第111話 壁ボッコーン!?

「し、島津さん……!?」


「なっ、何しに来たんだっつーの、よしのん!?」


 ほ、ほんとだよ。こんなややこしい時に一体……


「私も以前から竹中君には伝えたいことがあったんです。でもなかなか二人きりになれるチャンスがありませんでしたので……」


 島津さんが俺に伝えたい事だって?

 一体、何を伝えたいんだろう? それも以前からって……


「そうしたら昨日、千夏ちゃんが竹中君に用事があるから体育館裏に来る様に言われていて……何か嫌な予感がしたといいますか……それを止めに来たといいますか……まぁ、その嫌な予感は的中しましたけど……」


 嫌な予感? それを止めに来ただって!?


「フーン、よしのんは、あーしがダーリンに告白するかもしれないと思っていたんだなっつーの!?」


「はい、そう思っていました」


「でも、よしのんがあーしの気持ちを止める権利は無いっつーの!! 今、大事なところだから教室に戻れっつーの!!」


「それはお断りします!!」


 おっ、島津さんが強い口調で断ったぞ!!


「な、なんで断るんだっつーの!? よしのんには関係ないっつーの!!」


「関係は大いにありますよ……」


 だ、だよな……?


 だって長曾我部さんが俺に告白するって事は仲間だと思い込んでいる茂香さんを裏切るというよりも黒幕の陽菜さんまで裏切る事になるんだからな。


 それが陽菜さんに知られてしまったら大変な事になるだろうし、同じく陽菜さんの指示で静香さんに近づいている島津さんとすれば阻止するのが普通だろうな。


「あんたの言いたい事は分かってるっつーの。あーしも陽菜ちゃんには悪いとは思ってるしぃ……でも、我慢できなくなったんだっつーの!! だから……あーしとあんたとの仲なんだしぃ、お願いだから見逃してくれっつーの!!」


「お断りします!!」


 おーっ!? またしても強い口調で島津さんが断ったぞ。


「な、何で断るしぃ!?」


「千夏ちゃん……そんな事よりも早く竹中君から離れてください!! じゃないと私から引き離しますよ?」


「嫌だっつーの!!」


「離れてください?」


「べーだっつーの!!」


「離れろ……」


 えっ? 今、口調が……


「離れろって言っているだろがーっ!?」


 ブワーンッ


「うわっ!?」


 ボッコーーーンッ!!


 シュー……


「うげっ!? か、壁に穴が!? そして穴から煙が……!?」


 な、何だ、この島津さんの豹変ぶりは!?


 ってか、壁に穴をあけるなんて凄いパワー過ぎるだろ!?


「ふぅ……危なかったったしぃ、久しぶりによしのんに殴れられるところだったっつーの」



「た、竹中君……驚かせて申し訳ありません……私も感情をコントロールできませんでした……」


「い、いや……俺は大丈夫だけど……島津さんの拳は大丈夫なのかい? 壁に穴があくくらいの力だから拳を怪我したんじゃないのかい?」


「やはり竹中さんはお優しいですねぇ? 私なんかの拳を気にして下さるんですから……でも私は大丈夫ですよ。実は私は小さい頃から空手を習っていまして拳の強さには自信があるんです」


 えーっ!? し、島津さんは空手をやっているのか!?


 どおりで姿勢が凄くカッコイイと思ったぞ。


「ダ、ダーリン……よしのんには気をつけろっつーの!! この子は日頃、丁寧な話し方をしているけどさぁ、キレたら今の様な感じで話し方も変わるしぃ、暴力的にもなるんだっつーの!!」


「そ、そうなのか!?」


「私は絶対に竹中君にはキレませんよ。だって当然じゃないですか? 『愛する人』にそんな事ができるはず無いじゃないですか……」


「 「えーーーっ!!」 」


 い、いや待て!!


 俺は今、聞き間違いをしたんだよな!?


 幼馴染の愛する人にそんな事できるはず無いっていう意味で良いんだよな!?


「よ、よしのん……もしかしてあんたも……」


「ええ、そうですよ。実は私も前から竹中君の事が好きでした。といいますか、日が経つにつれて好きな思いが大きくなったといいますか……私も我慢できなくなったんです」


「えーっ!? う、嘘でしょ!? し、島津さんまで俺の事を……」


 いや、マジでこれはシャレにならないぞ。


 長曾我部さんだけでもヤバいのに島津さんまでなんて……


 伊緒奈達に説明するのを想像しただけで胃が痛くなってきたぞ。


「何でよしのんがダーリンの事を好きになるんだっつーの!? あんたは中等部の頃だってダーリンと何一つ接点なんて無かったはずだっつーの!!」


 だ、だよな。長曾我部さんの言う通りだ。


 俺は島津さんとは隣のクラスで一緒に体育の授業等は受けていたらしいけど、一度も同じクラスになった事は無いし……


 でも中等部の頃の島津さんはボッチだった俺の事を気にかけてくれてはいたみたいだけど……ただそれはクラス委員長という立場で俺の事を心配してくれていただけだろ?



「私は別に竹中君の事が好きだと言う感覚は無かったんです。でも、前に出席した『仙石集会』で私は竹中君と同じ列に座っていたのですが……」


「えっ? 島津さんもあの集会に参加していたのかい?」


「はい、いましたよ。そして織田会長に言われてメガネを外した竹中君の素顔を近くで見せて頂きました……」


 へっ? また俺の素顔の話なのか?


「チッ、よしのんもダーリンの素顔を見ていたのかっつーの!?」


「ええ、しっかり見させていただきました。そして、その時に私は中等部の頃から竹中君の事を気にかけていたのは恋心からだと気付かせていただきました。その事に気付いてからの私は、もう大変でした。簡単に言えば千夏ちゃんと同じ状況に陥ったといいますか……」


「い、いや待ってくれ? 何で二人は俺の素顔を見た途端にそんな感情になってしまうんだい? 大した顔でもないのに……」


「ダーリンはイケメンだっつーの!!」「竹中君の素顔は素敵です!!」


「えっ!?」


 二人の美少女にそんな熱い眼差しで言われるとめちゃくちゃ恥ずかしいんですけども……


 しかし、さすがに鈍感な俺でも今回の事で一つ分かった事がある。


 そう、俺に告白してきた人達は全員、俺の素顔を見た事のある人達ばかりだ。


 後は何故、伊緒奈を除いた八人だけが……げっ!?


 俺は、はっ、はっ、八人もの美少女かに告白されたのか!?


 あ、あり得ない……絶対にこんなことはあり得ないっつーの!!




―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


島津佳乃も颯の事が好きだという事が判明した。

驚く颯だが長曾我部や島津の話を聞いているうちに、告白してきた女子達のある共通点に気付く。


果たしてその共通点は颯を好きになる事と関係があるのか?

どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る