第202話 ホープイエローvsブレイブブルー
「あなたが私と戦う? 本気で言ってるの?」
ホープイエローの言葉にブレイブブルーは目を丸くして驚く。そしてそれは隣にいたラブリィレッドも同じだった。
「ちょ、ちょっとイエロー。いくらなんでもそれは……」
「わかってます。だけどここはわたしがやらないといけないんです」
「イエロー……わかった。そこまで言うなら」
ホープイエローの目を見て覚悟を感じ取ったラブリィレッドは不安を感じながらも引き下がるしか無かった。ここで出しゃばるのは男らしくないと思ったのもある。
「いいの? やるなら私は二対一でも構わないけど」
「へぇ、ずいぶんと余裕だね」
「それだけの実力があるのも事実でしょう。ですが、何度でも言います。あなたの相手はわたし一人です。いいえ、今のあなたの相手なんてわたし一人で十分です。レッドの手を煩わせるまでもない」
「っ、へぇ。言ってくれるじゃない」
ホープイエローの一言はブレイブブルーのプライドを逆撫でするものだった。
ブレイブブルーから向けられるのは紛れもない殺気。だが今のホープイエローはそんな殺気では怯みもしない。手にした弓を強く握りしめて、まっすぐブレイブブルーのことを見つめ返す。
合図など必要ない。否、すでに戦いは始まっていた。
遠距離型であるホープイエローと近距離型であるブレイブブルー。戦闘の経験などから見ても有利なのはブレイブブルーだった。もし距離を詰められてしまえばホープイエローに反撃の手立ては無いのだから。
(イエローは自分一人で十分だなんて言ってたが、今のこの距離。それ自体もブルーに有利だ。せめてもう少し離れた位置から始めてりゃ話は別だったんだろうが。いったいどうするつもりなんだ?)
今のホープイエローとブレイブブルーの間合いは中距離。遠距離型であるホープイエローには不利な間合い。それをどう覆そうというのか、ラブリィレッドにはわからなかった。
「ふぅ――いきますっ!」
最初に仕掛けたのはホープイエローだった。
(先手必勝。いつもレッドが言ってることです。それにブルー相手に距離を詰められたら最初から奥の手を切ることになる。あれはまだ不完全だし、それに使えるとしたら一度だけ。だからまずは足下を狙って動きを止めてから距離を取る!)
ホープイエローが一番最初に狙ったのはブレイブブルーの足。後方に飛び退きながらの射撃。その射撃はさすがと言うべきか、狙った場所へと寸分の狂い無く飛んでいく。
だがブレイブブルーはその射撃を読んでいたのか、猛然と駆け出しながら剣を振り抜く。
この戦いにおいて鍵となるのは距離だ。近距離戦闘に持ち込めばブレイブブルーの勝ちだと言うのは二人の共通認識。だからこそ最初は距離を詰めようとするブレイブブルーと、牽制して有利な距離を作ろうとするホープイエローの攻防になる。
(わかってたことだけど速い。生半可な速度の射撃じゃ動きを止めることもできない。もっと速射を心がけないと)
苦心しているホープイエローだったが、一方で相対しているブレイブブルーもそこまで余裕があるわけでは無かった。
(射撃の精度が上がってる。矢の速度も。もし一瞬でも気を抜いたら射貫かれる。それになによりこの立ち回り。私を近づけないように上手く立ち回ってる)
ブレイブブルーの足元を見て射撃しているホープイエローは、常に着地の瞬間を狙っている。そのせいでブレイブブルーはなかなか距離を詰め切ることができずに居た。
(それにこの射撃の仕方……私の動きを先読みしてる)
剣を握る手に力が入る。ホープイエローのことを弱いと思ったことは無い。だがそれでも怪人との戦いで経験を積んできた自分ほどでは無いと思っていたのだ。それなのに、今のこの拮抗した状況はブレイブブルーにとって予想外であり、情けない自分への怒りを再燃させるには十分だった。
「もういい。もう手加減は無しよ」
ブレイブブルーの目つきが変わったことにホープイエローはいち早く気づいた。何か来ると、そう悟った時にはもう遅かった。
「終わりよ」
「っ!?」
その声はホープイエローの真横から聞こえた。
いつの間に、そんな疑問が頭を過る。だが今はその一瞬の疑問さえ行動を阻害する邪魔にしかならなかった。
「『水閃』!」
ブレイブブルーの一撃がホープイエローへと襲いかかった。
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