第54話 フュンフの提案
「はぁ、やっぱりというかなんというか……」
ある意味予想していた通りの名前が出てきたことに思わずため息を吐く。
「そんなに驚かないのね」
「別に驚くようなことでもないでしょ。というか、途中から薄々察してたし。フュンフは前から私のことを魔法少女にしようと色々画策してたみたいだし。ってそうだ。そろそろ変身解いてもいいかな? お互いの正体も知ってるわけだし」
「まぁそうね。もうそろそろいいでしょう」
こんな状況とはいえ、戦うわけでもないのにずっと魔法少女の姿のままでいるのは気持ち悪い。まぁどうせまた帰る時に変身する羽目にはなるんだけどな。ここ魔法ヶ丘市からは
だいぶ遠い。帰るにはどうしたって魔法少女の力が必要になる。
そして、オレが変身を解くとほとんど同時にブレイブブルー——青嵐寺も変身を解いた。
「……こうやって人前で変身解くのは初めてだな」
「当たり前でしょ。魔法少女の変身前の姿は最大の機密。もし誰かに知られたら面倒しか生まない。だから怪人や一般人にバレないようにするのは当然ながら、魔法少女同士でだって正体は明かさない。それが鉄則」
そこに立っていたのは当たり前だが青嵐寺だった。こうして見るとブレイブブルーと青嵐寺はかなり似てる。だが、魔法少女に変身してる時は認識阻害の魔法がかかってる。かなり強力な魔法だ。写真で見ようが映像で見ようがブレイブブルーと青嵐寺が結びつかないようになってる。
これがないと正体がバレるリスクが上がるってことだろうな。オレの場合は認識阻害が無くてもバレるリスクは少ないだろうが。性別も姿形も全部変わってるからな。
「やっぱり青嵐寺か」
「当たり前でしょ。さっきから言ってるじゃない」
「それでもこうして目の当たりにするとな。どうにも変な感じがするっつーか」
「まぁ、それはわからなくもないけど。あなたの方はずっと変身してた方がいいんじゃない?」
「ふざけんなっ、誰が好き好んであんな姿でいるか」
「ふふっ」
「笑ってんじゃねぇよ!」
「魔法少女としては認めないけど、あの姿が愛らしいのは認めなくもないわ」
「んなもん認める必要ねぇよ!」
「そうカリカリすることはないでしょう」
「誰がカリカリさせてると思ってんだよ。あと、いい加減出てこいフュンフ。いるのはわかってんだよ」
オレが青嵐寺と戦い始めてから姿を消してやがったが、この場にいるのはわかりきってるからな。
「ふふん、どうやら無事に勝負は終わったみたいね」
「何が無事にだ。ふざけたことぬかしてんじゃねぇぞこのクソ妖精」
「な!? なんでまたクソ妖精なんて呼ぶわけ!」
「うっせぇ。テメェなんかやっぱクソ妖精で十分だ。ブレイブブルーのこと知ってやがったくせに何にも話さなかっただろうが」
「それはだってねぇ。話しちゃったら面白くないでしょう?」
「面白いとか面白くないとかそういう話してんじゃねぇんだよ。お前にもしっかり事情を話してもらうからな」
「はいはい。答えれる範囲なら答えてあげる」
「そのにやけづら、ぶん殴ってやろうか」
「止めときなさい。どうせ無駄なんだから。あなたも短い期間とはいえフュンフと一緒にいえ、この子がどういう妖精なのかわかってるでしょう?」
「あぁ、まぁな」
そして、オレと青嵐寺は声を揃えて言った。
「「性格最悪のクソ妖精」」
「酷くない!? その認識は酷すぎない!? 私ほど優しい妖精っていないと思うんだけど」
「テメェのどこが優しいんだよ。オレのこと半ば無理やり魔法少女にしやがったくせに。しかもそうなるようにタイミングまで計りやがって」
「私の時も似たようなものだったけど。まぁ私は望んでいたことでもあるから都合は良かったけど」
「私は必要な時に必要な力を与えてあげただけよ。それだけで十分優しいと思うけど」
「狙ってやる優しさは優しさって言わねぇんだよ。ましてやお前の場合は何か他に狙いがあるのがまるわかりだしな」
「そうね。私が魔法少女になったのは半年前だけど、あなたの目的については私もまだ聞かされてないもの」
「知りたい? 私の目的を知りたいのかしら。だったら仕方ないわね、教えてあげる。そしたらもちろん手伝ってくれるわよね」
「ふざけんな」
「嫌」
「酷いっ?!」
青嵐寺とはとことん意見が合わねぇか、フュンフについてだけは意見が合いそうだ。
「契約者が冷たい……」
「原因はてめぇにあんだろうが」
「自業自得ね」
「ふん、まぁいいわ。あなた達が魔法少女として活躍すれば私の目的は自動的に達成されるんだから」
「あ? どういうことだよ」
「ふーんだ。答えてあげない。それよりもあなた達に一つ提案させてもらうわ」
「あ?」
「提案?」
「今日ぶつかりあったことで互いの考えも実力もよくわかったでしょう? ぶつかり合いの後は和解。だから、あなた達は今日からコンビで活動するのよ!」
「「……は?」」
思いもよらぬフュンフの提案に、オレと青嵐寺は思わず素っ頓狂な声を上げることしかできなかった。
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