第3話



「で、そう言うからには案はあるんでしょうね?」



 サヤがベッドに腰かけ口を開く。



「まあな、つっても単純だ、まず生きてる村人がいる場所探し出して助け出す。そしたらそいつら逃がして俺が帝国の奴らを倒す。単純だろ?」



「その探し出すのどうやるのかって聞いてんのよ!」



「そこはその……アリア、この一帯で人間が何十人も集まれる場所ってあるか?」



 困ったことにぐうの音も出ないほどの正論だ。これ以上言われる前に俺はアリアに話を振った。



「それでしたら村長のお屋敷以外にはないと思います。あの方が困ったらここに来るといいって言ってたところになりますが」



「じゃあ結局戦わないと助けられないじゃん、でも戦ったら巻き込んじゃうしどうすんの?」



「デカい小屋に捕まってるとかなら良かったんだがアリアがそこ以外無いって言うならそこなんだろうしなぁ、どうにかしておびき出す方法を考えた方が良さそうだ」



 仲間たちの手が借りられないというのは厄介だ。同盟の力が借りられたならそっちで気を引いてもらってる間に助けに行けるのに……とはいえないものねだりしても仕方がない、今ある手札で勝負しなければならないのだから。



「あのー、もしかしたらですが私に一つ出来そうなことがあるんですけれど聞いていただけますか?」



「それだったら建物ごと斬っちゃうってのはどう? 私とライルなら行けるでしょ」



「人質のいる場所分かんないのにやる気か? そんなことしてる間に囲まれたら手数が足らねえぞ」



 久々に俺とサヤの意見が結構ずれている。どちらも間違いじゃない以上こうして擦り合わせていくのは不謹慎ながら結構好きだ。



「あのー……」



「じゃあ森に火をつけて誘導するとかは? 捕まえてるってことは殺したいわけじゃないんだろうし多分来るでしょみんな」



「倫理観ここまでの道に落として来たのかお前は」



「分かってるわよ何も案出せないそっちよりマシでしょ!?」



 さすがに言いすぎたかとも思ったがサヤも楽しそうだし気にしなくてもいいだろう。アリアにも意見を聞かないと──



「あの!! 聞いていただけないでしょうか!」



 いきなり声を上げたアリアに驚いたけれど彼女の怒ったような表情と状況から察するに熱中しすぎたようだ、さすがに謝らないといけないな。



「悪い、ちょっとテンション変な方向に行っちまってた。ちゃんと聞くから言ってくれ」



「ごめんね」



「こちらこそ大声を出してしまい申し訳ありません、それで案なのですが村長の家は確かに広いですが1階しかありません。なので地下から行くというのはどうでしょうか?」



「地下道があるの? やっぱ村長とかになると脱出通路持ってるもんなのね」



「それはないんですけど……先程おっしゃっていた祝福ギフトというものが私にも使えるかもしれません」



「ないの」



ツッコミを入れるサヤを今度はアリアが流し続ける。



「私は昔から精霊の声が聞こえてその力を借りることが出来るんです……ここでは巫女の力と言われていましたが。なので大地の精霊の力を借りて穴を掘れば行けるんじゃないかなって」



「なるほど、場所も知ってるなら最適だな。というかアリアってこの村の巫女だったのかよ」



 さすがに流せない真実に思わず今度はこちらがツッコミを入れてしまった。



「はい、皆さんなら話してもいいかと思いまして」



「チョロくない?変な男に騙されないでよ?」



 意外に愉快だったかもしれないアリアとサヤと一緒にこれ以上話していると時間を忘れそうになる。



「じゃあ夜になったら行動開始だ。俺とサヤも同行するつもりだから穴彫ってもばれない場所は探しときたいけど」



「それなら農場はどうでしょう?牛小屋でしたら誰も入って来ないと思います」



「確かにそれが一番っぽいわね、けど昼は騎士の奴らが世話してたみたいだし遅くならないならだけど」



「安心しろ、すぐに終わらせる。だろ?」



「はいっ!」



 強く頷くアリアに笑みを返し、俺たちは夜まで休み牛小屋に向かうことにした。アリアの言うことを疑うわけじゃないけれど精霊術の祝福持ちを見るのは初めてだし少し楽しみな気持ちを抑えながら。

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