第3話

俺はモヤモヤした気持ちを残ったままだった。直接 「何様だお前」と言うことも「入れたんじゃないのか毒」と聞くこともできなかった。普段ならソファーに寝転がるところを、今日は姿勢よく座り、スマホを触るとあることに気付いた。


「スマホのロックが掛かっていねー」

アプリのアップデート忘れにより、スマホのロックが解除されていた。スマホは門番のいない、敵が侵入し放題の状態だったこととなる。


基本的にスマホは手放さないようにしていたが、お風呂に入るときだけは、テーブルの上に置きっぱなしだった。 

お風呂場にスマホを持っていくわけにはいかなかった。防水ではあるけど、変な疑いを掛けられる可能性があるから。


ここ数日間、無防備なスマホは、テーブルの上に置きっぱなしになっていたということか……俺が風呂に入っている20分の間に犯行は行われていた……。



「妻の発言」

「掛かっていなかったスマホのロック」

「グラタン」

この3つのキーワードが俺の中で1つに繋がった。


「妻がグラタンにした理由……」

俺のスマホの中に、グラタンが含まれる写真は1枚だけある。中森佳也子という女子社員とツーショット写真にグラタンが映り込んでいた。


「これを見られたのか~~」

中森佳也子とそういう関係になったことは1度だけある。だが、俺は約束を破ったとは思っていない。飯野 千尋とはもう浮気をしないという約束はしたが、中森佳也子と浮気をしないという約束をした覚えはない。だからセーフ、これはセーフ。





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