第110話 壁ドン!?

 嫌な事は直ぐにやって来るよな!?


 今日は昼飯も喉が通らなかったぞ。


 はぁ……一体、長曾我部さんは俺に何の用事があるっていうんだ?


 とりあえず伊緒奈達には呼び出されている事は隠して来たけど、ただ、あの時、静香さん達は聞いていたからなぁ……


 もしかしたら何処かで隠れて見てるんじゃないのか?


 キョロキョロ


「何をキョロキョロしてるんだっつーの!?」


「うわっ、出た!!」


「何が出ただっつーの!? あーしはお化けじゃないっつーの!!」


「ご、ごめん……長曾我部さんだったのか……」


 しかし、見た目も話し方も超ギャルの長曾我部さんが何で島津さんと同率で期末テスト学年二位なんだ!? 人は見かけによらな過ぎるだろ!!


「ところで陰キャオタク? あんた、あーしに呼び出されている事を誰にも言ってないだろうね?」


「あ、ああ……誰にも言ってないよ……」


「そう、それならいいっつーの……そんじゃぁ……」


 グイグイ……


「えっ?」


 な、なんだ? 長曾我部さんが真剣な顔をしながらドンドン俺に迫って来る感じで体育館の壁に追い詰められてしまったぞ……


 な、なんかヤバくないか?


 は、早くこの場から逃げ出したい気持ちになってきた……


 ドンッ!!


「えーっ!?」


 俺の背後にある壁に長曾我部さんが右手と左足をドンッと押しつけてきたぞ!?


 こ、これは俗にいう『壁ドン』ってやつなのか!?


 で、でも普通、壁ドンは男がするものでは……?


 そ、それにしても長曾我部さん、顔が近いし、そんなに足を上げたらパ、パ、パンツが見えてしまいますよ……



「陰キャオタク……いや、た、た、竹中颯……」


「な、何? っていうか、この状況は何?」


「ようやく、この日が来たっつーの……」


 え、この日?


「この日ってどういう意味? っていうか長曾我部さん、顔が赤いけど大丈夫?」


「ウグッ、だ、大丈夫じゃねーっつーの!! いや、でも大丈夫だっつーの!!」


 どっちだよ!?


「あ、あーしはさ……中等部の頃のあんたなんて全然興味が無いというか思いっきり見下していたんだっつーの……」


「で、でしょうねぇ……」


「でも、二年の秋頃さぁ、あんた、あーしを助けてくれたんだっつーの。覚えているかっつーの?」


 えっ?


 いつ、俺が長曾我部さんを助けたんだ?


「いや、ゴメン……全然、覚えていなんだけど……」


「チッ、やっぱりかっつーの。ある日の放課後、あーしがサッカー部が練習している近くを歩いていたら急にあーしの顔面に向かってボールが飛んできてさ……でもあんたが、突然あーしの前に現れて顔面でボールを受けてしまったんだっつーの!! マジで覚えてないのかっつーの!?」


 あっ、そういえばそんな事もあったな……あの時の女子って長曾我部さんだったのか?


 今と髪の色が違うから分からなかったぞ。


 しかし、あの時の俺はボールをヘディングで返してやろうと思ったのに、目測を誤ってしまい顔面で受けてしまったからめちゃくちゃ恥ずかしかった事だけは覚えているぞ。


 それにメガネも吹っ飛んでしまって少しフレームが歪んだし……顔面も金銭的にも結構、痛かったよなぁ……


「お、思い出したよ。あの時の女子が長曾我部さんだったんだね?」


「そうだっつーの!! やっと思い出したのかっ!? っつーか、あの時はありがとなっつーの!!」


「い、いや別にお礼を言われるほどの事は……ってか、その時の頃の話と今のこの状況とはどう関係があるんだい!?」


「だ、だから……ここからが本題だっつーの!!」


 本題? うちの学園の美少女達は本題に入る前の前振りがやたらと長くないか?


「で、本題って……?」


「あんた、緊張でガチガチだったみたいだから気付いてなかっただろうけどさ、あーしもクラス委員長として『仙石集会』に出席していて、あんたと同じ横の列に座っていたんだっつーの!!」


「えっ、そうだったのかい?」


 それは驚きだけど、それと今の状況とどう関係があるんだよ!?


「あんた……あの時、織田会長にメガネを外す様に言われて外しただろっつーの」


「え? ああ、外したのは外したけど……それがどうかしたのかい?」


「あの時、あーしはあんたの素顔を初めて見たんだよ。その時は別に何も思わなかったけど、後からジワジワとあんたの顔が頭に出てくる様になったんだっつーの!! それにさっき言った、中等部の頃にあんたに助けられた事もはっきり思い出してしまったんだっつーの!!」


「へ、へぇ……そうなんだ……」


「家にいても風呂に入っていても、あんたの顔が頭に出て来るし、挙句の果てには夢にまであんたが出て来て、あーしを優しく抱きしめてきたんだっつーの!! これってアレだと思わないかっつーの!?」


 夢の中の俺って結構大胆なんだな? ってか、アレって……


 も、もしかして……またしてもマズい事が起こるのでは……


「決まっているっつーの!! あーしはあんたの事が好きになってしまったんだっつーの!! この約三ヶ月、ずっと自分の思いを押し殺していたんだっつーの!! でも無理!! もう我慢できないっつーの!! 本当は『学年人気投票』も『生徒会長選挙』もどうでもいいんだっつーの!! あ、あーしと……あーしと『お付き合いしていただけませんか?』っつーの!!」


「え、え―――――――――――――――――――っ!!??」


 ま、マジで再びマズい事になってしまったっつーの!!


 うわっ、焦り過ぎて長曾我部さんの口癖がうつってしまっじゃないか!!


「ダ、ダーリン? 今直ぐ返事を聞かせてくれっつーの!?」


「ダ、ダーリンって……い、いや……そのぉ……あのぉ……」


 何で俺はこういった大事な時にはっきりモノが言えないんだろうか?

 ほんと、自分に腹が立ってきたぞ。


「今、あーしがあんたにキスをしたら『竹中颯争奪戦』はあーしの勝利って事にするのはどうだっつーの!?」


「キ、キ、キスだって!? そ、それは非常にマズいというか、何というか……」


 こんな事を知ったら茂香さんや陽菜さんはどうするんだ?



「千夏ちゃん、竹中君から離れていただけませんか?」


 え? そ、その声は……?


「チッ、よしのん、ここへ何しに来たんだっつーの!?」


 し、島津佳乃さん……!?








―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


長宗我部千夏の呼び出しはまさかの告白!!

颯に執拗に迫る千夏だが、それを止めたのは幼馴染の島津佳乃であった。


さぁ、新たな波乱の幕開けか!?

どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆


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