4-111 迫る気配
エルヴィン達、第11独立遊撃大隊は、共和国本陣に対し、絶え間ない魔法の応酬を行なっていた。
魔法の数だけ見れば、貴重な魔導兵単独での行動は有り得ないと考え、兵力は1000ぐらい居ると考える所だが、エルヴィン達の兵力は実際には100にも満たなかった。
武神との戦いで当初の半分戦力を削られた上、治療に多くの衛生兵が駆り出されている中、十分に戦えない負傷兵も抜いた為、これだけの兵数しか用意できなかったのだ。
数が圧倒的に少ないエルヴィン達は、数が敵に悟られないよう森の中に潜みながら、魔法を魔力を惜しませず、次々と放っていたのだ。
これは、補給基地攻撃の際、武神との戦いで使った手で、魔力を惜しみなく放たせる事で、此方の兵力を過大に目算させるというものだった。
実際、敵は此方の兵力を過大に見積もり、燃える陣地の消化と合わせ、身動き出来ずにいた。
見たところ敵兵力の概算は1万ぐらい
「ミスしたら、あんな大軍が此方に来る事になるのかぁ……なかなかに怖いね……」
「だったら、
敵本陣を眺めながら苦笑を浮かべ、頼りない言葉を吐くエルヴィンに、アンナは呆れながら告げた。
「だって……今回は多分、我々にしか出来ない
「武神を相手にするかもしれないから、ですか?」
「そうだね。まぁ……本隊の方に居れば問題ないけど……こっちに居れば、間違いなく当たる。武神と戦って、個人ではなく部隊として戻ったのは我々だけだから……戦った経験のある者の方が良いだろうしね」
武神、共和国最強の魔術兵、ガンリュウ大尉ですら足止めが精一杯という怪物。
エルヴィン自身、彼とは2度と戦いたくはなかっただろう。
しかし、この戦い、 ヒルデブラント要塞攻防戦という戦いを早く終わらせる。その為には戦わねばならないのだ。
"1人で戦局を左右させる化け物と"
「大隊長! そろそろ魔導兵達の魔力が限界です!」
「わかった……そろそろ引き揚げよう! 全員、撤退っ!」
伝令からの報告を聞いたエルヴィンは、直ぐに命令を下し、帝国兵達は撤退を始める。
取り敢えず、第1段階は上手くいった。しかし、正念場はこれからだった。
何故なら、まだ戦いは終わってはいない。撤退を開始したとはいえ、敵が黙って逃がす訳がないのだ。
そして、それは次の瞬間、伝令によって告げられる。
「後方より接近中の部隊有り、数およそ400!」
「来たか……」
エルヴィンは背後を一瞬見ながらも、部隊を逃げ続けさせた。
敵の数を聞いた時点で居るのが確実となった、
エルヴィン達を追う約400の共和国兵。その先頭には、大剣を肩に乗せながら、ニッと笑みを浮かべ、白い歯を見せ、瞳をギラギラさせた、武神ラヴァルの姿があった。
「この小賢しさ、騙し方、戦い方……間違いない……会いたかったぜ、エルヴィン・フライブルク!」
エルヴィンとシャルル、2人の若き指揮官達は再び、死力を尽くした戦いを演じる事となる。
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