6-5 予定変更
朝、エルヴィン達はホテルのレストランで朝食を食べ、
食事後、彼等はロビーへと集まり、エルヴィンは腰を曲げ、屈伸し、首を回す。
「やっと帰れるねぇ……流石に疲れてしまったよ」
「ごめんなさい、兄さん……わたしがワガママを言ったから……」
ちょっとションボリと謝るテレジアに、エルヴィンは優しく微笑みながらその頭を撫でる。
「いや、良いよ……昨日は良かったんだ。楽しかった。問題なのは、テロリストの事件という面倒に巡り合わせた神様だ! うん、そうだ! 神様が悪い‼︎」
「兄さん、そんな罰当たりな事言ったら、神様に怒られちゃいますよ?」
テレジアはクスリと笑う。本当に愛らしい子である。
「兄さんも一緒に帰るんですよね?」
「うん、帰りは一緒だよ?」
「やった!」
テレジアはまたエルヴィンの腕に抱き付いてくる。それに、エルヴィンはまた動き辛くなるので困った様子で苦笑する。
「まったく……恋人か? あの兄妹……恋人でももう少し控えるぞ」
ルートヴィッヒが苦笑しながら言葉を
「可愛い見た目の妹、しかも、慕ってくれる妹。無償であんな贅沢味わえんだったら、俺も妹欲しかったぜ!」
「年柄年中、女を抱いてる貴方がなにを言いますか……それに、あれ程仲の良い兄妹は珍しいですよ」
毒舌混じりで返すアンナ。昨日に比べれば近くなってはいるが、やはり、まだエルヴィンから少し距離を置いている。
ルートヴィッヒは、辛辣な言葉を使われた事より、そっちが気になり嘆息を
「お前、さっさと克服しろよ! 丸1日経ってんだぞ? 酔った勢いでエルヴィンに甘えたごときで……」
「恥ずかしい事思い出させないで下さい!」
少し頬を赤く染めながらルートヴィッヒを軽く睨むアンナ。それに、ルートヴィッヒは肩をすくめる。
「本当にヘタレだねぇ……」
「うるさいです!」
仏頂面で返すアンナ。ヘタレなのは自覚しているが、いざ他人に言われるのは腹立つのだ。
そうこうしている内に、テレジアの護衛であるゲーラとヘルネが戻ってきた。テレジア達を再び護衛する為である。
すると、ヘルネがエルヴィンへと近付き、少し緊張した様子で、敬礼した。
「どうしたんだい?」
「ハーゲン隊長から手紙を預かっております」
ヘルネが手紙を手渡すと、エルヴィンは何用だろうと早速読んだ。そして、一瞬、眉をしかめた後、苦笑を
「すまないテレジア……どうやら一緒に帰れそうにない……」
「お仕事、ですか……?」
「うん、本当にすまない……」
せっかくの兄との時間をまた奪われる。それに、やはりテレジアは表情を少し沈める。
しかし、直ぐに気持ちを払うように
「良いです。大丈夫です。……兄さん、お仕事頑張って下さい」
「うん、ありがとう」
エルヴィンはまたテレジアの頭を優しく撫でると、アンナとルートヴィッヒへと視線を向ける。
「アンナ、いつもの様に付いて来てくれるかい?」
「あ、えっと……は、はい! 勿論です‼︎」
一瞬、言葉を詰まらせたアンナ。やはり、恥ずかしさを抑えられていないようだ。
「ルートヴィッヒ、君はテレジアの護衛を頼む」
「光栄だな! 美しい女の子を護衛する方が、打善やる気が湧くってもんだ! それに……エルヴィンとアンナという邪魔な存在が入らねぇ分、テレジアちゃんに猛アタックを……」
「そう言えば……我が家の倉庫に、1回も使われていないギロチンがあったんだよねぇ……」
ルートヴィッヒがピクリと反応する。
「流石に勿体ないから……使っちゃおうかなぁ……使う機会があれば、だけど……」
エルヴィンによる明らかな脅し。自分の目の届く範囲での誘いは許容するが、目の届かない範囲でしたら命は無いよ、と言ってきたのだ。
「だから……ね?」
エルヴィンはルートヴィッヒの肩をポンと叩く。無言の殺意がアリアリと伝わってきて、ルートヴィッヒは頷くしか無い。
そして、エルヴィンはアンナを連れ、テレジア達に一旦別れを告げ、彼女達を背にホテルを後にする。
そんな彼の背中を眺めながら、ルートヴィッヒは力が抜けたように肩をおとした。
「本当、怒ると怖ぇ〜よアイツ……」
横で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます