第4章 ヒルデブラント要塞攻防戦
4-1 睨み合う両軍
ゲルマン帝国とブリュメール共和国。両国は世暦1785年の共和国による帝国への宣戦布告により、130年近く"
主戦場は主に、ヒルデブラント、シルト、ブルグマウアーの3要塞を結ぶ帝国軍の防衛線と、オリヴィエ、ローランの2要塞を結ぶ共和国軍の防衛線の間で行われていた。
戦いのほとんどは、両防衛線の間にある各拠点の奪い合いたが、度々両国は、敵要塞への攻撃を仕掛けている。しかし、両国とも要塞攻略を成功した事は無く、それが、130年の慢性的な戦争の原因の1つとなっている。
ゲルマン帝国軍とブリュメール共和国軍の両軍は、帝国3要塞の1つ、ヒルデブラント要塞近郊にて睨み合っていた。
海に接するこの要塞は、軍港も兼ねており、帝国のポントス海の守りの要である、帝国軍第3艦隊が駐留している。
この要塞を奪われることは、ポントス海の制海権を奪われ、海上支援を受けた共和国軍による、帝国本土侵攻を許してしまう危険があった。
それを承知の共和国軍は、帝国3要塞の中でもヒルデブラント要塞の攻略を重視しており、ここ数年に起きた共和国軍による大侵攻では全て、この要塞への攻撃が中心となっている。
共和国軍の最重要攻略拠点であり、帝国軍の最重要防衛拠点であるヒルデブラント要塞は、帝国の要塞の中でも堅牢に作られている。
海岸側には対艦砲113門が睨みを利かせ、地上出口3ヶ所には、重、軽砲合わせて482門が配備されている。
要塞の周りをコンクリートの分厚い壁が覆い、更にその周りを有刺鉄線の柵が張り巡り、地面には2万個近くの地雷が埋められ、無数に置かれた防御陣地には帝国兵達が潜み、重機関銃や小銃、魔法が敵に標準を合わせている。
まさに難攻不落の要塞であった。
ブリュメール共和国は、今回のヒルデブラント要塞攻略の総司令官に、名将と名高いフェルディナン・ストラスブール大将を任命した。
総参謀長には、元々ストラスブール大将の幕僚だったジョルジュ・ル・アーブル中将を任命。
その他、
ナント中将麾下第4軍団、
ヴィルールバンヌ中将麾下第5軍団、
アミアン中将麾下第7軍団、
オーベルヴィリエ中将麾下第8軍団、
ムリノー中将麾下第12軍団、
その他独立部隊、
合わせて約22万の兵力を動員した。
一方、ゲルマン帝国はパウル・フォン・ベルギッシュ・グラートバッハ上級大将を総司令官に、総参謀長にエーリヒ・ブレーマーハーフェン大将を任命。
そして、
ケムニッツ大将麾下第3軍団、
ゾーリンゲン大将麾下第8軍団、
エッセン大将麾下第10軍団、
クレーフェルト大将麾下第11軍団、
その他の独立部隊、ヒルデブラント要塞守備隊も加え、およそ18万の兵力をもって迎え撃つこととなった。
両軍合わせ40万の兵力が集結し、数年稀に見る大会戦の様相を見せていた。
兵力は共和国軍の方が優勢だった。しかし、攻城戦において最低限、敵の5倍の兵力が必要とされる以上、帝国軍が圧倒的有利な状況にある。
共和国軍は第4軍団を中央に、第4、第5、第12軍団で要塞東側を半包囲する形で陣を敷き、第7、第8軍団で、要塞攻略部隊を背後から攻撃しようと迫る帝国軍の別働隊を迎え撃つ型で、帝国軍到着前にラウ平原に構築した塹壕に身を潜めていた。
帝国軍は要塞を守備隊と第11軍団に守らせ、残り3個軍団で共和国軍要塞攻撃部隊の背後に回り込もうと、敵第7、第8軍団と睨み合っていた。
そして、共和国軍の堅牢な塹壕を見て帝国軍の将軍達は口々にこう愚痴る。
「共和国軍が全軍で要塞を攻撃していれば、敵が塹壕を作って待ち構える前に、敵背後を攻めて容易く勝利できたのに」と。
帝国軍本隊到着3日前にヒルデブラント要塞に到着していた共和国軍は、要塞を攻撃する前に、背後を守る為、塹壕を設置し、塹壕には強力な火力を誇りながら重く持ち運びが難しい160ミリ重砲を、40門近くも配備していた。
普通ならば到着早々、敵の援軍が到着する前に要塞を陥落させようと総攻撃を掛けようとしてもおかしくない。
しかし、ストラスブール大将は敵到着前の要塞陥落は不可能と早々に判断し、敵援軍迎撃の為の準備を優先した。
実際、到達の3日後に帝国軍の援軍が到着しており、3日の内にヒルデブラント要塞を陥落させるのは不可能だった。
もし、共和国軍が要塞への総攻撃を敢行していた場合、今頃帝国軍は勝利の盃を交わしていただろう。
戦闘が始まる前に既に、共和国軍総司令官ストラスブール大将が名将と呼ばれるに値する司令官である事が証明されたのだ。
ストラスブール大将に率いられた共和国軍は、第7、第8軍団が敵の足止めをしている内に、残り3個軍団で要塞を攻略するという作戦を基本方針とし、
グラートバッハ上級大将に率いられた帝国軍は、要塞を守備隊と第11軍団が守る間、残り3個軍団で敵塹壕を突破し、敵要塞攻略部隊を背後から強襲するという基本方針で戦う事となる。
両軍が睨み合いを始めて2日経過した今日、遂に両軍が砲火を交える事になる。
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