第5話 前田俊哉と黒田かなえ
長く感じた入学式がようやく終わり、俺は自分のクラスの教室にいる。
俺の席は窓側の一番後ろの席……まさに『陰キャ』の俺にとっては特等席だ。
何故、特等席かというと、俺の左隣と真後ろには誰もいないからだ。
だからクラスメイトと会話をする確率が半減する。
友達をつくる気持ちの無い俺にとっては最高の席だ。
だってそうだろ?
会話をしてしまうと、さすがの俺でも情が入ってしまうかもしれない。
それに「教科書を忘れたから見せて?」やら「宿題をするのを忘れたから写させて欲しい」なんて事を頼まれた日には、無視する訳にはいかないからな……
それこそ『イジメ』の対象になってしまう。
いくら『人気取り』を重んじている奴等でも、さすがに何かしてくるだろう……
そして、俺が無視せずにそんなやり取りを続けているうちに友情が芽生えてしまい、いつの間にか友達になってしまうかもしれない。
でも俺はそんなのはゴメンなんだ!!
だって友達は裏切るものだから……
そんな事を考えていた俺に対して、いきなり前の席の奴が急に振り向いてきて話しかけてきた。
「おっす! 俺は外部入学の
何だ、このいきなり『フレンドリー』に話してくる奴は!?
でも無視する訳にはいかないからな……
「あ、ああ、よろしく……」
「イヤイヤイヤッ、お前も自己紹介をしてくれよ! 俺は外部入学だからこの学園に友達は一人もいなくてさ、とりあえず席が近い、えっと……竹中だよな? その竹中が今は頼りなんだよ」
はぁ……この前田って奴は気付いていないと思うけど、『とりあえず』やら『今は』っていう言葉は相手にとっては嬉しいもんじゃないんだぞ。言い方を変えれば他に友達ができたらお前は用無しだって言っているのと同じことなんだからな……」
でも今は仕方がないか……
「あぁ、俺は竹中颯って言うんだ……」
「おお! 颯っていう名前なのか!? めちゃくちゃカッコいい名前だな!!」
フン、どうせ見た目に合わない名前だなとかでも言うんだろ?
「見た目にピッタリの名前だよな!?」
へっ? 今、お前は本心でそんな事を言ったのか?
いや、それは絶対に無いよな。
この前田だって、いくら外部入学とはいえ、この学園のシステムを分かっていて入学しているはずだからな。
おそらく俺に嫌われない様にする為に心にも無いことを言っているだけだろう……
じゃないと、こんな見た目の俺に『颯』という名前がピッタリだなんて言うはずが無いからな。
「ということで今日からよろしく頼むぜ、颯!!」
『ということで』って、どういうことなんだよ!?
こいつの性格がいまいちよく分からん。それに初対面なのにいきなり下の名前呼びかよ?
「ああ、こちらこそ……よろしく……前田……俊哉……」
「ハッハッハッハ!! フルネームで呼ばれるのも結構、いいよな!?」
うるせぇよ、早く前を向いてくれ!!
ガラッ…ガラガラッ
おっ、やっと担任が教室に入って来たぞ。
これでようやく『偽友達つくり野郎』と話さずに済む。
「皆さん、初めまして。私がこれから一年間、一年一組の担任をすることになりました『黒田かなえ』と言います。どうぞ宜しくね~?」
何だか美人で若そうな先生が入って来たぞ。
目は大きく鼻は高くて唇は何かプルンってしているぞ。
そして右顎のホクロがこれまた色気を感じさせている。
髪は茶髪のロングヘアーでスタイルも抜群だし、それに薄いピンクのスーツ姿でスカートも短く、俺の好きな黒のストッキングまで履いてやがる……あんた、めちゃくちゃエロ過ぎるだろ!?
黒田先生、あんたは高校教師の自覚はあるのか!?
血気盛んな男子生徒達を挑発する気でいるのか!?
「颯!! 黒田先生、ヤバくないか!? いや、ヤバいよな!?」
うるせぇ、血気盛んな前田、振り向くな!! 前を向け!!
「私も皆さんと同じで教師一年生なんです。だから一年生同士、一緒に頑張りましょうね?」
新人教師かよ……大丈夫なのか……?
「颯!! 新人教師ってことは俺達と七歳くらいしか変わらないよな? ってことはアリだよな!? いや、アリだ!!」
うるせぇ、何がアリなのか意味が分からねえよ!!
ってか、振り向くな!! 前を向きやがれ!!
はぁ……
入学初日から俺の心も前の奴も騒がし過ぎて疲れるぜ……
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お読みいただきありがとうございました。
入学式も無事に終わり、高等部でも大人しくしようと思っている矢先、前の席の前田俊哉が馴れ馴れしい感じで話しかけてくる。前田の対応に困惑する颯だったが、今度はめちゃくちゃエロい感じの新人教師、黒田かなえが教室に入って来た。
ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆
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