第10話 投票結果
仙石学園高等部に進級してから一週間が経った。
そう、今日は『クラス委員長』を決める『投票』の日だ。
はぁぁ……誰に投票しようか……
俺は未だ誰に投票するか決めかねていた。
まぁ、本来なら『クラス委員長』なんて一番やりたがっている奴がすれば良いとは思っている。だから普通に考えれば前田俊哉に一票入れるのが妥当だろう。
しかし、俺は前田だけには入れたくないと思っている。
別にあいつに『俺がクラス委員長になったら副委員長は颯、頼むぞ』と言われたのが嫌だからではない。そんなのは断れば済むことだ。
俺が前田に入れたくない理由は簡単だ。
きっと前田が『クラス委員長』になればクラスが騒がしくなるに決まっているんだ。
訳の分からない提案などをするに決まっている。
そして、その都度俺に協力を求めてくるだろう。
絶対にご免だ!!
俺はお前と友達になった覚えは無いからな!!
ただ、俺はこの一週間でまともに会話したのは前田と……徳川伊緒奈だけだからな。
他の奴等がどんな奴等なのか全然、分からないままだ……
「はーい、それでは今から投票用紙にクラス委員長に相応しいと思った人の名前を書いてくださいね? あっ、それと自分の名前も書いてくださ~い」
うう……やはり『あいつ』の名前を書くしかないよな……
「うぉぉおお!! 誰の名前を書こうかな~っ!?」
うるせぇよ、前田!!
チラッ……
俺は投票用紙に名前を書きながら右隣りの徳川を見ると『うっ!?』……
徳川と目が合ってしまった。そして徳川は俺に対してニコッと微笑んだ。
何で、徳川は俺の方を見ていたんだ!?
ってか、俺も徳川の方を見てしまったから何も言えないけどな……
そして投票用紙に記入が終わった者から教壇の上に置いている投票箱に入れていく。
俺も投票用紙を投票箱に入れに行くと箱の前に立っている黒田先生が俺を見つめながら小声でささやいた。
「さて、竹中君は誰に投票したのかなぁ? ウフフ……」
「えっ!?」
まさか、黒田先生がそんなことを言うとは思っていなかった俺は凄く焦った。
そして何故だか顔が赤くなる。
まぁ、めちゃくちゃ美人の先生にあんなに見つめられながら、ささやかれたら、さすがの俺でもドキッとしてしまう。
俺は投票し終わると俯きながら自分の席に戻るのだった。
席に戻る途中、前田は俺の方を見てニヤニヤしている。
きっと俺が前田に投票したと思って喜んでいるのだろう。
幸せな奴だな。
でも悪いが前田……俺はお前の名前は書いて無いから。
俺が書いた名前は……
ん?
俺が書いた名前の徳川伊緒奈は、こないだみたいにノートに何やら書いている。
今日は何故かブツブツ言いながら……
俺が席に座った途端、前田が振り向いてきて満面の笑顔で俺にお礼を言ってきた。
「ありがとな、竹中!! 俺が委員長になった時は……」
「副委員長にはならないよ……」
さすがに俺は声を出して断った。
「えーっ!? マジかよーっ!? 颯が副委員長をやらなかったら一体、誰がやるんだよぉぉ!?」
知るかよ……って、そんなことは『クラス委員長』になってから悩めよな!!
「はーい、それでは今から開票を行いますね~?」
いよいよか……
「あっ、一つ言い忘れていましたが、票が一番多い人が『クラス委員長』になるのは当たり前ですが、二番目に票が多い人が『副委員長』、三番目に多い人が『風紀委員』、四番目に多い人が『美化委員』になりますよ。そして残りの委員はクラス委員長と副委員長が決めるというルールになっているのでよろしくね?」
な、何だと!?
何でそんな大事な事を今頃になって言うんだよ!?
まぁ、でもアレだな。
俺に票なんて入っているはずは無いんだから、ムキになって怒る必要は無いよな……
「それと一票も入っていない人は今日から一週間、毎日教室のお掃除をしてもらいま~す! それでは開票しますねぇ? 先生、とてもドキドキしちゃうわ~」
別にあんたがドキドキする必要は無いだろ?
それよりも黒田先生?
あんたがしゃべる度に色気を出しまくるから、クラスの男子共がドキドキしているみたいだぞ!!
それより何だと!?
黒田先生、今シレっと言ったよな?
一票も入っていない人は一週間、教室の掃除だと……
それじゃぁ俺は間違いなく掃除メンバー確定じゃねぇか!!
そして数十分後、開票結果が出たのだが俺は愕然とした。
一位 十五票 徳川伊緒奈 クラス委員長確定
二位 五票 竹中颯 クラス副委員長確定
俺に……ご、ご、ご、五票も票が入るなんて……それに俺が副委員長だなんて……
だ、誰だ!?
こんな『陰キャオタク』の俺に投票した『変わり者』は!?
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お読みいただきありがとうございました。
投票結果はまさかの颯が五票で二位、そして副委員長が確定してしまう。
果たして今後の颯はどうなるのか!?
そして委員長になれなかった前田はどうなるのか!?
いや、どうもなりませんが(笑)
ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆
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