第199話 ムカつくから探すだけだ
放課後、晴輝は一週間ぶりに部室へとやってきていた。
部室に居たのは部員である若葉と空花。そもそも学校に来ていない零華の姿は当然無く、顧問の桜木の姿も無かった。
「えっと……突然どうしたんですか? 話があるから部室に集まれなんて」
「そうそう。ハルから集めようとしたのって何気に初めてだよね。まぁなんとなく予想はできてるんだけどさ」
「あぁ、その予想通りだろうな。話ってのはこの一週間姿を消してる青嵐寺のことだ。あの野郎、あれから無断で学校休んでるどころか、こっちからの連絡も無視してんだろ?」
「はい。わたしも何度も連絡してるんですけど。一応既読は着くんです。ですけどそれだけで返信は無くて」
「右に同じく。まぁ昨日も連絡送って既読はついたから無事なのは間違い無いと思うけど。ハルからは連絡とかしてないの?」
「するわけねぇだろうが」
「だよねー。で、それがどうしたの?」
「あいつがしてることはだいたい予想できる。この間会ったスタビーとかいう怪人を探してんだろうな。あの時のあいつ、普通じゃねぇほどキレてやがったからな」
「そうですね。いつも冷静な青嵐寺さんがあそこまで取り乱しているのは初めて見ました」
「挙げ句に事情も何も話さず姿を消しやがったわけだ。正直、ムカついてしょうがねぇ。だから決めた。あいつを見つけ出して、この苛立ちを直接ぶつけるってな」
「え、それって……」
「ふーん。そういうこと」
「勘違いすんなよ。オレはあくまでオレのために、あいつを見つけ出してこの苛立ちをぶつけてぇってだけだ」
遠回しではあるが、零華のことを探すと、晴輝はそう言っているのだ。
それがわかったからこそ若葉は驚き、空花はニヤニヤと笑みを浮かべた。
「フュンフの野郎がいりゃさっさと見つかったかもしれねぇが、あいつはここ最近姿見せてねぇしな。それにあいつに頼るのもなんかムカつく。だから別のツールを使うことにした」
そう言って晴輝はスマホの画面を差し出す。
それは『魔法少女掲示板』のサイトの一つだった。
「とりあえず朝から今までの間に集められるだけ情報を集めた。あいつの目撃情報だ。思った通り怪人を片っ端からぶちのめして回ってるらしい。見かけた魔法少女も引くレベルで尋問を繰り返してるらしい」
「青嵐寺さん……」
「うわ、けっこうえげつないね。口聞けなくなるまでボコボコにしてるのもあるみたいだし。かなり焦ってるみたいだね」
「あぁ、そうなんだろうな。日に日にやり方が荒くなってやがる。余裕が無くなってきてんだろうな」
晴輝が思っていたよりもずっと簡単に青嵐寺の情報は見つかった。だが、軽く情報を纏めても現れる場所に規則性は無く、それこそ片っ端からといった様子だった。
「呼び止めても無視してどっか行っちまうらしい。誰の話も聞いてねぇ、いや聞く気がねぇってのが正しいか」
「でもこんなの無茶です! こんな無茶続けてたらいつか限界が来ます」
「だろうね。一日に十件以上。この一週間で百件近く怪人事件を解決してる。さすがにちょっと常軌を逸してるよねこれは」
「まぁオレとしてはあいつが無茶してようがなんだろうがそんなのはどうでもいい。だが、あの時のあの態度だけは認めねぇ。一番最新の目撃情報は雷須市だった。今から行ってももういない可能性は高いだろうが、その近くにはいるかもしれねぇ。だからオレと黄嶋で見つけに行く。空花はここで目撃情報を逐一確認してオレらに伝えてくれ」
「わかりました。こんな無茶見過ごせません。絶対に見つけてみせます」
「素直に青嵐嬢が心配だって言えばいいのに」
「別に心配なんざしてねぇよ! ただムカつくから探す。そんだけだ」
「素直じゃないねぇ」
「うっせ!」
「ふふっ。それじゃあさっそく行きましょうか」
「あぁ。あの馬鹿を見つけるぞ」
零華を見つける。
その決意を胸に晴輝達は動き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます