7 ウィンドウショッピングが苦手な人って一定数いる

翌日、ボクたちは連れ立って街にくりだした。


「追加で買うのって何が要るんだろう?」


エミリーがそういうのにカールが応える。


「うーん、騎士団の支給品で足りないものだろ……食料とか?」

「僕たちは君ほどの食事を必要としないからね?」

「いやいや、量が足りないとかそういうことじゃなくて。騎士団の糧食って保存姓重視だから、味が微妙なんだよ。だから保存食でも少しはマシなもの持っていけたら良いかなと。まあ、俺は量にも不満はあるけども」

「なるほど」


バルトロのツッコミにちゃんとした理由を返すカール。

食事か。

前世はともかく、現世では粗食に慣れてないからな。


「塩と砂糖は持って行った方が良いかもね」

「砂糖って、食後のデザートでも作る気か?」

「いや、水に塩と砂糖を混ぜると吸収が良くなるらしいからな」


いわゆるスポーツドリンクだ。

この季節は気温も高いし、魔物退治で動き回れば汗もかく。

医療技術の未熟なこの世界では熱中症も恐ろしい病気の1つだ。

ちなみに水に関しては、軍属の魔法使いが魔法で清浄なものを用意するので安心だ。


「そうなのか」

「砂糖が手に入らないなら、多少かさばるが蜂蜜か、加えて果実でもあれば飲みやすくもなるだろう。あとは毛布を用意しておこうか」

「流石に毛布くらいは配給品で良いんじゃないか、あまり荷物を増やすのもどうかと思うぞ?」

「いや、寝具はある程度しっかりしたものにした方が良い。ただでさえ特殊な環境下で肉体も精神も消耗しているだろうから、休息は少しでも質を上げたい」

「ふーん。まあアトリがそういうなら準備しておくか」


衛生面での不安もあるし。

ある程度ましにはなって来たが、前世の記憶があるボクはこの世界の人間からしたら少し潔癖の気がある。

グーテンベルク家に生まれただけ大分ましではあったが、この世界ではまだまだ衛生観念が発達していない。




そうして必要なものを揃えた後は、各人で街を散策することにした。

全員揃ってカールに案内してもらうのでも良かったのだが、自分の目と足で調べるのも楽しいものだ。

そうしてフラフラと歩き回っていたところ、路地に入っていくエルフがいた。

王都ではほぼ見かけない他人種に目がいくのは仕方ないが、不思議と気にかかる。

ボクは思い切って後を追ってみることにした。

そうして入った路地は日中だと言うのに薄暗く、すぐに曲がり角となっており先ほどの人物の姿は見えない。

早足で路地を進み、角を曲がった。


瞬間。


咄嗟に身を引いた。

そうしていなければ喉笛を掻き切る軌道でナイフが振るわれたからだ。

目の前の人物、先ほどのエルフに。

汗が吹き出す。

身体中に魔力を循環させる。

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