第78話 伊緒奈の決断

 な、何で服部が白畑しらはた先生のことまで知っているんだ!?


 そ、それに白畑先生が家庭教師をやってくれた最初の一年の時は高校生だっただなんて……


 見た目が地味で少し老けた感じがして大学生に見えなかったから本当は社会人じゃないのかと逆に疑っていたくらいだったのに……


 色んな意味で衝撃過ぎるぞ……


「で、その白畑先生は実は……」


「華ちゃん? 説明はそれくらいにしておきましょうか……?」


「は、はい……伊緒奈様……」


 えっ? 服部は何を言おうとしていたんだ?


 めちゃくちゃ気に成るじゃねぇか!!



「グスンッ……そ、それにしても颯さん? とても辛い小学生時代をおくられていたんですね? 私、さっきから涙が止りません……グスンッ……」


 太鳳は力は強いけど、こういう話には弱いんだな?


「うぉーっ!! 颯さん、本当にあなたは凄い人だーっ!!」


 うるせぇよ、直人!!


 今となれば俺に突っかかってきた頃の直人が懐かしいぜ。


「ま、まぁ……褒めてあげてもいかもしれないわね……」


 別に知由に褒められても嬉しくはないぞ。


「私が颯さんと同じ状況だったらと思うと……周りに伊緒奈さん達がいてくれた事を感謝します……」


 八雲の言葉には少しグッと来たな。



「それではそろそろ今回、『緊急ちつてと会議』を開催した理由を発表したいと思います」


 そっ、そうだった!!


 マジで何で緊急会議を開催したんだ?


 ってか、さっきまでの『竹中颯情報』は必要だったのか!?


「颯君には今まで言ってなかったけど……実は来年、私は『生徒会長選挙』に立候補しようと思っていたのだけど……それで皆から各クラスの色々な情報を集めていたの……」


「えっ、そうだったのか!?」


一応、驚いてはみたけど……内心ではそうかなとは思っていたけどな……


 俺にあれだけ『人気投票』などには興味が無いそぶりをしていたけど……やはり陽菜さんが伊緒奈の事を『タヌキ』と言っていたのはそういう動きが昔から見えていたんだろうなぁ……


 陽菜さんの観察力も凄いからなぁ……


「でもね、来年じゃなく今年の『生徒会長選挙』に立候補しようと思うの。まぁ、学園のルールとしてまずは一学期末に行われる『学年人気投票』で一位か二位に入らないと立候補する権利は無いのだけれど……」


 えっ? そういうルールなのか?

 全然、知らなかったぜ……


「伊緒奈ちゃん、それは本当なの? あなたは二年かけて学年全体の人気者になる作戦を立てていたのに……今年、立候補するなら時間が全然足りないわよ?」


「知由の言う通りだ、伊緒奈!! 俺も三組の中で伊緒奈の事をかなり宣伝はしているけど、先日の中間テスト学年三位で三組のクラス委員長『島津佳乃しまづよしの』の人気は絶大で残り数ヶ月で人気を逆転させるのは難しいぞ」


「私もだなぁ……うちの二組にも中間テスト学年四位でクラス委員長の『長曾我部千夏ちょうそかべちか』さんは凄い人気があって……まぁ、私が伊緒奈さんの宣伝をするのが下手くそなんだろうけど……」


 島津佳乃に長曾我部千夏……


 そう言えば中間テストの順位表にそんな名前があったような気がするな。


「そんな事は無いよ、八雲ちゃん。あなたなりに出来る事は全部やってくれている事は私はよく分かっているから……」


「でも伊緒奈さん? 最大のライバルである伊達魔冬の対策すら出来ていないんですが大丈夫でしょうか? あっ、そういえば伊達さんと華ちゃんは同じクラスだったわね? 華ちゃん、そこらへんはどうなの?」


「えっ? ああ、私のセリフはもう終わりだと思っていたのだけど、まだしゃべらないといけないの? 長くなるけど良いかしら?」


「 「 「 「いえ、しゃべらなくていいよ!!!!」 」 」 」



「みんな、心配してくれてありがとうね? でも、私決めたの。だからお願い。出来る限りで良いから協力してくれないかな?」


「そ、そりゃぁ、愛する伊緒奈ちゃんの頼みなんだから私は全力で協力はするけど、何で急に立候補をする気になったの?」


 知由の問いに伊緒奈は真剣な表情で語り出した。


 まず、伊緒奈が立候補するのは俺の為だという事。


 で、何故それが俺の為になるのかというと、それは女子達から告白されまくっている俺が断りやすくする為だそうだ。


 どういう事かと言えば、こういう事らしい。


 俺が付き合う相手は今度の生徒会長選挙で会長になった人、もしくはその新会長を応援した人から決めるという風に宣言をして欲しいとのこと……


 そしてその絞られた数名から俺が伊緒奈を選び『嘘の恋人同士』になり、数ヶ月後に破局した事にすれば誰も疑わないであろうと……


「な、何でそこまで……」


「フフフ……さっき言ったでしょ? 私は颯君に昔の様な『陽キャ』になってもらいたいの。颯君には楽しい学園生活をおくってもらいたいから……でも恋愛は『今の颯君』には辛いだけだと思うのよねぇ……断り方もどうすれば良いのか分からないと思うし……私が想像していた以上に颯君、モテモテになってしまったから……」


 本当に俺の為なのか、実はマジで生徒会長になりたいからなのか、『タヌキ』と言われている伊緒奈の腹の中は分からないけど……ただ、伊緒奈は本当に俺の事を良く分かってくれているのは間違いないよなぁ……


 マジで凄い女だよ……



「……い、伊緒奈さん……?」


「何かな、華ちゃん?」


「伊緒奈さんはそれで辛くは無いのですか?」


 ん? 服部さん、それはどういう事だ?


「……えっ? 華ちゃんの言っている意味が良く分からないなぁ……フフフ……大丈夫よ。辛くなんて無いし、私はこういうのは慣れているから……」





―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


颯の為に?生徒会長に立候補する事を決めた伊緒奈……

果たして彼女に勝機はあるのか?


どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

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