第209話 次なる研究対象
ヴィラン組織『ウバウンデス』。スタビーの研究室にて。
スタビーは目の前のモニターと向き合いながら上機嫌に鼻歌まで歌っていた。
「いやはや、予想以上のデータ収集率。これならばもう次の段階に移ってもよさそうですね」
スタビーの前には、ケーブルに繋がれた少女と怪人が居た。だがどちらもスタビーによって改造された少女であり、改造された怪人。どちらも並大抵のスペックでは無かった。
「対怪人、対魔法少女、どちらも戦績は上々。当初想定した期待値は上回っていますね。まぁ耐久値はそろそろ限界を迎えそうですが。通常素体であれば持った方でしょう」
別のモニターに出ている少女と怪人のバイタル数値を見ながらスタビーは呟く。どちらも限界を示す値になっていた。これ以上の運用は難しいだろうとそう判断を下していた。
「これ以上の成果は期待できそうにありませんし構わないでしょう。後で処分しておきましょうか」
スタビーにとって目の前の少女も怪人もただの研究材料でしかない。使えなくなったら捨てるのみ。同じ命を持つ存在だと認識すらしていなかった。
「市場への薬の流通量も十分。まぁ怪人化に至っているのは三十パーセント程度のようですが。それもまた想定内。改良を進めれば十パーセントは伸びるでしょう。そちらは他の者に任せるとして。さっそく次の実験へと取りかかるとしましょうか」
研究が順調に推移していることに機嫌を良くしたスタビーはそのままの足で別の場所へと向かう。
「さてと次の素体はどれにするか……せっかくですから“あれ”を使いましょうか」
スタビーが向かったのは研究のための素体を保存してある場所。そこには様々な動物が保存されていた。一番多いのは人間。生かされたまま眠らされている。スタビーの研究素材となるためだけに。
スタビーにとってみれば宝庫のような場所だったが、この場所は他の怪人からも醜悪として忌み嫌われていた。
もちろんスタビーはそんな周囲の意見など微塵も気にしてはいなかったが。
自分のやりたい研究をやる。それこそがスタビーの存在意義であり、唯一の望みだった。
「さてと、確か例の素材はこの辺りに……あぁありましたね」
スタビーの前に並ぶのはポットの中に入れられ、眠り続けている少女達。しかしそれはただの少女達では無かった。
「ようやくこれにも手を出せる。いやぁ、ずっと保存しておいた甲斐がありました」
スタビーは自身のことを天才だと自負している。しかしそのことに自惚れてはいなかった。今の自分にできること、できないこと。それを冷静に見極め最大限のパフォーマンスを発揮し続ける。それこそがスタビーの研究道であり、無謀な研究をして貴重な素材を無駄にするようなことは嫌っていた。
しかしついにスタビーは待ち望んでいた次なるステップへと踏み出す時が来たと頬を緩ませる。
「魔法少女の素体。これを使えば私はさらなる扉を開くことができる。さぁ、始めましょうか」
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