、か……可愛い……っていうか、俺みたいな『陰キャ』がこんな美人と腕を組んで学校に行っていいのか!? なんか俺、バチが当たるんじゃないだろうな!?




「 「 「おっす、竹中!!」 」 」


「え? お、おぉぉ、おはよう……」


「ん? 彼等は……」


「ああ、俺のクラスメイトの安藤、氏家うじいえ不破ふわといいます」


「 「 「おっ、おはようございます、織田会長!! 」 」 」


「ウフ、おはよ。とても元気なお友達ねぇ? それじゃぁ私は先に下足箱に行くわね? また時間があればいつでも生徒会室に来てね、颯君?」


「は、はい……また時間があれば……」



「お、おい竹中!?」


「な、何だよ、安藤? っていうか、お前達が言いたい事は分かっているから今は言わないでくれないか?」


 どうせ、羨ましいやら、何でお前だけが良い思いをするんだとか言うんだろ!?


「えっ? さすが竹中だなって言おうと思っていたんだけど、分かっていたのか?」


「へっ? そんな事を言うつもりだったのか?」


「ああ、そうだよ。もしかして俺達が羨ましがるとでも思っていたのか?」


 は、はい……そうです……


「い、いや……まぁ……」


 まさか、こいつ等が俺の事を褒めるなんて思っていなかったぞ。


「俺達はお前に嫉妬するなんて、とっくの昔に終わったんだよ。今は学園の人気美少女達にモテモテのお前の事を尊敬しているくらいだからな!!」


「そ、尊敬って……大袈裟過ぎるだろ、安藤?」


「大袈裟じゃねぇよ。だから徳川さんには申し訳ないけど、俺達は竹中に投票したのさ。おそらく他のクラスの男子数名も竹中に投票していると思うぜ」


 三十票のうちの三名はお前達かよ!?


「竹中……安藤の言う通りだぞ。俺達、最初はお前だけが何でモテるのか全然、納得していなかったけど、もうここまで来ると『諦めの境地』だよ……はぁ、俺も竹中みたいに彼女欲しいなぁ……」


「いや待て、氏家!! 俺だって彼女はいないんだぞ」


「いる様なもんじゃないか!? 徳川さん筆頭に織田会長、羽柴副会長、伊達さん、三年の毛利さん、武田さん、そして上杉さん……七人だぞ、七人!! これはまさしく世の中の男の憧れ『ハーレム状態』じゃないか!?」


「ふ、不破まで何だよ!? ハーレムって言ううなよ!? それに声もデカいよ。誰かに聞かれたらめちゃくちゃ恥ずかしいだろ!?」



「七人じゃねぇっつーの!!」


 えっ!?


「そうですね。七人ではなく九人ですね」


 えっ、えっ!?


「長曾我部さんに島津さん!?」


 ギュッ ギュッ


「えーっ!? ふ、二人共、こんなところで俺に抱き着かないでくれよ!?」


「 「 「えーーーっ!!??」 」 」


「こ、これは……一体……? 何で二組の長曾我部さんと三組の島津さんが竹中に……?」


「フン、そんな事、分かりきっているっつーの!! あーしとよしのんも竹中君の事が大好きで少し前に告白してるからだっつーの!!」


「竹中君のお友達の皆さん、千夏ちゃんの言う通りです……」


「 「 「えーっ!! マ、マジかーっ!!??」 」 」


 はぁ……俺の思い描いていた日常が更に遠ざかってしまいそうだ……




―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


『学年人気投票』が終わっても颯の周りは賑やかです。

そして遂に長曾我部と島津が動き出す!?


どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

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