第2話 春

 彼女と別れた。

 とても簡単で、分かりやすい理由だった。彼女はセックスしてくれなかったから。

 セックスがしてみたかった。というより、心の底から、誰かを愛してみたかった。ふたりで夜を越えて、ふたりで朝を迎えてみたかった。その願いは特に果たされることもなく、恋は終わって。今ひとりぼっちでここにいる。


「はあ」


 ため息。

 彼女の意思を尊重して、特にこちらからそういったことを言い出したり素振りを見せたりもしなかった。自分にとっては初めてだけど、彼女にとって自分が初めてだとは限らない。なるべく、彼女の望む形で、彼女の希望通りにセックスがしたかった。

 しかし、特に何も起こらず別れた。

 春。

 新生活。

 彼女のいない日々が、始まる。

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