4-110 本陣強襲
共和国軍本陣を突然、南方から無数の炎魔法が襲った。
その攻撃はまさしく苛烈を極めた。配置されていた軍用テントは
「敵襲っ! 敵襲ぅうっ‼︎」
「消火を急がせろぉおっ!」
「全員、迎撃準備、急げぇえっ!」
敵の奇襲に、慌てて迎撃準備を始める本陣守備隊。そして、敵急襲の報告は即座に司令部へと知らされ、幕僚達は驚き、ストラスブール大将は顔を
「クソッ! 帝国軍の奴ら……司令部を襲い、我々を
「我々が死ねば軍が瓦解する! 大将閣下だけでも脱出させなければ……」
「閣下っ! 脱出を!」
口々に場を離れるよう進言する幕僚達。
しかし、ストラスブール大将は敵の行動に違和感を感じていた。
我々を攻撃しているのは第10軍団だろう。しかし……彼等にここを攻撃する余力などあるのか?
第10軍団が本陣を襲っている。それがどうも、大将には納得できなかった。
「閣下っ‼︎」
ふと幕僚の声で、ストラスブール大将は我に返り、声を掛けた幕僚に視線を向けた。
「……すまん、考え事をしていた」
「そうですか……しかし、今は御急ぎを。敵は司令部を狙ってきます。ここが戦場になる前に脱出願います」
「…………分かった。今は逃げるとしよう……」
ストラスブール大将は立ち上がると、幕僚達と共に司令部を離れた。
しかし、離れた後も、大将は思考を続ける。
敵の目的は線路の破壊ではないか? しかし、例え破壊されても線路程度なら直ぐに修復可能だ。
列車を爆破する? しかし、今は本陣にない上に、例え破壊されても、本国にある奴を引っ張ってくれば即解決する。
まさか本陣を離れた所で我々を暗殺する気か? しかし、敵はラウ会戦に勝ち、戦車4両も無力化した。暗殺などという、武人の恥となりかねないものを使うとも思えん。
大将はあらゆる候補を考えては、直ぐに消していく。
車に乗り、本隊へと向かう最中も、考えは止まらなかった。
そもそも撤退すべき戦い、それを押してまで要塞を攻撃しようとしている。
ストラスブール大将は、この時点で失脚を覚悟し、だからこそ自分が指揮できる内に要塞に打撃を与えようと考えた。
自分の後任が有能なら良い。しかし、無能であるならどうするか。
もしそうだった場合の布石に、ラウ平原の敵戦力が動けぬ内に、残った戦車を使い、要塞に損害を与えようとしているのだ。
そうすれば、後任が誰だろうと兵の死者は少なくなる筈である。
ストラスブール大将は出来るだけ、後任者への手土産が欲しかった。兵士の死者を少なくする為に。
たがらこそ、出来るだけ要塞攻撃を成功させたかったが、本陣襲撃という不足の事態により、不安に襲われていく。
正午から始まる要塞攻撃、それが無事に執行されるのか。
本陣攻撃が、只の司令部を狙ったものであるのかどうかを。
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