不良少年が魔法少女になったら最強ですか？

第55話 和解なんてしてない

　夜。魔法少女としての活動を終えたオレは家へと戻って来ていた。

　はぁ、さすがに今日はいろいろあり過ぎて疲れた。結局依頼も失敗するし……まぁ逃がしはしなかっただけマシだって言われたけどな。これじゃあ完全に時間の無駄だったな。

「まぁいいか。今日はさっさと休むとすっか。明日はまた色々とありそうだしな」

「って、あっさり寝ようとしないでよ！」

「なんだよフュンフ。うるさいぞ」

「うるさいじゃないから。零華との話し合いはまだ終わってなかったでしょ！」

「話し合いもなにも。別に全部あの場で聞かなきゃいけねぇようなもんでもねぇだろ。どうせ同じクラスなんだしな。なんか聞きたいことがあるならそんときにでも聞きゃいい」

「それはそうかもしれないけど……っていうかあなた達、あの時のあれはどういうことよ！」

「あ？　あー……あれか。だからあの時言った通りだっての。オレらは別に協力しあうつもりはねぇよ」

「だからなんでそうなるのって話でしょ！」

　あの時、最後にフュンフがいきなりしてきた、オレと青嵐寺にコンビを組めとか言う意味不明過ぎる提案。

　当然のことながらオレと青嵐寺の答えは一つだった。

『協力しあうつもりはない』

　それを言った時、こいつは「へ？」とか言って滅茶苦茶間抜けな顔してたが……どうやらこいつはそれが気に喰わなかったらしい。

　帰る途中もずっと騒いでてウザかったが……まさか寝る直前まで騒ぎやがるとはな。

　ったく、しょうがねぇな。

　このまま騒がれ続けても寝れないだけだと思ったオレは体を起こす。

「なんでも何も、オレらに協力する理由がねぇだろうが」

「あるでしょ！」

「どこにだよ」

「私に！」

「は？」

「いい？　晴輝と零華……ラブリィレッドとブレイブブルーは私が選んだ魔法少女なのよ？　それに、最初はいがみ合ってた二人が互いに力の限りを尽くしてぶつかり合って和解する。王道の流れでしょ！」

「いや王道とか言われても知らねぇよ。というかだな、一つ勘違いしてるみたいだから訂正しとくぞ」

「勘違い？」

「オレと青嵐寺は一切和解なんてしてねぇ」

「なんでよ！」

「なんでもなにも、別に和解する要素が無かっただろうが」

　オレと青嵐寺がやったことと言えば、単純に互いのことが気に喰わなくて喧嘩したってことくらいだ。その結果としてオレが買ったから色々聞かせてもらったってくらいで、断じてあいつと和解なんてしてねぇ。

　それはたぶん向こうも同じ認識だろ。あのくらいのことでオレと青嵐寺の間にある溝が埋めれるとも思わねぇしな。

「オレにとっちゃいまだにあいつは敵だし、あいつにとってもオレは敵だろ」

「えぇ……」

「えぇ、じゃねぇよ。別にお前がオレらのことを選んだからってな、オレとあいつに協力する義理もねぇし、ましてやお前のために協力するなんてことは絶対にありえねぇんだよ。それが気に喰わないってならオレか青嵐寺のどっちかを外すか、両方とも入れ替えるか、好きにしろ」

「いやよ。また一から探すのなんて面倒だし。あなた達ほどの資質を持つ存在で、他の要請に目を付けられてない人間なんて滅多にいないもの」

　妖精側の事情なんざ知ったこっちゃねぇが、いろいろあるみたいだな。ってか、そんな風に取り合いしてんのかよ。

「でもそうなると困るじゃない。私の目的のためにはあなた達はコンビを組むことが重要なのに」

「だからそのお前の目的ってのはなんなんだよ」

「そこはまだ秘密。あなた達が協力してくれるなら教えてもいいけど」

「ちっ」

　そのふざけたにやけ面を思い切っきり殴ってやりたい、だがそれはできなくされてるからな。我慢するしかねぇ。

「でも真面目な話、これからも怪人を相手にするなら一人より二人の方が確実よ。一人で戦うにはどうしたって限界がある。それはわかってるんでしょ？」

「…………」

　確かに、この一週間怪人を相手にしてわかった。あいつらはそれぞれ特殊な能力を持ってる。つまり簡単に言えば魔法少女との相性があるってことだ。一人で相手するにはどうしたって限界が出てくる。それはなんとなく理解した。

　その意味で言えばオレは運の良い方なんだろうな。【愛】とかいうわけのわからん、だが汎用性の高い属性のおかげで対処はしやすいからな。

　それはわかってる。だが……。

「だとしてもあいつと協力することはねぇよ。そん時はそん時だ」

「はぁ、強情ねぇ……ま、それだったらそれでこっちにも考えがあるけど」

「あ？　いまなんか言ったか？」

「別に、なんでもないから。寝る邪魔して悪かったわね。今日は疲れたでしょうし、ゆっくり休みなさい」

「？　あぁ……」

　なんだこいつ。急に態度変えやがって。

　そんなフュンフの態度の急変に違和感を覚えながらも、オレは眠りにつくのだった。