第89話 完璧美少女

 ああ、さっきは驚いたなぁ……


 まさか、ケイトさんが直江カンナさんに生徒会長に立候補しろって言うなんてな。


 でも、そうか……ケイトさんも言っていたけど、本人が立候補できないからなぁ……


 ただ、直江さんが立候補するっていう保証は無いし、もし立候補しなかったらケイトさんは誰を応援するんだろうか?


 あっ、もしかしたら弟のカイトっていう線は……


 というか、俺みたいな奴が何を調子に乗って彼女達の分析をしているんだって感じだよな。本当は俺が全員を断ればこんな事にはならずに済んだんだからなぁ……


 ほんと、マジで自分の性格が嫌になってしまうよ。



「颯君? 何、難しい顔をしているのかな?」


「えっ? ああ、伊達……いや、魔冬……さん……?」


「もう、さん付けはしないでよ? ちゃんと魔冬って呼んでちょうだい」


「ご、ゴメン……ま、魔冬……」


「フフフ……それで良し♡」



 ってことで俺は上杉ケイトさんとのデートも無事に?終わり、今から伊達さんとデートをするのだが……


「しかし意外だよ……魔冬からデートは『ボーリング』がいいって言ってきたのは」


「え、そうかなぁ? 別にデートに『ボーリング』って普通だと思うのだけど……」


「いや、そうじゃなくてさ……魔冬にボーリングっていうイメージが沸かなくて」


「ハハハ、そうかなぁ? でも私は両親の影響で小さい頃からボーリングをやっているのよ」


「へぇ、そうなんだぁ……ってか、もしかしてその大きなカバンに入っているモノって……」


「おっ、さすが颯君、分かっちゃった? そうよ。マイボールよ。勿論、マイシューズも持って来ているわ」


「す、凄いなぁ……本格的だね?」


 で、でも……


「ま、魔冬の今日の服装……特にその……ミニスカートだけど大丈夫なのかい?」


「えっ? ああ、これね? フフフ……実はミニスカートに見えるけど実は『騙しスカート』なのよ」


「へ? だ、騙しスカート?」


「そうよ。見た目はミニスカートだけど、中はショートパンツになっているの。だから颯君が心配していることは起こらないから大丈夫よ」


「そ、そうなんだ……それじゃぁ、安心だね?」


 へぇ、騙しスカートっていうのがあるのか? 


 もしかして今俺達の前を歩いている女性達の中にも同じものを着ている人がいるのかもしれないな。


「あ、もしかして颯君、ミニスカートじゃなくてガッカリだったかな? フフフ……颯君もやっぱり男の子ね?」


「い、いや……そ、そんな事は無いよ。俺がガッカリなんてする訳無いじゃないか?」


「えーっ、そうなのぉ? 私としては、少しはガッカリして欲しかったけどなぁ……」


「えっ?」


「フフ、冗談よ……」


 ほ、本当は少しだけ、いやマジで少しだけガッカリなんだけどな。


 でも、アレだよ。


 魔冬みたいな美少女がミニスカートでボーリングなんてやった日にゃぁ、他の男性客が俺達のレーンに注目するに違いないから、それはそれで面倒だしな……


 他の奴等には絶対にアレを見せたくないからな!!


「は、颯君……ありがとう……でも安心して? 私のアレを見ていいのは颯君だけだからね……」(ポッ)


「え? もしかして俺……心の声じゃ無くて口にだしていたのか……?」


「うん、ダダもれよ……」


 うわぁああ、めちゃくちゃ恥ずかしいぞーっ!!


 穴があったら入りたい気分だーっ!!




 【仙石ボール】


「おい、あの子、めちゃくちゃ可愛いくねぇ?」

「ほんとだな!! それにスタイルも抜群だよな!?」

「お、お近づきになりたいぜ!!」

「あんなミニスカート履いていたらボールを転がす時にパ、パンツが見えるんじゃないか!?」

「だな!! もう少し近づこうぜ!?」

「ってか、何であんな地味な奴なんかとボーリングをやっているんだよ!?」

「そうだよな。何であんな奴があんな美人と……」



 うるせぇよ、外野共……


 それに魔冬のスカートは『騙しスカート』だから残念ながらパンツは見えないぜ!!


 はぁ……しかし……


 やっぱり普通は俺に対してそう思うよな。


 ケイトさんとのデートの時も数人の客が同じような事を小声で言っていたもんなぁ……


 俺は目は悪いけど耳はめちゃくちゃ良いんだよ……


 特に悪口は良く聞こえるぜ!!


 でもまぁ、俺は別に何を言われてもいいんだけど、俺のせいで魔冬の株まで下がるのは嫌だよなぁ……なんか魔冬に申し訳ない気持ちになってしまうなぁ……


「ま、魔冬……俺……」


「颯君!?」


「えっ!? な、何……」


「颯君、あんな『モブキャラ共』の言う事なんて気にする必要なんて無いからね!! それよりも今日は思いっきりボーリングを楽しみましょうよ!!」


 魔冬……俺に気遣ってくれているんだな?


 やっぱ魔冬は中等部の時から優しい子だよな。


 それでいて美人で頭も良くて……何でこんな『完璧美少女』が俺みたいな『陰キャ』の俺を好きになったんだろう?


 俺なんかには勿体なさ過ぎると思うんだけど……



「颯君も中等部の頃からとても優しくて勉強もできるし、メガネを外したらイケメンだし、本当は私には勿体ない過ぎる人なのよ!!」


「えっ!? もしかしてまた俺の心の声を口に出していたのか!?」


「フフ、そうよ。ダダもれよ」


 うわぁああ、またしても、めちゃくちゃ恥ずかしいじゃねぇか!!


 穴があったら入りたい!!


 あっ?


 ボーリングの球に穴が三つ……




 【伊緒奈サイド】


「こちら『ゲームコーナー』のクレーンゲーム前の伊緒奈です。みんな配置についたかなぁ? どうぞ~」


ツッ……「ついたぞ。俺と太鳳は二十番レーンだ」

ツッ……「私と八雲は一番端の一番レーンよ」


ツッ……「伊緒奈様……こちらロビー前の華子です。今、伊達さんの友人達が中に入ってきました」


「あらま……そうなの? ってか、みんなちゃんと最後にどうぞ~って言ってちょうだいよね!?」



―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。

次回も魔冬とのデートです。

どうぞよろしくお願い致します。

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