第47話 それぞれの思惑

 あ、あの……ロリっ子め……


「あっ、でも心配しないで竹中君。『投票部 部員』は口が堅いのが取柄みたいなものだから……」


 ん? 前に黒田先生もそんな事を言ってたよな?


「で、でもさ……あの毛利さんは信用できないというか……」


 そう、あのロリっ子は性格も軽そうだったから、きっと口も軽いに違いない!!


「フフ、特に毛利先輩は絶対に大丈夫よ。あの人は『中等部』の頃から表向きは軽そうに見えるけど、実はとても真面目で口が堅くて有名な人だから……でもさすがに自分の中だけで抑え込むのはストレスが溜まるから『投票部』の中だけは部員全員、ストレス発散の場にしているの」


 なるほどなと言っても良いのか分からないけど、何となく気持ちは分かる。


「私は毛利先輩から聞いた事を思わず竹中君本人に言ってしまったから『投票部 部員』失格よね? ウフッ……でも他の人には絶対に言わないから信用してくれると嬉しいけど……」


「い、いや……俺は天海さんの事は信じるよ……」


「有難う、竹中君……今日は勉強の邪魔をしちゃってゴメンなさいね?」


「いや、そんなことは無いよ.....」


「そう言ってくれると嬉しいわ。それじゃぁ、私はそろそろ教室に戻るわね? また今度、ゆっくりお話しましょう?」


「う、うん……また話そう……」


 そして天海さんは図書室から出て行った。


 こんなに人と話したのはいつ以来だろう……


 一人残った俺はさっきまでの天海さんとの会話を何度も思い出してしまい、なかなか勉強に集中する事が出来なかった。




 【生徒会室】



「あぁぁぁぁ……何かモヤモヤするわぁぁぁぁ……」


「はぁ……乃恵瑠、まだあれから一週間しか経ってないのよ?」


「わ、分かっているけどさ……それに自分で言ったことだから仕方が無いのだけど、やっぱり好きな人に会えないのはとても辛いわ……」


「あなたの気持ちはよく分かるけどさ、でもこの期間を我慢すれば乃恵瑠に一番勝機があると思うんだけど……ですよね、平手さん?」


「そうね……。乃恵瑠ちゃんが提案した時、竹中君のこわばった表情が一瞬、和らいだものね。あれは他の二人よりも好感度が上がったと思う……」


「えっ? そ、そうなんですか!? 彼の表情が和らいだのですか!? それなら良かったわ……。でもあの二人、私みたいに中間テストが終わるまで本当に大人しくするのかしら? それも少し不安だわ……」


「乃恵瑠、それは逆にチャンスじゃない? だって今の竹中君は話しかけられるのも拒んでいるのに、もしあの二人が彼に話しかけでもしたら……」


「あっ、そうね……逆に二人の好感度が下がるかもしれないわね? ということは、あの二人が彼に話かけてしまう様な罠を仕掛けるのも一つの手よね!?」


「い、いや……それは止めておいた方が良いと思うけど……それよりも乃恵瑠? あなた本当に次の選挙に立候補しないつもりなの?」


「うん、しないわ。だから陽菜ちゃんが生徒会長に立候補してよ? 私、応援するからさっ!!」


「わっ、私は嫌よ!! 乃恵瑠、お願いだから今年も立候補してよ!!」


「私はもう決めたのよ。残りの学園生活は恋愛に力を入れるって……生徒会長をやっていたら好きな人の事ばかり考えられないじゃない」


「乃恵瑠だけじゃないわよ!! わっ、私だって恋愛はしたいもん!!」


「あら? もしかして陽菜ちゃんも好きな人がいるのかな?」


「えっ? うん、まぁ……気になる人はいるわ……」


「えーっ!? そうなの? それは詳しく教えて欲しいわ!!」


「嫌よ!! 絶対に乃恵瑠には言わないわ!! ってか言えないわ……」




 【一年一組の教室】


「あっ? 伊緒奈さん、颯さんが戻ってきましたよ!!」


 えっ、何??


「颯君、お帰りなさーい。集中してお勉強できたかな?」


「あ、ああ……できたよ……」


「それは良かったわ。それでね、もうすぐ五時限目が始まるから手短に言うけどさ、颯君は今度の中間テストで何か目標ってあるのかな? 平均点とか学年順位とか……」


「え? まあ一応はあるけど……出来れば学園十位以内に入りたいなぁとは思っている……」


「学年十位以内!? は、颯さん凄く高い目標を持っておられるのですね!? 私、感動しましたよ!!」


 本多さん、それくらいで驚き過ぎだろ!?


 それにそろそろ俺に対して敬語で話すのは止めてくれないかな……


「へぇ、そうなんだぁ……学年十位以内かぁ……でも、うちの学園は勉強が出来る人達が多いから学年十位以内に入るのは至難の業よねぇ……」


 それくらい徳川に言われなくても分かっているさ。

 

 中等部の頃の俺の成績は最高でも学年五十位だったからな……


 その時の頭の良い同級生達が皆、エスカレーター式で進級しているし、高等部には前田達の様な外部入学の人達も多いしさ……


「至難の業っていうのは自分でもよく分かっているから……」


「それじゃさ、その目標を達成する為に私のお家で勉強会をやらないかな?」


「えっ!?」


 べ、勉強会だって!?






―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


天海さんから『投票部』の人達の事情を聞いた颯は少しだけだが毛利の気持ちを理解する。


そんな中、乃恵瑠と陽菜が今年の生徒会長選挙について話をしているが、乃恵瑠は立候補する意思が無く困る陽菜であったが思わず自分にも気になる人がいる事を口走ってしまう。


そして陽菜は教室に戻って来た颯に突然、勉強会をしないかと持ち掛けてきたので驚く颯であった。


ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆



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