第2話
俺たち3人は村に向かいながら情報を整理することにした。
「アリアさん、コート村で今何が起こっているのか聞かせてもらえますか?」
「はい。それと敬語はいいですよ。私の方が年下だと思いますし外の人にまでそう呼ばれるのは変な感じなんで」
「それで今のコート村ですが、帝国騎士の人たちが来て神樹を切り倒してしまいました。そればかりか何もしていない村の人を捕まえて信仰を捨てるようにと言って従わない人は殺されるかもっと酷い目に合わされています……」
「あーもう話しながら落ち込まないでよ、私たちが何とかしてあげるからさ」
「口挟むなってサヤ」
少女はクスリと笑みをこぼす。
「いえ、ありがとうございますサヤさん。おかげで少し気が楽になりました」
「それでその騎士の人たちなのですがリーダーのような人がいまして、村にも自警団の人がいましたが殆どやられてしまいました。全く武器が通用しなかったんです」
「全く?それってどんな感じだったかもうちょっと詳しく教えてもらってもいいか?」
アリアは思い出し一つ一つ確認するように口に出していく。
「ええ、その金髪で大柄な男の人は『自分たちに従って信仰を捨てるか、それとも捨てさせられるか選べ』と言って村に現れたんです。そして誰も言うことをきかないと知ると村の人を見せしめに殺して、それでどうにかしようと襲い掛かった人たちの攻撃を躱そうともせずに受けてそれでも傷一つつかずに立っていました……」
「なあサヤ、これって
「間違いないわね、多分超速再生、防御強化、幻覚系のどれかだとは思うけど。流石に干渉不可とか攻撃無効なら村一つによこすレベルじゃないし」
「祝福……ですか? それで何も通用しないということでしょうか?」
きょとんとするアリアを見るにこの辺りでは知られてないのだろうか?この近くの国や街にも
「あー知らないのか、祝福ってのは凄い体質とか超能力ってやつだ」
「なるほど、そのような人がいるのですか……そんな力を奪うために使うなんて」
「同感だ。そして帝国はそんな奴らを集めて世界征服とかとか企んでる、だからこそそれを許せない人が集まって俺たちみたいに人助けしたり仲間を集めたりしてるのさ」
「だからって祝福持ちの人を嫌わないでくれると嬉しいわ。私たちの友達にだってそういう人はいるし全員が非道に手を貸してるわけじゃないから」
「大丈夫です、そういう見方はしちゃいけませんってお爺様に教わっていますから」
「うわっ、アリアちゃんめっちゃいい子じゃん。この退治片付いたら連れて帰りたいな」
「やめとけ」
俺たちはその後も村についての話や自分たちの話、対帝国同盟の話をしながら村への道を歩いていった。
アリアが村で仲良くしてくれた人のこと、早くに親を亡くした自分を育ててくれた神父の話、作物や家畜の自慢や趣味の話を聞きながら俺は彼女が笑顔を取り戻せるようにしなければならないと決めた。
もちろん覚悟はしていた。酷い目にあっているというのは口にしたくないだけで、拷問や尋問の類を受けているのだろうと。
辿り着いた時、それでもこう思ってしまった。
「ふざけるなよ……人間なんだと思ってるんだ」
俺の言葉を聞いてアリアの視界を塞ぐサヤの様子を見て俺は少しばかり冷静さを取り戻せた……はずだ。
そこに広がっていたのは大量の墓と焼けた村の住人だったであろうものたちの屍の山だった。
「サヤ」
「大丈夫、アリアちゃんには幻覚の魔法かけてるから」
「サンキュー、俺は生き残りがいないか探って──」
「おっ、何だ旅人さんか?」
そこにいたのはアリアに聞いた通りの大柄で帝国騎士の制服に身を包んだ短い茶髪に剣を携えた筋肉質な男。
俺が剣を抜こうとする前にその男は口を開く
「すまない! 君たちに危害を加えようってつもりはないがこの状況なら怯えてもしかたあるまいよ。俺はヴァルト、帝国騎士団第二部隊の部隊長でこの村の神樹伐採を任されてる。その服装、冒険者か?それならラッキーだぜ、今なら宿屋使いたい放題さ」
俺たちがあっけにとられているのを勘違いしたのかヴァルトという男は話を続ける
「知らないってことは教国の方から来たのか? 心配するな、俺たちの国は仲がいいわけじゃないが旅人に手を出すような奴は俺の部隊にはいない。でも疑われるようなことはしないでくれよ」
そう言って立ち去ろうとするヴァルトに俺の後ろから声がかけられる
「あの!一体どうしてこのような真似を!?」
「この死体のことか? 神樹伐採の邪魔してきたのと、あとは信仰捨てさせろって命令だったんだけど従わない奴がいてこうしたってわけよ。勿論従ってくれた村人はしっかり──」
「失礼します隊長! 第六騎士団から伝令が来ました!」
「そうか、すぐ向かう。話の途中ですまないが任務に戻らなければならないようだ。何か装弾あったらあの大きな家に来てくれ。私か腕の立つものがいるから頼るといいよ」
今度こそ本当に去って行く彼らを見送りとりあえずは彼のいうことに従い村の宿屋に向かうことにした。
そこには聞いた通り村の人は誰もおらず、入り口を騎士が一人で警備している程度だ、これなら相談には都合がいい。
「ライル、あのまま斬っちゃうわけにはいかなかったの?」
「騎士団のやつらも沢山いるんだぜ? アリアを危険な目に合わせるわけにはいかねえだろ」
「心配いただきありがとうございます、ですがここは私の村です。私に出来ることはなんでもします、あの男の口ぶりからしてまだ無事な村の人はいるはずです」
先程まで怯えていた少女の強さを持った瞳を見て驚いたが、それなら力を貸してもらうことにしよう。
このままにしておくと一人でも村人を探しに出かけかねないしな
「へー、あの状況でよく引き出せたわね。やるじゃん」
「OK、なら力を貸してもらうぜ。さあ、村人奪還してあいつらぶっ倒すぜ!」
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