第82話 それでいいの?

 【スプラッシュ合戦】



 ドッドッドッド ドッドッドッド


「は、颯君!? 乗り物がドンドン上に上がって行くわよ!? 私、怖いわっ!!」


 ガバッ


「ウグッ!? の、乃恵瑠さん、抱きつくのはちょっと……」


「別にいいじゃない? 今日は私達、恋人みたいなものなんだから」


 ドンッ!!


「キャッ!!」

「えっ!?」


 なんか、俺達の座席の後ろから凄い衝撃が……


「ん? ……ん!?」


 後ろに座っているのは……もしかして太鳳か!?


 それも男子に変装なんかして……もしかして今の衝撃は太鳳が俺達の座席に蹴りを入れたのでは……?


「太鳳君!? 私、怖いわ~っ!!」


 ガバッ


「フンッ、それくらいでビビって俺に抱きつくんじゃねぇよ!! っていうか本当はお前、全然怖くないんだろ!? どうせ怖がっている方が俺に可愛いと思ってもらえるとでも考えているんだろ!? ほんと、女ってのはアザといよな!!」


 太鳳の奴、凄いセリフっていうか……


 メチャクチャ演技ヘタクソだな!?


 今のセリフは乃恵瑠さんにワザと聞こえる様に言っているのだろうけど……


 でも、肝心の乃恵瑠さんはといえば……


 太鳳のヘタクソなセリフなんて無視しているし!!


 ずっと俺に抱きついたまま離れてくれない。


 ん? 乃恵瑠さんが上目遣いで俺に何やら言いたげだが……


「どうせ後ろの客も徳川さんの回し者でしょう? っていうか演技がヘタクソ過ぎるし、それに彼女役の子は『ビックサンダー合戦』に乗った時に後ろに座っていた女の子と同じだしね、フフフ……」


 あちゃ~、お前達の作戦は色々な理由で大失敗だぞ!!


 せめて、彼女役は八雲か服部さんにするべきだったな。


「さ、さぁ……どうなんですかねぇ……」


「まぁ、私は別に誰に邪魔されようと気にしないけどね。今日は何があっても颯君とのデートを満喫するって決めているから」


 や、やはり乃恵瑠さんは強い人だな。


 伊緒奈達よりも一枚も二枚も上手うわてだ。


「そんな事よりも、そろそろてっぺんに到着するわよ!!」


「えっ?」



 ギュイ―――――――――――――――――――ン!!


「キャーッ!! 颯く~んっ!!」


 ムギュッ


 の、乃恵瑠さん!? またしても、む……胸が……



 バッシャ―――――――――――――――――――ン!!


「うわーっ!? 水しぶきが思いっきりかかってしまった!!」


「うーん、私もよぉぉ……颯君、見て~? 私の服もびしょぬれで服が透けてるわ~」


「ウグッ!!」


 の、の、乃恵瑠さんのワンピースが透けて……中のし、下着が……


「ウフッ、颯君、顔を真っ赤にして可愛いぃぃ。やっぱり絶叫系から始めたのは正解だったわぁ……」


 クソッ、これも計算通りだったのか?


「この後も続けて他の絶叫系のアトラクションに行きましょうね? そしてお昼を食べてからぁ……お化け屋敷の『落ち武者のはらわた』に行ってぇ……で、最後に恋人同士の定番『センゴク一騎打ち』に乗って愛を語りましょうね?」


 はぁ……きっとお化け屋敷でも俺に抱きつきながら歩くんだろうなぁ……


 っていうか、『落ち武者のはらわた』って……


 ちなみに『センゴク一騎打ち』ってのは、二人乗りの観覧車のことだからな。




 【伊緒奈サイド】



「伊緒奈さん、すみません……私の『迫真の演技』でも織田会長には全然通じませんでした……最後まで颯さんに抱きついて……そ、それにワザと胸を当てているみたいですし……更に濡れた服が透けて下着まで堂々と見せつけるだなんて……私にはマネできない……」


「そうみたいね。さすがは織田会長だわ……でも太鳳ちゃんはマネしなくてもいいからね? まぁ、私が颯君にみんなとデートをするようにって言ったのだから、こういう状況になるのは覚悟していたけど……織田会長は今日のデートで颯君を堕とそうとしているのがヒシヒシと伝わってくるわねぇ……」


「伊緒奈ちゃーん? もし、颯君が今日のデートで織田会長の事を好きになっちゃったらどうするの? 織田会長じゃなくても他の人の事が本当に好きになってしまったらどうする?」


「えっ? そ、そんな事には絶対ならないとは思うけど……でも、もしそうなれば、それはそれで颯君を祝福するしか無いわね……絶対に無いと思うけど……」


「本当にそれでいいの、伊緒奈ちゃん?」


「ち、知由ちゃん……何が言いたいの?」


「別に……伊緒奈ちゃんがそれでいいんなら私は何も言わないわ……」


「・・・・・・」




 【数時間後】


 俺と乃恵瑠さんは『センゴクランド』の絶叫系アトラクションを完全制覇した。


 そして乃恵瑠さんの手作り弁当を食べて……


 これがまたメチャクチャ美味かったんだ!!


 ヤバい、ヤバい!!


 この人、俺の胃袋も掴む気でいたんじゃないのか!?


 そんな事を思いながら昼食後に『落ち武者のはらわた』に入り、案の定『キャーッ、颯君怖いよ~っ!! 私を守ってちょうだいね?』と叫び、俺の腕にしがみつきながら終始、『笑顔』で歩いていた。


逆に俺は恥ずかしさと、乃恵瑠さんのとても良い香りに酔いそうになりさっき食った弁当が出そうになった。


 そういえば、他のアトラクションで八雲や服部さんの邪魔が入ってもいいはずなのに全然、二人の気配が感じられなかったけど……何かあったのだろうか?


 そして『落ち武者のはらわた』も無事に? 終わり、最後のアトラクション『センゴク一騎打ち』の前に俺達はいる。


 何度も言うが、今から乗り込むのは観覧車だからな!!


「やっと、颯君と二人きりになれるわねぇ? とっても楽しみだわ。ウフッ」


 俺は不安しか無いんですけどね。


「あ、あのぉぉ……乃恵瑠さん?」


「ん? 何かな、颯君?」


「ゴンドラに乗ったら、乃恵瑠さんに一つだけお話があるのですが……」


「そんな、一つと言わずにたくさんお話してちょうだいねぇ?」


「は、はい……」


 織田乃恵瑠は再び生徒会長に立候補するだろうか……?


―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


次回、乃恵瑠とのデート編は終了です。

そして引き続き武田静香とのデートが……


どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る