4-117 開き直り
穴に落ちていたサルセル大尉。何とか這い上がろうと、もがいていた彼だったが、シャルルの独り言を聞くと、登るのを止めた。
そして、その様子を、同じ穴に落ち、大尉の隣に居た若い兵士は不思議がる。
「副隊長……何故、登るの止めたんですか?」
「あ? あぁ……少佐がどうやら開き直しちゃったらしいから……」
「開き直る?」
どうも腑に落ちないらしい若い兵士は只、首を傾げる。
そんな若い兵士の様子に、サルセル大尉も最初、首を傾げたが、その後、兵士の若さを見て、納得したように頷いた。
「君……もしかして新兵か」
「はい、この戦いから部隊に入りました、アデマール・バニュー伍長です」
「そうか……それはすまん。副隊長でありながら、仲間である伍長の事を知らなかったとは……」
「いえ、お気になさらず……それよりも、少佐の開き直りというのは?」
「あぁ……その事だったな」
サルセル大尉は咳払いを一回すると、改めてバニュー伍長に視線を向けた。
「少佐の異名は分かるよな?」
「はい……武神、ですよね?」
「あぁ……少佐は魔術兵として他を圧倒する一騎当千の猛者だ。1人で一個連隊ぐらいの強さを誇っている…………
「普段の?」
「そう、普段の少佐は"全力を出していない!" というのも、指揮官として部隊を指揮せねばならないし、部下の手柄を横取りしてしまうからな。……だが、なにより……本気を出した少佐は、味方をも巻き込んでしまう危険がある。だから、俺は穴から出なかった。出たら巻き込まれるからな」
「そんなに化け物じみてるんですか⁈」
「あぁ……何せ、普段の少佐でやっと、
バニュー伍長は驚愕した。普段であれだけ化け物じみているのに、それが半分以下の実力でしかないのだ。
全力の武神とは一体、どれ程の力なのか、伍長は興味を持ちながらも、恐怖する。
もし敵であったならば、どれ程、恐ろしかっただろうかと。
「今頃、敵は本気の少佐を相手取ってる筈だ……さて、何人生き残るかな?」
シャルルの恐ろしさを隣で見て来たサルセル大尉。武神の強さを知る彼は、少し敵を気の毒に思うのだった。
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