3-6 2人目

 2人は、第17師団駐屯地から近くの駅まで歩き、次の目的地行きの列車に乗り込んだ。


 そして、エルヴィンは、アンナに賭けポーカーについてじっくり尋問された後、話は次の勧誘相手についてへと変わった。



「クリスタ・フュルト中尉、20歳。種族は人間族。所属はシルト要塞守備隊、第302魔導工兵大隊。魔導師の資格があり、これほど有能な人は少ないですから、フュルト中尉の上官は渋るでしょう」


「要塞周辺には敵の侵攻を妨害する為、地雷が設置されている。(魔法陣)を描ける魔導工兵は、地雷を設置するのに必要不可欠だからね……」



 この世界の地雷には魔法陣が使われている。

 魔法陣は、人が触れる事により、その人物の魔力をエネルギーに、魔法陣に描かれた魔法を発動させる物である。

 魔法陣は一度起動すると消滅してしまう為、魔法の再起動を可能にした(擬似魔法陣)が開発された。




 シルト要塞に着いた2人は早速、要塞司令官に挨拶向かった。そして、第302魔導工兵大隊長に引き抜き許可を貰いに行ったが、やはり、アンナの懸念通り、フュルト中尉の引き抜きを断固却下される。



「参ったな〜……渋るのは予想できたけど、まさか、あそこまで頑なとは……」


「グラートバッハ上級大将に助け船を出して貰いますか? 閣下の裁量の範囲内であれば、助けて下さるのでしょう?」


「……やめておくよ。強引に承諾させて、後で恨まれるのが怖い」


「では、粘り強く頑張るしかありませんね。でなければ諦めるしかありません。そうなれば選び直しですけど……」


「それを言わないでくれよ……また、あの大量の履歴書に目を通さなければならないと思うと、胃が痛くなる」



 エルヴィンは大量の資料の山を思い浮かべ、胃痛が生じたのか、みぞおちをさすった。



「で、これからどうしますか?」


「フュルト中尉に会ってみよう。彼女自身が部隊に入ってくれるかどうか分からないから、それを確認しとかないと。大隊長を説得しても、本人が承諾してくれなかったら、取り越し苦労になってしまうからね」



 2人は辺りを見渡し、近くに居た兵士にフュルト中尉の居場所を聞く事にした。

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