第77話 服部華子が颯を語る
も、もう一人、伊緒奈と同じ考えの人だって?
「い、一体誰なんだ……?」
「フフ、申し訳無いけど今は言えないわ。あの人との約束だから……でもいずれ本人から名乗り出てくるはずだからそれまで待っていてね?」
めちゃくちゃ気になるじゃないか!!
うーん……しかしなぁ……
「しかし、伊緒奈も『その人』も何でそこまで俺みたいな奴に関わろうとするんだ? それに二人は俺をどうしたいんだよ?」
伊緒奈が中等部の頃のお礼をしたいという気持ちは有難いし、嬉しいけど、今の俺は静かに『陰キャオタク生活』をおくりたいだけなのに……二人がやっている事は俺の気持ちとは真逆なんだよ。
「私達の目的は颯君の『脱陰キャ学園生活』なの」
「だから俺は『陰キャ』のままの方が……」
「ダメよ!! それは絶対にダメ!!」
「えっ!?」
な、何でダメなんだよ? ってか、何で伊緒奈がそこまで言うんだ!?
「颯君? 私、知っているのよ。本当のあなたは『陽キャ』だって事を……」
「えっ?」
「本当なんですか、颯さん!? 颯さんの無口な性格はワザとだったのですか!?」
「い、いや……それは……」
「それは少し違うのよ、太鳳ちゃん……今の颯君がこうなってしまったのには理由があるのよ……」
伊緒奈の奴、一体、俺の事をどこまで知っているんだ?
「それじゃぁ、颯君について詳しく華ちゃんから説明してもらいましょうか……」
えっ? 服部華子が俺の事を説明するのか!?
てか、この会議の本題って何だったっけ?
「コホンッ……遂に『伊緒奈様の影』と呼ばれている私が長いセリフを話す時が来ました」
そんな前置きが必要なのかっていうか、『伊緒奈様の影』って……なんかめちゃくちゃカッコいいな!!
「竹中颯、十五歳……誕生日は八月十日……父、『
俺の家族構成の説明は必要なのか?
「そんな颯少年は小学四年生の途中までは誰もが認める『陽キャ』でした」
「えっ? そうだったんですか颯さん!?」
「直人さん、お静かに!!」
「はい、すみません……」
直人の奴、服部華子には素直だな?
「颯さんが小四の頃にとある女の子が転校してきましたが、その子はIQが凄くずば抜けて勉強ができたそうですが今の颯さんと同じような瓶底メガネをしておりクラスの女子達の『イジメ対象』になってしまいました……」
は、服部の奴、何でそんなことまで知っているんだ?
「いつしかその子はクラスの男子にまでイジメられる様になり辛い日々を送ります。しかし唯一、颯少年だけはその子を陰から励ましていたそうです……」
「さすがは颯さんです!! 私はここまでの話でもう号泣です!! グスンッ」
た、太鳳、早過ぎだろ!?
「しかし、颯少年はその子が女子達からイジメられている時に初めて涙を流している姿を見てしまった時に遂にプツンと切れてしまいます。そう、颯少年はイジメっ子の女子達を恫喝し逆に泣かせてしまいます……」
「な、なるほど……その頃から颯さんは只者ではなかったんですね!?」
いや直人、俺は今も只者ではないんだぞ。
「ただ、その事により颯少年とその子の二人だけがクラス内で孤立をする事に……その後、その子は親の都合で海外に引っ越すしてしまいました……」
「あら? って事は颯君、一人ぼっちになっちゃうじゃない?」
「その通りです。一人ぼっちになってしまった颯少年が今度はイジメのターゲットになってしまい、辛く耐え忍ぶ日々が続きます。そして五年生になったある時、小四の途中まで仲良しだった友人数名が颯少年の机にいたずらをしているところを目撃してしまい、ショックのあまり怒りを抑える事が出来なくなってしまった颯少年は大暴れをし、彼等に怪我を負わせてしまいます」
「で、でも……颯さんの気持ちはよく分かりますし、その『元友人達』も自業自得なのではないでしょうか……?」
「八雲さんのおっしゃるのはごもっともですが、世の中はそううまくはいきません。学校側も怪我をした少年達の言う事だけを信じ、颯少年の訴えは一切聞いてもらう事はできませんでした……」
「ウエーン!! そんなのあんまりだわーっ!! ウエーンッ!!」
た、太鳳……泣き過ぎだろ?
「そして颯少年は何もかもが信じられなくなり、家に引きこもってしまいました。そこから颯少年は一度も小学校には行っていません……」
「えっ? それじゃぁ、勉強はどうしたの? 勉強しないと、さすがにうちの学校に入学なんてできないと思うのだけど……?」
「フフフ……知由、良い質問です」
は、服部さんが初めて微笑んだぞ!!
ただ、その笑顔は少し不気味だけど……
「颯少年はただの引きこもりではありませんでした。家族に迷惑をかけたくないという思いから率先して家事を行い、海外に引っ越してしまった『あの子』に少しでも追いつきたいという思いから自己流ではありますが必死に勉強を頑張っていました」
「おーっ!! やっぱり『ただの陰キャ』では無かったのですね!?」
太鳳、俺はただの陰キャでいたいんだよ。
「そんな颯少年の頑張りに感銘を受けたご両親は、彼が中学受験をしたいと言い出しても大丈夫なように女子大生の家庭教師をつけてくれたのです」
えーっ!? 何で服部はそんな事まで知っているんだ!?
「家庭教師の名前は『白畑たまえ《しらはたたまえ》』……彼女は当時、実は高校三年生で年齢を偽って颯少年の家庭教師をしていたのです……」
「えーっ!? そ、そうなのぉぉおお!?」
って、何で服部は俺が知らない事まで知っているんだよ!?
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お読みいただきありがとうございました。
華子によって颯の過去が語られる。
しかし、この会議の本題は何だったのか?
それは次回に明かされることでしょう……多分(笑)
ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆
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