第88話 立候補してもらうからね

「うあぁぁああ、ペンギン、めちゃくちゃ可愛いわね颯君!?」


「そ、そうですね!!」


 俺は昔からペンギンが好きだったからマジで興奮してきたぞ!!


 家で飼いたいよなぁ……


 そういえば小さい頃の詩音がペンギンみたいで可愛かったよなぁ……

 まぁ、今でも十分に可愛いけど。


「見て見て、颯君? あの皇帝ペンギン、さっきから全然動かないわよ。もしかして人形じゃないわよね?」


「ハハハハ、そんな訳ないじゃないですか」


 何これ? めちゃくちゃ楽しいんですけど……



 【太鳳&知由の偽物カップル組サイド】


「うう……颯さん、本気で楽しんでいる様な気がするのだけど……」


「そうね。瓶底メガネをしているから分かりにくいけど、口元だけ見てもアレは本気で楽しんでいるわね」


「どうしよう? 二人の邪魔をしようか?」


「えっ、何で楽しんでいる二人の邪魔をしなくちゃいけないのよ? ってか、どうやって邪魔をするのよ? それに今のところ上杉さんは颯君と手を繋いでいるだけでそれ以上のことはやっていないし……」



 ツッ……「こちらペンギン館担当の八雲です……ペンちゃん可愛いなぁ……癒されるよねぇ……どうぞ~」


「八雲!! 癒されている場合じゃないわよ!! 自分の任務を忘れないでよ!? どうぞ~っ!!」


 ツッ……「太鳳ちゃん、そんなに怒らないでよぉぉ……そんなにカリカリしていたらお肌に悪いわよ? 太鳳ちゃんもペンちゃんを見て癒された方が良いと思うよぉぉ……どうぞ~」


「はぁぁ……分かったわよ……怒鳴ってゴメンね……どうぞ~」



 【颯&ケイトサイド】


うう、ペンギン館から出たくない気持ちだぞ。


あっ、でもケイトさんを放ったからしにして俺だけが楽しんでいる場合じゃないしなぁ……でもケイトさんもペンギン達に癒されているみたいだし……


「颯君、そろそろ次の『海獣館』に行きましょうか? 『イルカショー』の開始時間も迫って来ているしね?」


「えっ? ああ、そうですね。名残惜しいですけど『海獣館』に行きましょう」


 ペンギン達よ、また会おう!!


 今度は詩音でも誘ってお前達に会いに来るからな!!


「あっ、そうだ。帰りにショップで同じペンギンのぬいぐるみを買わない? まぁ、今日の初デート記念という事で……ど、どうかな?」


 うわっ、なんて可愛らしい上目遣いを……


「そ、それは良いですね? か、買いましょう!!」


 っていうか、今日の本当の目的を忘れそうになっていたぞ。


 俺はケイトさんに『交際の条件』の説明をしなくちゃいけなかったんだ……


 『海獣館』で言うってのもなぁ……


 やはり『イルカショー』で言うのが一番良いかもしれないな。



 【海獣館】


「ふーん、白熊がいるわね?」


「そうですね。白熊ですね……」


「じゃぁ、そろそろ『イルカショー』に行こうか?」


「はい、行きましょう……」



「こ、こちら海獣館担当の直人だ!! なんかあの二人、アッサリ海獣館から出て行っちまったぞ!! どうぞ~っ!!」


「こちら伊緒奈です。あら、そうなの? フフフ……颯君達の好き嫌いって分かりやすいのね? じゃぁ仕方無いから直人君も太鳳ちゃん達と合流して『イルカショー』に行ってくれるかな? どうぞ~」


「わ、分かった!! ど、どうぞ~!!」




 【カノン&カイトサイド】


「しかし、姉貴達は『イルカショー』が始まっても、ずっと手を繋いだままだな!?」


「あら? カイト君、あなたお姉ちゃんにヤキモチを妬いているのかしら?」


「やっ、妬いてねぇよ!! 変なことを言うなよ、カノンちゃん!! でも何で姉貴はあんな陰キャ野郎なんかの事を……」


「まぁ、そんなことはどうでもいいわ。それよりもアレを見て?」


「え? あっ、アレは!?」


「そうね。あそこに並んで座っている子達って、前に竹中君とライン交換した時にどこからともなく現れて交通整理をしていた子達よね?」


「そ、そうだな。それにあの中の一人は俺と同じクラスの服部華子だ!! それに男の奴も知っているぞ。あいつは三組の井伊直人って奴だ。うちの学園は男子が少ないから名前を覚えやすいんだよ」


「なるほどねぇ……『あの二人』のデートを心配しているのは私達だけではないってことね。しかし何なんだろうなぁ……? 何であんな地味な子に大勢の人達が関わっているんだろう? もっとあの竹中君って子の事を調べる必要があるかもしれないわね……」



 【颯&ケイトサイド】


「ケ、ケイトさん……すみません……せっかくのイルカショーなのに、こんな話をしてしまいまして……」


 はぁ……やっとケイトさんに『交際条件』の話をする事ができたけど……


 ケイトさんの表情がさっきまでとは百八十度変わってしまったから、きっと俺に対して悪い印象を持ったに違いないよなぁ……


「颯君が今言った事は分かったわ……それにその条件は静香も織田会長も納得しているのよね?」


「は、はい……納得はしてくれました……」


「そっかぁ……ああ、私が二年生だったらなぁ、私が直接、生徒会長に立候補するのになぁ!! 誰かの応援をしなくちゃいけないのよねぇ……」


 えっ!?


「ってことは……?」


「うん、私もその条件を飲ませてもらうわ……ん? あっ!? やっぱり私達の事を付けて来ていたのね?」


 え? い、伊緒奈達の事がバレたのか!?


 アレ? ケイトさんが急にいなくなったぞ!!

 ど、どこに行った……あっ!?


 あそこに座っているのは上杉弟と直江カノンさん?


 あの二人もケイトさんの事が心配でバレない様に付いて来ていたのか?


 そ、そんな事よりも、ケイトさんが凄い勢いであの二人に近づいて行っているぞ!?


 も、もしかしたら付いて来た事に対して怒るのでは……


 と、止めなければ……


「ケ、ケイトさん!!」



「カノンちゃん!!」


「うわっ!? ケ、ケイト先輩!?」


「カノンちゃん、あなたには次の『生徒会長選挙』に立候補してもらうからよろしくね!?」


 えっ?


「 「え――――――――っ!!??」 」




―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


上杉ケイトとのデートは波乱の終了です!!

そして次は伊達魔冬とのデートが待っている。


どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

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