第46話 図書室にて

「あ、天海さん……」


「あら? あなたは、竹中君だったよね? もしかしてこの席は竹中君の席だったのかな?」


 天海さんは少し微笑みながらそう言った。


「い、いや……別に俺の席って決まっている訳じゃないから……気にしなくていいよ。俺は他の席に座るからさ……」


 天海さんに俺はそう言い、他の席に行こうとした時に天海さんが俺を呼び止めた。


「竹中君? よければ私の向かい側に座らない?」


「えっ、いいのかい?」


「うん、いいよ……」


 俺は天海さんに促され向かいに座ることにした。


「今から勉強するのよね? 私が目の前にいたら集中して勉強が出来ないわよね? でも私……竹中君と少しだけお話がしたいなぁって思って……ダメかな?」


 まさか、天海さんが俺と話がしたいと言ってくれるとは思っていなかったので少し驚いたが、俺も今度天海さんに会ったら聞きたい事がいくつかあったので丁度、良い機会だと思った。


「いや、俺も天海さんに聞きたい事があるから……」


「えっ、そうなの? それじゃぁ竹中君からお話してくれてもいいよ」


「そ、それじゃぁ、お言葉に甘えて俺の方から……まず、天海さんの下の名前は何ていうのかな?」


「えっ? わ、私の名前……?」


 俺は普通に下の名前を聞いたつもりだったけど、天海さんは少し驚いた表情をした。


 何でかな? あまり下の名前は言いたくないのかな……?


 でも天海さんの表情は直ぐに笑顔に戻り、口を開く。


「私の名前は天海……桔梗ききょうって言うの。珍しい名前でしょ? それに私の容姿には似合わない名前だと思わない?」


「い、いや……そんな事無いよ。素敵な名前だし、天海さんにとても似合っていると思うよ。それを言えば、俺の名前なんて漫画の主人公になる様なはやてっていう名前だからさ、昔はよく周りから『名前負けしている』って言われたもんさ。ハハハハ……」


 この子の名前は天海桔梗あまみききょうっていうのかぁ……


 しかし、ほとんど学校では自分から人と話さない俺が、天海さんとは『普通』に話ができているよな。


 やはりお互いに『瓶底メガネ』をかけていて『地味キャラ』だし、共通点が多いからなのかな……


「負けていないよ……」


「え? 何が……?」


「だから……颯君は名前負けしていないってこと……」


「そ、そうかなぁ? でも、そんな風に言ってくれたの天海さんが初めてだからめちゃくちゃ嬉しいよ……有難う……」


 いや待てよ? 俺の名前を始めて褒めてくれたのは……


「他には私に聞きたい事はあるのかな?」


「えっ? ああ、それと天海さんは何故、『投票部』に入部したのかなぁって思ってさ」


「フフフ……何故、私が『投票部に入部したかかぁ……そうね……簡単に言えば『投票部 部員』は投票する事もされる事も免除されているからかなぁ……』


「えっ、そうなのかい?」


 俺は驚いた。


 『投票部』ってそういうルールがあったのか?


「あら? 竹中君は知らなかったの? 『投票部』ってそういうところなのよ。私は元々、『人気投票』で何でも役等を決めるっていうのは好きじゃなかったし……それに投票してもらいたいが為にクラスの人達に媚びを売る様な事もやりたくないし……まぁ、出来るタイプでも無いし……だから、そういった事を考えなくてもいいから、私は毎日がとても気楽なの……フフフ」



 そっかぁ……


 ……ってことは……


 『投票部』は俺にピッタリの部活じゃないか!!


 俺も『投票部』に入ればクラス内の人気投票に参加しないで済むし、今回みたいに何かの間違いでなってしまった様なクラスの役員だってやる必要もない……


 そして天海さんが今、言っていた『気楽』っていうのがめちゃくちゃ魅力じゃないか!!


 よしっ、俺も……


「でも、竹中君は『投票部』には入部しない方が良いわよ」


「えーっ!? な、何でだよ!?」


「シーッ、声が大きいわよ……」


「あっ? ご、ゴメン……でも何で俺は『投票部』に入部しない方が良いんだい?」


 俺の為にある様な『投票部』だぞ。みすみす諦める訳にはいかないぞ!!


「だって竹中君は私と違って『人気者』なんだし、勿体ないわよ。これから色々な事に挑戦して欲しいし、そうしているうちに更に竹中君の信用や人気は高まっていって、いつかは『学園一の人気者』になれると思うから……生徒会長だって夢じゃないわ……」



 イヤイヤイヤッ!!


 天海さん、何を根拠にそんな自信ありげに言えるんだ!?


「あ、天海さん……俺の事を信じられないくらい過大評価し過ぎだよ。俺は『陰キャオタク』なんだよ?」


「でも、そんな『陰キャオタクさん』が、学園トップクラスの人気女子達に告白されたじゃない? てことはやっぱり竹中君も人気者っていうことでしょ?」


「えーーーっ!? あ、天海さん……その事、知っていたのかい!?」


「うん、知っているわよ。だって、うちの部の副部長は毛利先輩よ。あの人が全部教えてくれたわ……ちなみに部員全員に……」


「な、何だってーっ!?」「た、竹中君、声が大きいよ……」



 あ、あ、あの……


 『おしゃべりロリっ子』めーっ!! 






―――――――――――――――――――

天海さんと話をする颯はとても話しやすい気持ちになる。

そんな天海さんから『投票部』についてのルールを聞き驚いたが自分も入部したい気持ちになった。しかし天海さんは入部しない方が良いと言う。


理由は颯は人気者で、学園トップクラスの少女達に告白されたから……

これから更に人気者になっていくと思うから……


でも颯はその事を天海さんが知っている事にショックを受けると共に全てを離している毛利茂香に怒りを感じるのだった。


ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆


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