4-126 転生者

 互いが転生者である事を知ったエルヴィンとシャルル。そして、それぞれ、エルヴィンは苦笑を浮かべ、シャルルはさも楽しそうに言葉を綴った。



「やっぱりな! 戦う度、妙な親近感があると思ったぜ! しっかし……こんな弱そうな、頼りない奴がこの世界のロンメルとは……名前負けも良いところだな」


「名前だけ似てるだけだよ……実際、ロンメル将軍は貴族ではく中流階級だったし、それ以前に、この世界の国などは、雰囲気など前世と似ているけど、歩んできた歴史や地理は別物だからね」


「なるほどな、やはり異世界、という事か……」



 2人の転生者、別の世界の知識を持つ2人は、前世と現世の違いと共通点を再確認し、そして本当に互いが転生者である事が明確になった。



「まぁ、俺を翻弄ほんろうする奴が凡人である筈はないと思ってはいたがな! 貴様の強さはやはり、転生者故の物か?」


「まぁ……それもあるかもしれないね。この世界には無い知識を持つが故に、一歩引いた考え方が出来るから……しかし……」



 エルヴィンは、遠くから此方を見詰めるガンリュウ大尉に視線を向けると、頭の中で、ジーゲン中尉やフュルト中尉、シャル達衛生兵達、部隊の部下達、なにより、アンナの事を思い浮かべた。


 頼れる仲間達に巡り会えたエルヴィン、それを再確認した彼は、ふと笑みを浮かべる。



「私は……仲間に恵まれたんだよ。素晴らしい仲間達に出会った。だから貴官を翻弄ほんろうできた」


「謙遜か?」


「いや、事実だよ。私には何の力もないし……仲間に頼ってばかりだからね……」



 エルヴィンの笑みには、無力な自分を卑下するよりも、良き仲間に出会えた嬉しさが現れていた。


 確かに、エルヴィンだけの力では武神を追い詰める事など到底不可能だろう。

 彼の戦闘力は、武神相手どころか、一般兵にすら簡単に殺されるレベルであり、一兵卒から始めたら初陣で死ぬ、という彼の自評は間違いではない。


 しかし、戦争とは1人で出来る物ではない。指揮官が仲間を率いて戦うものだ。


 エルヴィンが指揮官として、仲間を上手く使った。だからシャルルは追い詰められた。


 エルヴィンに何の力も無いというのは謙遜であり、シャルルはそんな度が過ぎた謙遜を嘲笑う。



「謙遜過ぎだな貴様……なるほど、前世はジャップだったな?」


「謙遜でもないと思うんだけが……て、ん? ジャップ?」



 ジャップ、日本人をそう呼ぶ国を、エルヴィンは1つしか知らなかった。



「ジャップという独特の呼び方……貴官はアメリカ出身なのかい?」


「ああ、そうだ! 偉大なる合衆国ステイツ、それが俺の前世の祖国だ!」


「なるほど……そうだったのか……だけど……ジャップという呼び方は日本人への蔑称べっしょうだから、止めて貰うとありがたいのだけど……」


「そうなのか⁉︎ そいつはすまん!」



 シャルル・ド・ラヴァル、彼は、根は良い奴なのだろう。少なくとも、敵に対し、自分の非を認め、謝れる優しさは持っていた。

 少し、精神は子供臭い所がありそうだが。

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