第180話 次なる一手
薄暗い部屋の中に重苦しい空気が満ちていた。
部屋の中にいたのは複数の怪人達。その視線の先にあるモニターに写るのは数多の魔法少女達だ。
ウバウンデスの構成員である怪人達は、作戦をことごとく邪魔してくる存在である魔法少女達のことを恨みがましい目で見つめていた。
「また捕まったのか。どれほど薬をばら撒いても、すぐに捕まってしまうのでは意味がないではないか!!」
ズガンッという凄まじい音と共に机が破砕する。
フーッ、フーッと荒い息を吐きながら憎々しげに魔法少女を睨むのは『ウバウンデス』の幹部であるグリムジェネラルだ。
全身を鋼鉄の鎧に包まれた怪人。そこにいるだけで凄まじい威圧感を放っていた。
だが周囲にいる他の怪人達はグリムジェネラルのそんな態度に呆れたように息を吐いた。
「ちょっと、物に当たらないでよ。直すのはあなたじゃないんだから」
「む……そうだな。すまん」
グリムジェネラルのことを窘めたのは、同じく『ウバウンデス』の幹部であるヴァンプメアだ。だが、その顔にはグリムジェネラルと同じように魔法少女に対する嫌悪の感情がありありと表われている。
「でも本当に邪魔だわこいつら。なかなか薬が広まりきらないじゃない」
最近『ウバウンデス』が開発し、裏で流し始めている特別な薬。
当初の計画であれば今頃薬はもっと多方面へ広がり、世間を賑わせているはずだった。
しかしそうはならなかった。全ては魔法少女統括協会の魔法少女達の手によって防がれたからだ。
どんなに巧妙にルートを練っても嗅ぎつけられ、潰される。そのせいで流通する薬の量が予定よりもかなり少なくなっていたのだ。
「虫みたいにどこにでも湧いて、うざいったらありゃしない」
唾棄するように吐き捨てるヴァンプメア。それはこの場にいる怪人全員の共通認識だった。
「そろそろ本腰入れてなんとかするべきじゃないの? いつまでもあの方を待たせるわけにもいかないわよ。あんな声明まで出したんだから」
「もちろんわかっている。どうなのだレプトデス、何か考えはないのか?」
「問題ない。確かに魔法少女の存在は非常に厄介で面倒極まりないが、我らの計画には些かの揺るぎも発生してはいない。我らの流通ルートを突き止められたわけでもない。所詮は場当たり的な対応しかできていない。なによりも薬の効果を確かめるという一番の目的は達せられてるわけだ。改良型の開発も進んでいるからな」
「それは確かにそうだけど。でももっとこう、目に見える成果がないとあの方は納得させられないわよ」
「そちらの方も問題はない。仕込みはすでに済んでいるからな。すでに手はいくつも打ってある。今からでも慌てふためく魔法少女共の顔が浮かぶようだ」
「ふぅーん、ずいぶんな自信ね。あんたが自信たっぷりな時って大抵ろくなことにならない気もするけど」
「うむ。同意する。レプトデスは机上の空論を考えるのだけは得意だからな」
「前も作戦失敗して怒られてるしねぇ」
「う、うるさいぞ! 余計なお世話だ!」
レプトデスの脳裏に過るのはとある魔法少女の姿。その時の屈辱をレプトデスは忘れてはいなかった。
「だが問題ない。今度こそ魔法少女共に煮え湯を飲ませてくれる。そして全て気づいた時には手遅れになってしまえば良いのだ」
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