第2話

毒が入ってる可能性は0ではない。万が一だが、摂取量ってのが少なければ致命傷にならないのではないか?

トイレに籠もって口の中に指を入れて、食べた物を吐き出そうとしていた所だったのに。


「あと1つ、忠告しておくと、毒って1度体内に取り込まれると、すぐに吸収されるみたいだから、口に入れてから10分以上したら、無理に嘔吐しても無駄なんだって」

妻は将棋のように、俺の先手を読み、詰みにくる。


思えば、3年前に浮気がバレたときもこのような攻めの責められ方をしたなと……


会社の後輩とそういう関係ではあったが、証拠を残したつもりもない。この関係を知っているのは2人しかいなかった。なのに何故か妻は知っていた。


「飯野 千尋さんって知ってる……?」


「ああ、会社の後輩だよ……」

「仕事ができる子でね、助かってるんだ」


「それだけ?……」


「……それだけって……」


「仕事ができる、会社の後輩、言うことはそれだけかしら?」


「……話が合うからさ、休憩時間に世間話はするけども……」


「合うのは、話だけ?」

「体も合うんじゃないの?」


「……すみませんでした」

いつからか、どこを好きになったのか、何回行為に及んだのか、ありあらゆることを吸い取られるように聞かれた。パンクして空気の抜けたタイヤのような姿となった俺。


「もう彼女とは浮気をしません」


この時に、約束事を決めされられた。


「飯野 千尋さんと食事にも行きません」


「社内の飲み会で飯野 千尋さんがいる場合は、必ず報告すること。報告した上で参加、不参加を相談して決めること」


「業務外のことで飯野 千尋さんとは会話をしません」

事細かく決められた約束事を守るようにと誓約書まで書かされた。こうまでしないと妻の機嫌は直らなかった。

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