第14話 魔法少女統括協会はブラック?
「……で、この怪人捕まえたのはいいけど、この後どうしたらいいの?」
単純な疑問というか、捕まえた後にどうするかまで考えてなかった。というか知らねぇ。
まさかこのまま交番にでも連れてくってわけにはいかねぇだろうしな。
「いい質問ね。これからも多用するだろうから覚えておいて損はないわ」
「いや、これが最初で最後だから」
「さぁ、それじゃあまずはいつものごとく『魔法少女掲示板』のアプリを起動して」
「こっちの話は無視か……まぁいいけど。はい、起動したよ」
「“依頼”と“怪人目撃情報”と“意見共有”なんかに“協力要請”と……まぁ色々と欄があるでしょ」
「……うん」
そんなに気にして見たことなかったが……確かに怪人目撃情報以外にも色々とあるみたいだな。
ま、興味ねぇけどな。
「その一番下。魔法少女統括協会への問い合わせってあるでしょ。そこをタッチして頂戴」
「わかった」
言われるがままに進めていくと、怪人捕獲報告、という項目に行き当たった。
「そこから向こうに連絡ができるわ」
「わかった、ありがとう——っ?!」
な、なんで今こいつに礼を……この口が勝手に言いやがったのか。
こいつに対する感謝の念なんて一ミリも持ち合わせてないってのに!
これも変身した影響だってのか!
「ふふっ、どういたしまして。その感謝ちゃんと受け取っておくわ」
「っ……」
不覚。まさしく一生の不覚。
このクソ妖精に礼を言っちまうなんて。
「はぁ、まぁいいや。これで連絡したら終わるのね」
「えぇ。簡単でしょ」
確かに一回わかれば手間は少ない。
位置情報を
これで十万……かかった時間としては一時間ちょい程度。
実入りとしては悪くねぇ……というか、かなり旨いな。
「顔がにやけてるわよ。だらしないわね。魔法少女として相応しい顔をしなさいな」
「むっ」
オレがにやけてるだと!
んなわけないだろうが、ふざけたこと言いやがって!
魔法少女に変身して気分最悪なのに笑えるわけないだろうが!
「まぁいいわ。二回目の変身お疲れ様。ずいぶん魔法の扱いにも慣れたみたいじゃない。もちろん一流の魔法少女に比べたらまだまだだけどね」
「そこを褒められても嬉しくない」
魔法の扱いなんざこれ以上身に着けてたまるか。
何度も言ってるが、魔法少女に変身するのはこれが最後だ。
どんなに実入りが良かったとしてもこれが最後……いや、最後に決まってる!
「揺らいでるわねぇ、あんたの心の揺らぎが手に取るようにわかるわ。この調子で行けば……」
「? 何か言った?」
「いいえ、別に何も。それよりほら、来たみたいよ」
「あ……」
連絡してからほとんど間もなく、こちらに飛んで近づいて来る人影。
あの黒髪……昨日もあった魔法少女の一人か?
「お待たせしました。魔法少女統括協会から派遣された魔法少女のセンリです」
スッと音もなくオレの目の前に着地した黒髪の女……もとい魔法少女センリ。
って……なんか不機嫌じゃねぇか?
「はぁ……」
「えーと、なんか不機嫌ですか?」
「は?」
「あ、いえ、なんでもないですごめんなさい」
今殺気感じたぞこいつ!
ってか反射的に謝っちまったじゃねぇか!
くそ、このオレをビビらせるとは……やるじゃねぇかこの女。
まさかこのオレをビビらせることができる女が妹以外にもいるとはな。
「はぁ、すみません。少し寝不足でイライラしていました。本当にここ最近忙しすぎて寝る暇もなくて。こっちがまだまだ下っ端の魔法少女だからっていいようにこき使ってくれて、ホント覚えてろよあのババア。いつか目にものみせてやるからな。ふんぞり返ってられるのも今のうちだクソが」
おい、魔法少女らしからぬ闇が溢れてんぞこの女。
ってか、なんか話聞く限りなんかブラックっぽいな魔法少女統括協会。
チラッとクソ妖精の方を見れば、そんなことは関係ないとばかりにそっぽを向いてやがるし。
足元に転がしてる怪人に至っては——。
「ひぃ……怖いよぅ」
センリの醸し出す闇にビビりまくってブルブル震えてやがる。
ほんとでかい図体してこの怪人ビビりだな。
まぁ、これで昨日奴みたいにやる気があったらそれはそれで困るんだけどな。
こいつの速さと力。まともに使われたら相当面倒だ。
「あのぉ」
「あぁ、そうでしたね。それが今回捕まえた怪人ですか。怪人名『マッスルバード』……はい、どうやら手配書とも一致していますね。まだ事件は起こしていないとはいえ、身体能力の高さはかなりのものだったはずですが。よく捕まえられましたね」
「いやまぁ、なんとかって感じですけど」
「まだ魔法少女統括協会に登録してから一日しか経っていないというのに、まさかもう怪人を捕まえるとは。精力的な活動、感謝します」
「これはその……色んな事情が重なった結果というかなんというか。本意ではなかったんですけどね」
「……どんな動機があったにせよ、あなたのおかげで事件が未然に防がれたことは事実です。被害が起きてからでは遅いですからね。今後の活躍、期待していますよ」
「いや、期待されても困るんですけど……」
「それでは、私はこの後もクソ上司のせいで予定が詰まっているので。報酬は後日あなたの口座に振り込まれますので確認しておいてください」
「あ、はい——って、なんで私の口座知ってるんですか!」
「企業秘密です。では。失礼します」
「あ、ちょっと!」
呼び止めてもセンリが止まらず。
そのまま怪人を乗ってきた箒の後ろに括りつけて飛んでいきやがった。
色々と聞きたいことはあるが……クソ、まぁいい。いやよくないけどな!
「これで終わりっと。後は変身を解除して家に——っ!!」
その瞬間、背筋に走ったのは強烈な悪寒。
オレはそれを感じると同時にその場から飛び退いていた。
「なにっ?!」
「ふん、まさか今のを避けられるとはな」
数瞬前までオレの立ってた場所に突き刺さる剣。
そして、それを為したのは青い衣装を身に纏った——。
「魔法……少女?」
「私は魔法少女ブレイブブルー……ま、覚えてもらう必要はないが。私と戦ってもらうぞラブリィレッド!」
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