第15章 デート編

第81話 センゴクランド

 【乃恵瑠とのデートの日】


「うわぁああ!! 『センゴクランド』に来るのは久しぶりだわ~っ!! それも大好きな人と来れるだなんて私、幸せ過ぎる。颯君、今日は私とデートしてくれてありがとね?」


「い、いえ……」


 はぁ……乃恵瑠さんの嬉しそうな顔を見れば見るほど心が痛いぞ。


 しかし俺も『センゴクランド』に来るのはいつ以来だろうか?


 あっ、俺がまだ『陽キャ』の頃だから小学生の低学年くらいだよな。


「見て見て、颯君!? ここの遊園地の人気キャラの『落ち武者くん』よ!! あの子、とても可愛いよね? 私、あのキャラが一番好きなの……」


 『落ち武者くん』が一番好きだなんて……一体、乃恵瑠さんの美的感覚はどうなっているんだ!?


 あっ、でもそういった美的感覚だからこそ俺みたいな『陰キャオタク』の事が好きになったのかもしれないな……


 それにしても初めて見る乃恵瑠さんの私服姿はめちゃくちゃ可愛いよなぁ。


 あっ、小学生の頃に見たことが……いや、小学生の頃の私服なんて異性に対して意識の無かった俺にとっては論外だ。


 だから、いくら俺が今後、乃恵瑠さんと付き合う事は無いとはいえ、今後の俺にとっての『参考』として、今日はしっかり観察させてもらおう。

 

 って、俺は何を考えているんだ!?


 し、しかし近くで見る乃恵瑠さんはますます輝いて見えるよな。


 薄いブルー系ストライプでⅤネックのワンピース……


 爽やかの中にも乃恵瑠さんのプロポーションによってかもし出されるセクシーさ……


 大きな胸や長くて白い足もかなり強調されている。

 


「颯君、私の事をマジマジと見ているけど、今日の私の服装変だったかな?」


「えっ!? そ、そんな事無いですよ!! そ、その逆です。凄く似合っていて、と……とても可愛いと思います……」


「キャーッ、ありがとう!! 私、嬉しくて死にそうよ!!」


「いや、死なないでください……と、ところでどのアトラクションから行きますか?」


「えっ? そ、そうねぇ……うーんとねぇ……ま、まずは『絶叫系』のアトラクションを全て制覇しましょうか?」


「えっ? ああ、俺はそれでいいですよ……絶叫系好きなんで……」


「ヤッター!! それじゃ、まずは……あの『ビックサンダー合戦』に乗ってから次に『スプラッシュ合戦』に乗りましょう!!」


「わ、分かりました……」


 しかし、当時も小学生ながら思ったけどここのアトラクションのネーミングセンスってちょっとダサくないか……?


 普通に『ジェットコースター』や『急流すべり』にした方がマシだと思うけど……



 

【ビックサンダー合戦】



「キャーッ!! 怖いわ~っ!! 颯君の方に顔を寄らせてね~っ!?」


「えっ? でも、それって逆に危なくないですか!?」


「大丈夫よ。私はその方が心が落ち着くから……って、キャーッ!!」


 の、乃恵瑠さんのⅤネックから胸元がチラッと……こっ、これはヤバいぞ!!


「の、乃恵瑠さん? 俺にくっつき過ぎでは……?」


「いいの、いいの!! 後ろの席の『偽物カップル』に見せつけてやりたいしねって、キャーッ!!」


「えっ? 偽物カップル?」


 俺は乃恵瑠さんの言葉が気になり一瞬だけ後ろを振り向いた。


 !? な、直人に知由じゃないか!?


 本当に伊緒奈達は今日のデートの監視をする為に来ているんだな?


 でも……


「ウギャーッ!! ちっ、知由!! 俺は絶叫系苦手なんだよ!! た、助けてくれよぉぉおお!?」


「なっ、何を言っているのよ直人!? わ、私だって絶叫系は苦手なんだからね!! もう、私に抱きつかないでよ!? 私に抱きついていいのは伊緒奈ちゃんだけなんだからね!!」


「そんな冷たい事を言うなよ、知由!! 今は俺達、恋人同士なんだぞ!!」


 何なんだ、この『ポンコツカップル』は……?


 伊緒奈の奴、カップルの人選間違ったんじゃないのか?


 っていうか、乃恵瑠さんは直人達の事を気付いていたんだ……


 よく考えれば乃恵瑠さんは俺の前ではこんなんだけど、日頃は凛とした人で学園一人気のある人だし……頭も切れる人だもんな……


 こんな『ポンコツカップル』の猿芝居なんて直ぐに見抜いてしまうよな。


 やっぱ、さすが生徒会長って感じだな……





 【伊緒奈サイド】


「太鳳ちゃん、『ビックサンダー合戦』の様子はどうかな?」


「うーん……それがですねぇ……直人が凄くビビって知由に抱きついていまして、全然二人の監視どころでは無いみたいですよ!!」


「へっ?」


「だから直人との恋人役は私の方が良かったんですよ。私ならあんなビビりの直人なんてぶん殴って気絶させちゃえば私一人でも颯さん達を監視できたのに……」


「直人君って『絶叫系』苦手だったんだね? 私、全然知らなかったわ……」


「私は知っていましたが、あそこまでビビりだとは思っていませんでした。伊緒奈さん、どうされます? 次の『スプラッシュ合戦』には私が男子に変装して知由の恋人役で行きましょうか? 別に私一人でも監視は出来ますけど……」


「そ、そうね。その方が良いみたいね……それに八雲ちゃんも華ちゃんも別のアトラクションで待機してくれているし、今は太鳳ちゃんにしかお願いできないわねぇ……」





【颯、乃恵瑠サイド】


「颯君? どうせ後ろの席の『偽物カップル』は颯君と同じクラスの委員長、徳川さんの差し金なんでしょ?」


「えっ? な、なんでそこまで……」


「フフフ……そりゃぁ分かるわよ。徳川さんも私と同じだから……」


「えっ? どういう事ですか?」


「だから……徳川さんも颯君を見ている時の目が私と同じだって事よって、キャーッ!!」


 伊緒奈も乃恵瑠さんと同じ?


 それって……


 グワ―――――――――――――――――――ン


「うげっ!!」


 色々考え過ぎたら少し気持ち悪くなってきたぞーっ!!




―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


新章『デート編』スタートです。

どうぞ宜しくお願い致します。


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また、この作品に対する☆☆☆評価もして頂けると最高に幸せです(≧▽≦)

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