第80話 『陰キャオタク』対『ロリっ子』

 【放課後の屋上】



「竹中颯君、来てくれてありがとね~?」


「いや、あ……はい……」


毛利さんの両脇には見た事の無い女子が立っているぞ。


一人は身長が俺と変わらないくらいで恐らく百七十センチは超えていると思う。


髪型はショートカットで茶髪、肌は日焼けしている感じだ。

顔はどことなく毛利さんに似ていて美人な方だと思うが、気は強そうに見える。


もう一人は身長百五十センチくらいの小柄な人で、髪型はツインテールで髪色は薄いピンク、肌は白くこの人もどことなくだが毛利さんに似ている。


いずれもネクタイの色からして二年生だ。


「そ、それでお話って言うのは何でしょうか?」


「うん、実はね~」


「茂香ねぇ? さっき言っていた男子ってこの子なの?」


「そうよ~」


「えーっ!? 信じられないわ!! ねぇ、ひいらぎ!?」


 なんか、茶髪の方が怒っているぞ。

 そしてピンクツインテールの名前はひいらぎっていうのか?


「うーん、そうねぇ萌絵もえちゃん……茂香お姉ちゃんが、まさかねぇ……」


 茶髪の方の名前は萌絵もえっていうのか?

 性格とは真逆な感じの名前だな?


「二人共、竹中君に失礼よ~私の自由じゃない? それにあなた達は今日の事を見届けて貰う為に連れて来ただけなんだし~」


 『今日の事を見届ける』?


 どういう意味だ?


 それに二人は毛利さんの事を『茂香ねぇ』と『茂香お姉ちゃん』って呼んでいるけど、どういう関係なんだろうか?



「私ね~大学生の彼氏と別れたのよ~」


「えっ、そうなんですか!?」


「そうなの~で、何で別れたか分かるかな~?」


「い、いや……それは全然分かりませんが……」


「でしょうね。フフフ……」


 毛利さんは何が言いたいんだ?


「茂香ねぇ? 早くしてくんないかなぁ? 私、そろそろ部活行かないとヤバイんだけどぉ」


「あっ、ゴメンゴメン。でね、竹中君?」


「はい?」


「昨日ね、竹中君とライン交換をした時にメガネを外した竹中君を私も見たでしょ~?」


「あっ、そうでしたね……」


「でね……竹中君の素顔を見た途端に何故か竹中君の内面の良さが凄く伝わって来たの。そして突然、私の身体中が凄く熱くなってしまったのよ~それって、どういう現象か分かるかな~?」


 さっきから質問ばっかだな?


「い、いえ……分かりませんが……」


「これってね……これって、竹中君の事を私が好きになってしまったってことなの~!!」


「えーーーっ!!??」


「うわぁ、やっぱり驚くよね~? そして私みたいなキュートな女の子に好かれてしまって嬉しいよね~?」


「い、いえ……驚きはしますが、嬉しくはないです……」


「えーっ!? ウソ~ッ!? 私に好かれて嬉しがらない男子なんて今までいなかつたわよ~!!」


 そ、そんな事を言われてもなぁ……


 毛利さんの顔は本人が言う通り、キュートだとは思うけど……


 俺は『ロリ体型』には全然興味が無いというか……


 っていうか俺は他の人達だけでも大変なのに、更に追加で毛利さんまでっていうのが面倒くさくて嫌だという気持ちが先に出てしまうんだろうなぁ……


 それに、やはり『ロリっ子』には興味ないしなぁ……

でもこれは本人には言えないよな。


「ちょっと待ってくれないかな~? 私は竹中君と付き合う為に大学生の彼氏と別れたんだからね~!!」


 それは、あんたの勝手だろ!!


「そ、そんな事を言われましても……」



「ハハハ、茂香お姉ちゃんが初めてフラれるところを見届ける事ができて良かったわぁ」


「柊ちゃん? ち、違うわよ~っ!! そんなところを見届けさせる為にあなた達を連れて来た訳じゃ無いからね~っ!! 私が彼を堕とすところを見届けてもらおうと……」


 毛利さんって凄い自信家だったんだなぁ……


 まぁ、勉強も学年一位だし、顔も体型以外は可愛いし、風紀委員長と投票部副部長を兼務もしているし、そうなっても仕方が無いか。


 でも、今回の俺は何となくだけど即日で断る事が出来る様な気がしてきたぞ。


 伊緒奈の言う通り、いつの間にか俺は少しずつ自信を取り戻してきているのだろうか?


 いや待て。それは調子に乗り過ぎだよな?


 相手が俺にしてみれば全然、興味の無い『ロリっ子』だから断りやすいだけなのかもしれないぞ。


「毛利さん? お、お気持ちは嬉しいのですが……」


「竹中君!? この画像を見てちょうだい!!」


 えっ? 毛利さんがスマホを差し出して来たぞ。


 何の画像を見せる気なんだ?


「俺に何を見ろと……!? って、こ、この画像は……!?」


「フフフ……どう? 可愛いでしょ? これね、私がコスプレしているのよ~」


 毛利さんがコスプレしているのは俺が大好きなアニメ『魔法少女ソフィア』のソフィアちゃんじゃないか!!


 そ、それも織田会長も少し似ていると思っていたけど、毛利先輩の方が断然ソックリというか本物みたいだぞ!!


 む、胸もデカイし……これはかなり盛っているんだろうけども……


 それにしても凄すぎる……めちゃくちゃ可愛いぞ……


「フフフ……竹中君がソフィアちゃんファンっていうのは調査済みよ。どうかしら? もし私と付き合ってくれたら毎日、ソフィアちゃんのコスプレをして竹中君と町中を歩いてあげるわよ~」


「うっ……それは恥ずかしいけど……」


 何を躊躇ちゅうちょしているんだ、俺!?


 お前は毛利さんに限らず高校生の間は誰とも恋愛をしないって決めているだろ!?


 それなのに何故、ソフィアちゃんコスプレごときで心が揺れ動くんだ!?


「ハハハハ!! さすが茂香ねぇだねぇ……最終兵器をちゃんと用意していたんだぁ?」


 し、しかし……これだけは毛利さんに言っておかなければ……


「も、毛利さん……俺の彼女になる為の条件を聞いてもらえませんか……? これは他の人達にも言うつもりですので……」


「条件? 竹中君にしてはお高く出るわね~?」


「す、すみません……」


「フフフ、冗談よ~別にいいよ~言ってごらんなさ~い。大好きな竹中君の為ならどんな条件でも私は飲んでみせるから~」


「あ、ありがとうございます……じ、実はですね……」





―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


次回から新章『デート編』開始です。

どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

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