第48話 勉強会

 べ、勉強会だとーっ!?


 俺が徳川と勉強会??


 ちょっと待て、アニメでちょくちょく観た事があるけど、勉強会と言うのは『陽キャ』がやるイベントじゃないのか?


 俺みたいな『陰キャ』には無理があるだろ?


「い、いや……俺、勉強会っていうのは……」


「颯君は苦手な科目はあるの?」


「えっ? そりゃぁ……たくさんあるよ……」


「例えば?」


「うっ、うーん……数学は苦手かな……それに社会科の中では歴史は好きだけど、地理は苦手かも……あと、英語や生物も得意とは言えないかなぁ……」


 今思うと俺の苦手な科目のほとんどは家に引きこもっていた影響があるのかもしれないよな。


 家族旅行も俺は一人で留守番していたし……旅行好きだったらもう少し地理にも詳しくなっていたのかもしれない……


 あと、過去のトラウマで人間不信になっている為、『生物』というワードだけで拒否反応を示してしまう俺がいるのもたしかだ。


「そうなんだぁ……じゃぁ丁度良かったわ」


 えっ? な、何が丁度良いんだ?


「実は勉強会には太鳳ちゃんと同じ幼馴染の子が数名参加するのよ。それで、その中には颯君の苦手な科目が一番得意な子もいるのよ。だから教えてもらってみてはどうかな?」


「うーん……で、でもさぁ……それは申し訳無いというか……」


 本当は苦手な科目が克服できるかもしれないという思いから少しだけ勉強会に魅力を感じてきてはいるんだ……


 でも、悲しいかな俺の『陰キャオタク』としてのプライドがとても邪魔をしている。


 『陽キャ』に屈してなるものかと……



 ガラッ…ガラガラッ


「竹中君!!」


「えっ?」


 俺の名前を呼びながら慌てて教室に入って来たのは担任の黒田先生だった。


「黒田先生……?」


「先生、どうされたのですか? まだ五時限目のチャイムは鳴っていませんけど……」


 少し驚いた表情の徳川が黒田先生に問いかける。


「私は新米教師だし、いつもチャイムが鳴る前に教室の前で待機して緊張している心を落ち着かせるようにしているのよ……」


 黒田先生、意外と真面目なんだな。


 ってか、何で俺の名前を呼びながら教室に入って来たんだ?


「へぇ、そうだったんですか? 黒田先生の様な方でも緊張されるのですね?」


「そりゃぁ勿論よぉぉ……っていうか私は今、凄くショックを受けているの!!」


 えっ? 何にショックを受けているんだ?


「ショック? 黒田先生、何にショックを受けているのですか?」


「今、あなた達がしていた会話の中で竹中君の苦手な教科の中に『数学』が入っていたことに私はショックを受けているのよぉぉ!!」


 え―――っ!? 


 お、俺がショックの原因ですか!?


「く、黒田先生……別に俺だけでは無く、数学が苦手な人はたくさんいると思うんですが……」


 俺は恐る恐る、黒田先生に言ってみると、


「だってさぁ、私の授業の時、竹中君は凄く集中している様に見えていたから……竹中君は数学が好きなんだなって思っていたのよ。それともアレかな? 竹中君も他の男子生徒と同じで私の身体をずっと見ていたのかしら?」


 ブハッ!! この人、何て事を……


 半分は当たっても無くはないけども……


 ってか男子生徒をそんな風にさせているのはあんたのセクシー過ぎる服装のせいなんだからな!!


 教師としてどうなんだって感じだよ!!


「えーっ!? はっ、颯さん!? そうだったんですか!?」


「ほ、本多さん……違うよ、そんな訳無いだろ!?」


「いずれにしても私はショックなので今日から毎日、放課後に個人授業をしてあげるから自習室に来てちょうだい」


「えーっ!?」


「えーっ!? じゃないの!!」


 な、何でそんな事になるんだ!?


 黒田先生も別に俺だけをこだわる必要は無いじゃないか!?


 それに黒田先生と二人きりで個人授業だなんて……


 こ、これは危険だ。あまりにも危険すぎるぞ!!


 色々な意味で危険すぎる……


 俺はどうすればいいんだ……考えろ、考えろ俺……


 ……あっ、そうだ……でも不本意だけど、そんな事も言ってられない状況だし仕方が無いか……


「あ、あのぉぉ……黒田先生……?」


「何、竹中君?」


「じ……実は俺……今日から徳川さん達と……べ、勉強会をやる事に……な、なったんです……だから黒田先生の個人授業は……受ける事が出来ないといいますか……」



「颯君、私達の勉強会に参加してくれるのね!? やったー! とっても嬉しいわ」


「ほ、ほんとですね、伊緒奈さん!! 私も今日からの勉強会がとても楽しみになりましたよ!! 他の人達も颯さんに興味がある人ばかりなので喜ぶと思います」


 い、いや……俺のどこに興味が沸くっていうんだよ!?


「ということで黒田先生? 放課後の個人授業は無しって事でお願いしますね?」


 徳川が笑顔というかニヤニヤした表情で黒田先生に伝えると黒田先生はとても残念そうにこう言った。


「そ、そうなんだぁ……残念だけど、勉強会をするのはとても良いことよ……そっかぁ……竹中君は徳川さん達と勉強するのかぁ……せっかく久しぶりに個人授業が出来ると思ったのになぁ……」


「えっ、久しぶり……?」


「あっ! いえ、こっちの話よ……」



 キーン コーン カーン コーーーン


「チャ、チャイムが鳴ったわね? それでは皆さん、授業を始めるわよぉぉ!!」



 ガラッ…ガラガラッ


「颯……や、やばかったぜっ!! 急にお腹が痛くなってさ、トイレにずっと籠っていたんだけど、俺はもう全然大丈夫だぞ!!」


 ……は??


 前田がトイレに籠っていたなんて知らねぇし、心配も全然していないから!!





―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


勉強会に参加する気持ちが無い颯だったが、黒田先生の突然の出現で状況に変化が起こる。


黒田先生の危険な個人授業よりも徳川達と勉強会をした方がまだマシだという結論w出した颯は黒田先生の個人授業は断るのだった。


果たして勉強会はどんな感じになるのか!?


ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆

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