第112話 激戦の予感
「……という事なんだ……」
俺は放課後、伊緒奈達に昼休みの出来事を恐る恐る、説明をした。
教室の隅には俺の報告を今か今かとクラスの男子達、『竹中颯だけが何故モテるの会』メンバー達が待ち構えている。
あいつ等、今日は大人しく帰ってくれよ。俺はこの後、バイトもあるんだからな。
「なるほどねぇ……さすがはモテモテ颯君ね」
「いや、モテモテっていうのは……」
「うーん、まさか、あの二人も『ターゲット』だっただなんて……想定外だわ……」
「ターゲット? 伊緒奈、それってどういう意味なんだ?」
「えっ? い、いえ……こちらの話だから気にしないで……でも、これで益々『学年人気投票』は色々な思惑が駆け巡り、激しい戦いになりそうねぇ……」
「伊緒奈ちゃん、今の状況を整理しようよ? 私、頭の中がごちゃごちゃしてきたわ」
「そうね、知由ちゃん。太鳳ちゃん達も理解に苦しむ様なお顔をしているしね」
「そ、そうなんです、伊緒奈さん!! 私、勉強以外はあまり深く考えれないといいますか……でも、なんとなくですが、とてもややこしい状況だという事は理解していますけど……」
「しかし、颯さん!! やっぱ、あなたは凄い人です!! さすが俺が唯一認めた男ですよ!!」
な、直人に認められてもあまり嬉しくないのは何故なんだろう。
「ところでさ、何で最近、颯さんの両隣りに八雲と華子が座っているのかしら?」
「別に……深い意味は無い……」
「そうよ、華ちゃんの言う通りよ。少し考え過ぎなんじゃない、太鳳ちゃん?」
「じゅあ、じゃぁさ、二人の内どちらか私と席を代わってよ!?」
「 「それは嫌!!」 」
「はぁぁあああ!?」
「こらこら、こんな時に仲間内で揉め事は止めようねぇ?」
「 「 「申し訳ありません……」 」 」
この後、俺はバイトがあったので、一旦『ちつてと会議』は解散した。
ただ、クラスの女子達に『徳川伊緒奈後援会』の作戦会議に出席する様に伊緒奈と太鳳はお願いされたので教室に残る事になったのだが、酒井さん、榊原さん、服部さん、直人もクラスは違うけど伊緒奈推しという事で『後援会メンバー』として招かれることとなる。
とりあえず俺は『竹中颯だけが何故モテるの会』メンバーにはバイトがあるから明日、話し合おうと言い残し、慌てて徳川邸へと向かった。
【数時間後の徳川邸会議室】
バイトもひと段落したところで伊緒奈達が帰宅したので、いつもの会議室にて改めて現在『学年人気投票』について各自が知っている情報を出し合い、そして酒井さんがホワイトボードに書きだしてくれた。
そしてまとめた結果はこんな感じだ。
まず、乃恵瑠さんは現生徒会長という事もあり二年生を中心に絶大な人気を誇っている。
伊緒奈の見込みでは恐らく二年生の『学年人気投票』では一位であろうという事だ。
ちなみに服部さん情報として、乃恵瑠さんは俺と一緒に通学できる事で他のライバル達に差をつけたと思っているらしいぞ。
まぁ、そんなに差は無いとは思うけど……
次に陽菜さんだが、外部入学の乃恵瑠さんと違って中等部の頃から有名な陽菜さんは学年関係無く人気があって人脈もある。
そのお陰で現在、後輩である長曾我部さんや島津さんをライバル達に近づけさせる様な工作をするなど人心掌握に長けている。
考えてみれば陽菜さんは目標を達成する為には手段を選ばない感じだよな?
もしかしたら敵に回すと一番、恐ろしい人かもしれないよなぁ……
それに加えて一年生の時に乃恵瑠さんを裏から支えて生徒会長にさせたという影の実力者として認識されており信頼も厚い。
ちなみに服部さん情報として学園の男子生徒の大半はあのアニメ声と小柄なのに巨乳というのがたまらないらしい。
き、気持ちは分かるけどな!!
これだけの情報を聞けばもしかしたら陽菜さんが乃恵瑠さんを超える可能性だってあるんじゃないのか?
次にケイトさんが推している直江カノンさんだが、織田、羽柴のツートップがあまりにもキャラが強すぎて苦戦しているみたいだ。
直江さんも二人に負けず劣らずの美人で勉強も凄くできるけど、あの二人に比べると少しインパクトが弱いかもしれないなぁ……
ちなみに服部さん情報によると小柄なのに怪力だという事がバレたのか、あえてバラしたのかはよく分からないが、一部の男子生徒達には『ギャップ萌え』になり少しずつだがファンは増えているらしい。
ちなみに三年生の『学年人気投票』は静香さん、ケイトさん、そして『投票部』を退部して投票される権利を得た茂香さんの三つ巴の戦いになっているみたいだ。
ただ、服部さん情報によると、この三名は『学年人気投票』など全然、興味が無く自分達が推している後輩に全ての力を注いでいるそうだ。
特に静香さんと茂香さんは頻繁に一年生の教室に足を運んでいるらしい。
俺は長曾我部さん、島津さんの『本音』を知ってしまったので心苦しい。
「あっ、でもそうか。陽菜さんもこの二人に裏切られている事になるんだよなぁ……」
「そうよ、颯君。だから戦況を読むのが難しくなってきたのよ。当初、この二人は『学年人気投票』で一位、二位を狙わずに武田さんと毛利さんを早々と脱落させる作戦だと思っていたのよ……」
「でも俺に告白してきたってことは……」
「そうね、長曾我部さんも島津さんも一位、二位を本気で狙っているってことね。そして『生徒会長候補』に名乗りを上げるつもりだわ」
「伊緒奈さん? もし、この二人が勝ってしまったら……」
「うん、太鳳ちゃん。この二人が勝てば武田さんと毛利さんは『応援者』として生き残り、逆に私と伊達さんが脱落することになるわね……それだけは避けなくちゃいけない」
「そっかぁ……二人が仮に勝ったとしても羽柴さんにはたまたま勝ってしまったと言い訳をすればいいし、その後『生徒会長選挙』が始まる前か選挙で勝った時に羽柴さんに自分の颯さんに対する気持ちを伝えればいいですもんねぇ……?」
そうなれば学園の中では常に良い顔でいたい陽菜さんとしては、きっと二人を怒らずに正々堂々と勝負するに違いないな。
ん? もしかして、あの二人……
そこまで計算しているんじゃないだろうな!?
―――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
千夏&佳乃の参戦により益々、結果が分からなくなった『学年人気投票』……
果たして『竹中颯争奪戦』に勝利するのはどの美少女なのか!?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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