第4話 夏
いきなりだった。
「好きです」
そう言われて。
そのまま少し話をして、ちょっとだけ喫茶店に寄って。
その流れでホテルに行って、セックスをした。
「うれしいです。ありがとうございます」
事後の一言目が、それだった。最後の最後まで疑ったままだけど、
「あの。性別が」
「それは言わないで」
彼女以外に、それを言われたくなかった。いや、元彼女か。
「あ。私以外の女性のこと考えてる」
「うっ」
図星。
「分かります。私、初めてだったので。粗相はなかったでしょうか?」
「粗相というか、俺も初めてだったけど」
「えっうそ。あっ」
「粗相してるね。現在進行形で」
「おはずかしいかぎりです。とまらなくて」
「まあ、いいんじゃないですか」
「ありがとうございます」
彼女は、なぜ自分を好きだと言ったのだろうか。
「あの。もう少し、その。近寄っていただけないでしょうか?」
元彼女ではない、違う女性の身体。
「暖かいな」
「あっごめんなさい。粗相が」
「いや、そうじゃなくて。身体が」
「身体が暖かいのは、普通ではないのですか?」
「いや、ごめん。うん。なんでもない」
夏。
外があんなに暑いのに、ここは涼しい。音楽がやさしく流れている。
そして、彼女は暖かい。それでも。元彼女を求める自分がいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます