第181話 魔鉄鋼

 パッションパープルこと紫姫が転校してきてから初めての週末を迎えていた。

 案の定というか、紫姫の奴には振り回されまくったし魔法少女の活動としても邪魔されまくった。まぁ魔法少女活動の方に関しては怪人を倒す手が足りてなかったから構わねぇんだが。

 ともかく、週末になってようやくオレはあいつから解放されたわけだ。

 そしてそんなオレは今、ドワーフメイスと共にとある場所へとやってきていた。


「ごめんねレッドちゃん。あたしの用事にわざわざ付き合わせちゃって」

「ううん。気にしないで。私の魔道具に関連することなわけだから他人事じゃないし。何より今日まであの子に会いたくないし……」

「? どうかしたの?」

「なんでもない。大丈夫だよ」


 事の発端はつい昨日のことだった。






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「うーん、やっぱりどんどん出力が上がってるみたいだね」


 怪人をとっ捕まえた後、魔道具の調子に違和感を覚えたオレはそのままの足でドワーフメイスの元へとやってきていた。

 もうずっとオレの魔道具のメンテナンスはドワーフメイスに任せてる。少しでも違和感があったらすぐに持って来て欲しいって言われてたしな。

 ドワーフメイスはオレの魔道具の様子を確認すると、眉間にしわを寄せながら呟いた。


「出力が上がってる?」

「そう。レッドちゃんの魔力がね。もともとレッドちゃんの魔力が桁違いに多いのは知ってたから核のキャパシティは高めに設定してたんだけど。それでも瞬間的に限界を超える時があるみたいで、その積み重ねがちょっとしたズレに繋がってるって感じかな」

「あー、そう言われると確かに。最近は怪人絡みの事件が増えたからあっちこっちへ走ってばっかりだし。それでちょっと無茶させちゃったのかも。ごめん」


 怪人との戦いは大なり小なり無茶が重なるもんだ。基本的に戦闘のサポートになるから魔道具は着けっぱなしだし、その無茶が響いてきたのかもしれない。


「ううん。悪いのはレッドちゃんじゃないよ。むしろ謝るのはあたし。レッドちゃんの力にちゃんと耐えれる魔道具を作れてなかったってことだから。レッドちゃんの力を推定して、成長予測も立てて設計はしてたんだけど。でも甘かったみたい。レッドちゃんの成長はあたしの想像をはるかに超えて早かった」

「なんかそういう言われ方するとむず痒いんだけど……」

「うーん、でもどうしよう。もっと強度を高める? でもそれじゃあ一時的な対処にはなっても根本的な解決にはならないし……」


 ブツブツと呟きながら思案するメイス。

 オレ自身に自覚があるってわけじゃねぇけど、ある意味で原因の一端なわけだからな。

 とはいえオレにできることがあるわけでもねぇ。魔道具作りのノウハウなんざ欠片も知らねぇからな。


「だったらもっと魔鉄鋼の純度を上げれば可能性はあるかも。でもでも、純度の高いものは採掘が難しいし……」

「どうかしたの?」

「うーん、解決方法は見つかったんだけど。その結果また新たに問題が発生したというか……えーと、レッドちゃんは魔鉄鋼って知ってる?」

「魔鉄鋼? ううん、初めて聞く名前だけど。名前からして、鉄なのはわかるけど」

「うん。鉄なのは間違いないよ。ただちょっと特別な鉄でね。なかなか手に入らないんだ」

「あ、そうなんだ……それがあったら魔道具を強化できるの?」

「手に入ればね。手に入れる方法が無いわけじゃないんだけど……そうだね、いつまでも迷っててもしょうがないし。ねぇ、レッドちゃんもし良かったら手伝ってくれないかな?」

「私に? できることがあるなら手伝ってもいいんだけど」

「良かった! それじゃあ一緒に来て欲しい所があるの!」





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「大丈夫って言ったのは私だけど、まさか異世界に来ることになるなんてなぁ」


 そう、オレは今まさに異世界にやってきていた。より正確に言うなら今オレがいるのは妖精界らしい。つまりフュンフ達の故郷だ。

 まぁ周囲が洞窟で岩に囲まれてるせいで全然そんな実感湧かねぇけど。でも確かにここは地球ではないらしい。

 魔道具技師だけが立ち入りを許される特別区域。ここに件の魔鉄鋼とやらがあるらしいが……なんでわざわざオレまで来る必要があったんだ?

 結局詳しいことは何も聞けてないんだよな。


「レッドちゃんは妖精界に来るのは初めてかな?」

「うん。というかそもそもそんな世界があったことも知らなかったんだけど」

「まぁ確かに世間一般に流布されてる類いの情報じゃないしね。でも間違いないよ。ここは地球じゃない。ここには地球じゃ取れない鉱石がたくさんあるから。まぁ今のあたしのレベルだと立ち入れる場所も限られてるんだけど。でも魔鉄鋼の場所まではなんとか許可貰ってるから。あ、もうすぐ着くよ」


 ぐねぐねと曲がりくねった道の先がドワーフメイスの目的地だった。


「うわぁ、すご……」


 思わず感嘆の声が漏れる。

 十メートルは優に超えるであろう鉄の塊がそこにはあった。

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