4-116 窮地の武神
武神に仲間で立ち向かう。ガンリュウ大尉は、そう明確な方針を胸に、武神から早々と距離を取った。
シャルルは、突如離れたガンリュウ大尉を不思議がり、首を傾げながらも、また笑みを浮かべ、大剣を構えて大尉に突進する。
しかし、武神からガンリュウ大尉が離れた事により、味方の銃弾が大尉に誤爆する危険が無くなった為、通常兵による銃弾の応酬が再び、シャルルへと降り注いだ。
しかも、今度は魔力を少し回復させた、フュルト中尉率いる魔導兵まで加わり、武神に対する攻撃は苛烈さを増していく。
シャルルへの集中攻撃、普通ならは即死レベルの所を、やはり武神、身体強化で防ぎ続けていたが、上手く身動きが取れず、流石にここに至り、シャルルから笑みは消えていた。
「おりゃぁあああああああああああああっ!」
銃火を浴びながらも、意地と根性で無理矢理、剣を構え、敵へと突進し続けるシャルル。
しかし、それを
結局は刀で斬られても傷1つ付かないのだが、やはり、同じ魔術兵の斬撃である為、強烈な痛みが走る。
ギリギリの状態で戦っている時の、ほんの僅かストレスは、思考を鈍らせ、判断、行動を鈍らせる。
シャルルは毎回、こんな精神擦り切れる状況で戦わされているのだ。
「これは本当にヤベェ……」
敵の銃弾の雨に常に晒され、やっとの思いで敵に攻撃しようとすればガンリュウ大尉に邪魔される。
味方とは分断され孤立無援。
延々とこの状況が続けば魔力も底をつく。
危機的状況、今まで体感した事のない状況に、シャルルは焦りを表し始めた。
「ヤベェ、ヤベェ、ヤベェヤベェヤベェ! 負ける、このままじゃぜってぇ負けるっ‼︎」
シャルル自身、強者との戦いを望み、死を感じさせる敵を欲してはいるが、何も本当に負けたい訳でも、死にたい訳でもない。
"強者と戦い、打ち破る事が好きなのだ"
だが、今はどうか。明らかに負けそうではないか。
敗北など望まない、だが負ける、危機的状況。
負けたくねぇ。どうする? これからどうする?
打開策は? どうやって覆す?
このままじゃ負けるぞ! 考えろ、考えろ!
シャルルは頭を捻り、脳を動かし、思考し、考え、策を練り、潰し、再構築し、考え、考え、考え……。
打開策が浮かばねぇ。どうしようもねぇ。
抗えない敗北。抗えない屈辱。それを実感したシャルルは、空を見て、黄昏れ、声を上げる。
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
自分が敗北するという実感に、
そして、彼は、
「考えんの止めた!」
開き直った。
「そもそも何で俺が策を考えなならんのだ! ……そもそも、仲間と離れ、孤立してんだから別に遠慮する必要ねぇだろ! ……仲間から功を奪う訳にもいかねぇからと思っていたが、アイツら落とし穴に落ちてんじゃねぇか! あ〜っ、阿呆らしい……」
突然の、武神による訳の分からない独り言に、エルヴィン達は唖然とした。
死の恐怖でおかしくなったのか? とも考える兵士もいた。
しかし、エルヴィンやガンリュウ大尉、一部の士官達は、これまでには感じた事のない不気味な恐怖に襲われる。
武神の雰囲気が、明らかに変わった事に気付いたのだ。
そして、エルヴィン達を襲った恐怖の正体、それは一瞬の内に明らかとなった。
目の前から武神が忽然と消え、それと同じくし、一瞬にして帝国兵数人が肉片へと変えられたのである。
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